表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/118

第十六話 スキル伝授とクエスト発生

「でね、昨日はそんなことがあって……うちのピーたん、それから探索から戻る度に果物持ってくるの。どんな料理だったら満足してくれるのやら」


「いやそれ、満足したからもっと作って欲しいんじゃないの?」


 週明けの学校、なぜか私を膝の上に乗せてご満悦な渚へと、私は現在のプレイ状況を話していた。


 周りからの視線が何とも生暖かいけど、お喋りは楽しいのでこの際細かいことは気にしないことにする。


「満足かー、本当にしてるのかな? あの後結局一度もフィールドワークに付き合ってくれなかったんだけど」


「いや、そもそもレベル15以上離れてるモンスターがまともに言うこと聞くわけないからね?」


「まあそうかもしれないけど」


 それでもなんかこう、やっぱりVRで直接触れ合ってるからか、懐いてくれたら言うこと聞いてくれるんじゃないかな……みたいなリアル寄りの思考が付いて回るんだよね。


 まあ、そんなことはとっくに他の色んなプレイヤーが試してて、無理だったみたいだけど。


「15レベル差が一つの境なのかな? 紅葉のキングケマリンのレベルが上がったら分かるかな」


「モッフルね。あの子、探索でもうレベル上がったけど、今までと何も変わらないよ?」


 ほら、と、私はスマホを掲げて窓の外をARモードで撮影してみせる。

 するとそこには、のんびりと校庭を跳ね回り、花壇に生えてる草を貪るモッフルの姿が。


 ……あくまでARだから花壇の花には何の影響もないんだけど、見てて若干ハラハラする。お花食べちゃダメだよ?


「モッフルはなんだかんだで傍にはいてくれるからね。たぬ吉も今はレベル8まで来たけど、偶に勝手に探索に出ちゃうくらいでいつも言うこと聞いてくれるし。ねー」


 ポン、とスマホの画面をタップすると、足元にころりと転がるモンスターの餌。

 それを、ひょこひょこと寄って来たたぬ吉が器用に手でつかんで食べ始めた。うーん可愛い。


「紅葉の幸運を常識で計ろうとしたのが間違いだったよ」


「そんなことないと思うけど……そういえば、渚のモンスターってどんな子なの? まだ見たことないんだよね、私」


「ふふーん知りたい?」


 そう言って、渚もまたスマホを操作しTBOへアクセスする。

 ポンと画面上に現れたのは、小さくデフォルメされた馬のモンスター……ライドホースから進化したであろう、セイントペガサスという名のモンスターだった。


「わあ、可愛い!」


「でしょ? 今はAR限定のミニサイズになってるけど、本当なら私より大きいよ」


「へ~、じゃあ騎乗タイプのモンスターなんだ。空も飛べるの?」


 ペガサスといえば翼の生えた馬だ。もしかしたら、と思って聞いてみれば、 渚はニヤリと得意気な顔。


「ふふふ、もちろんよ! まあ飛んでる間はスキル使用に制限かかるから、戦闘中にずっと飛び回るなんてのは出来ないようになってるんだけど、それでもスカイに乗って空の旅は格別よ~? なまじVRだから猶更ね」


「へ~、いいな~!」


 スカイって名前なんだこの子、なんて思いながら、私は空の旅へと思いを馳せる。

 私もモッフルで飛べなくはないんだけど、あれはあくまで跳んでるだけだし、衝撃が凄くて周りの景色を堪能する余裕ないんだよね。一瞬で終わっちゃうし。


「乗ってみたい?」


「うん、乗りたい!」


「よし、それじゃあ無事フィールドボスを倒して第二の町まで来れたら、ご褒美に乗せてあげよう。頑張れ紅葉」


「やった! 約束だからね」


 フィールドボスは最初から倒すつもりだったけど、新しいご褒美が出来たよ。

 これは益々がんばらないとね!


「あれ、たぬ吉は何してるんだろ?」


 そんなやり取りをしていると、ふと足元にいたたぬ吉が渚のスカイと鼻先を突き合わせ、じゃれ合っているのが見えた。前足でつついたり転がり合ったりと、なんだか楽しそう。


 ほっこりするな~と思いながら眺めていたら……ぴこん、とスマホの画面にメッセージ。


『たぬ吉が《スイレン》さんの《スカイ》よりスキル《アラウンドヒール》を伝授されました』



スキル:アラウンドヒール

効果:パーティ内のプレイヤー及びモンスターの体力をすこしずつ回復する。魔力消費50。



「おお、すごい! こんなことあるんだね」


「まあ、リアルでモンスターを連れ回す利点の一つだね。と言っても、普通は《ヒール》とかの初級スキルしか貰えないんだけど……アラウンドヒールとは、相変わらず引きがいいね、紅葉は」


 貰えたスキルの詳細に、渚は呆れたように肩をすくめる。

 ちなみに、たぬ吉からスカイちゃんに伝授されたのは《もの拾い》だって。うん、普通だ。


「でも、これで索敵以外にたぬ吉が経験値を稼ぐ手段が手に入ったわけだよね。打倒フィールドボスに近付いて来たかな?」


 一人のプレイヤーが連れ歩けるモンスターは、同じパーティを組んだプレイヤーの数にもよるけど三体まで。

 ピーたんが攻撃、体力の多いモッフルが壁役になって、たぬ吉が回復担当。バランスが整ってきたよ。


 え、私? 私はほら、あれだよ……回復薬・毒でお祈りしながら応援する係?


「ほほー、じゃあそろそろ挑戦する?」


「うん、でもその前に、どこかで腕試ししたいな。レベルもまだ低いし」


 フィールドボスは20レベルって聞いたから、ピーたんやモッフルはともかくたぬ吉が全然届いてない。

 ピーたんがちゃんと戦ってくれるかも確かめたいし、今日は帰ったらどこかで戦闘したいな。


「そういうことなら、オススメは何かしらのボスバトルが発生するクエストを受けることかな? クエストを見付けるところから始めないとだけど」


「クエストかぁ、例えばどんなのがあるの?」


「うーん、そうだね……」


 渚が顎に手を添えて考え込む所作を見せたところで、再び私のスマホにメッセージ。どうやら、ピーたんが探索から帰って来たみたい。


 持ち帰ったアイテムは、いつも通りの果物が一つ。相変わらずだなぁ、と思っていると、今回は更にもう一つ、おかしなアイテムが混ざっていることに気が付いた。


「うん? これは一体……」



名称:女の子のリボン

詳細:とある女の子が落としたリボン。トレード不可。



 なんだろう? と首をかしげていると、追加で更にメッセージ。


 その内容は……新しいクエストの発生を告げるものだった。



クエスト:落とし主の捜索

内容:《女の子のリボン》の持ち主を探す

参加条件:一人

推奨レベル:20以上

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ