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第十七話 連続クエストと餌付け作戦(?)

「落とし主を探すって言っても……手掛かりゼロじゃねー」


 学校から帰った私は、早速TBOにログインしてクエストの攻略を進めていた。推奨レベル20が気になったけど、私はどうせ1のままだし、気にしても仕方ない。


 ただ……レベルはともかく、クエストの進め方についてはほとほと困り果てていた。


 落とし主というからには、落とした場所の近くを探すのが定番だと思うんだけど……これはピーたんが私の指示もなく勝手に探索した先で見つけたもの。ぶっちゃけ、どこに落ちてたのか見当もつかない。


「ピーたん、これどこで拾ってきたの?」


「キュオオ」


「うん、わかんないや」


 今日も今日とてログインと同時にご飯を食べさせてあげたところ、不思議と探索に出ることなくクエストについてきてくれてるピーたんだけど、意思の疎通はさすがに無理だ。


 言葉が分かれば楽なんだけどなー。うーむ、私の自由なスタイルに思わぬ落とし穴が。


『まあ、探索に出れる範囲はまだ狭いし、どうにかなるでしょ』

『始まりの町と平原と森しかまだ行けないからな』


「確かに、そう考えればまだ楽かー」


 モンスターによる自動探索は、プレイヤーが足を運んだことのあるエリアにしか出来ない。これは運の問題じゃなくシステム上の制約なので、私だって越えられない。


 これがフィールドボスを倒して第二の町に到着した後に発生したクエストだったら、探さなきゃならない範囲が倍増するところだった。


 そう思えば、まだ運が良かったかな?


「ひとまず、町で地道に聞き込みでもしてみよっかな!」


 このクエストは一人用だし、そうでなくともお姉ちゃんは平日なのでお仕事で忙しい。このクエストは自分の力で達成しなきゃ。


 そう気合いを入れ直し、なんだか聞き込み調査なんて探偵になったみたいで楽しいなー、なんて意気揚々と最初の一人……この前モッフルがつまみ食いしちゃった屋台の店主さんに話を聞くと。


「んん? このリボン……武器屋んとこの娘がつけてたやつじゃねえか?」


 あっさりと手掛かりが見付かった。


 ……うん、別にいいんだけど、このスピード感はちょっと予想外。聞き込みがんばるぞーっていうこの気合いはどこへ向ければ?


「そういや、少し前に町から出ていくのを見掛けたが……何もないといいがな」


 そんな風に思ってたら、ちょっぴり不穏なお言葉が。


 町の外かあ、このリボン明らかに子供向けのデザインだし、心配だな。


「おじさんありがとう、今度はちゃんとお客さんとして来るよ。またねー」


「おう、気を付けてな」


 おじさんと別れ、私は前に装備を買おうとして一度だけ立ち寄った武器屋へと向かう。


 リボンを見せて話を聞くと、やっぱりここの娘さんの物で間違いないみたい。


「サーヤの奴、姿が見えないと思ったら……もしかして、森に向かったんじゃないだろうな……」


「森に?」


「ああ、実は……」


 なんでも、数日前に隣町……私達プレイヤーの言うところの第二の町に住むお婆ちゃんから、病気になって倒れてしまったという連絡が来たらしい。


 そのサーヤちゃんという娘さんは、そのお婆ちゃんのために薬を取りに行ったのかもとのこと。


「あの森には危険なモンスターがうようよいて、俺じゃあとても近付けねえ……頼む嬢ちゃん、娘を探しに行ってくれないか?」



『クエスト:《落とし主の捜索》を達成しました』

『クエスト:《娘を捜して》が発生しました』



クエスト:娘を捜して

内容:迷いの森に向かった娘を捜索する



「分かりました、私に任せてください!」


 どん、と胸を叩きながら、私はおじさんのお願いを聞き入れる。

 けど、迷いの森か……昨日お姉ちゃんと行ったところだよね。


『おお、まさかの連続クエストか』

『しかもフィールドってことは、多分クエストボスが出るぞ、これ』

『ちゃんと戦闘準備してった方がいいぞ』


「分かった。といっても、私に出来ることなんてほとんどないけどね」


 アイテムはティアラちゃんに貰った毒シリーズの他は料理と素材アイテムのみでお金はほぼなし。

 装備の更新だって出来ないし、後はモンスターのみんながやる気になってくれるかどうか次第だ。


「たぬ吉、モッフル、ピーたん」


 運良く、というべきか。

 いつもは割と好き勝手に探索に出掛けるみんなだけど、今この時は全員いる。


 レベル1の私は、この子達に頼ることしか出来ない。だから……!


「今日は私達にとって初めての戦闘クエスト(予想)だよ。お願い、みんなの力を貸して。全部終わったら……奮発してすっごく美味しい料理を好きなだけ食べさせてあげるから!!」


「フララー!!」

「キュオオオオオ!!」

「ポ、ポン」


 私の宣言に凄まじいやる気を漲らせるモッフルとピーたん。

 たぬ吉だけはその勢いに押されてなんとも微妙な反応だけど、料理には興味があるのか微妙に尻尾が反応してる。


 よしよし、これならきっと大丈夫だね!


『女の子のために!! みたいなシリアス宣言するのかと思ったら、まさかの餌で釣るスタイル』

『しかも武器屋の店主の目の前である』

『わろた』


「あ」


 コメントの指摘に慌てて振り返れば、おじさんはなんとも微妙な表情で私を見ていた。


 だ、大丈夫、サーヤちゃんは私が絶対助けるから、そんな顔しないでー!

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