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第百四話 人魚クエストと真珠集め

 人魚姫から受けられるクエストは、南海諸島エリアの浜辺で捕れる《星真珠》を集めることだった。


 浜辺をよーく観察して、小さな空気穴が空いてるところを掘ってみると貝が出てくるから、それをパカッと開けると《海真珠》か《星真珠》のどちらかがドロップする。


 ……潮干狩りとか真珠とか、なんか色々混ざっておかしなことになってない?


 ちなみに、たぬ吉達うちのモンスターは道具なんて使わず、手足で直接掘り起こしてる。

 タマとか見た目は道具も使えそうなんだけど、素手でいいの?


「まあ、細かいことは気にしたら負けかー」


「クレハちゃん、どうしたの?」


「ううん、なんでもなーい」


 首を傾げるティアラちゃんにそう答えながら、私は砂浜をほじくりかえす。


 クエスト受注時に貰った、小さな……なんて言うのこれ、熊手?

 まあとにかくそれでざくざくやって、出てきた貝を開いてと……。


「よし、大当たり! 《星真珠》だ!」


「わあ、クレハちゃんすごい! 私、まだ《海真珠》しか……」


「じゃあ、次は一緒に掘ってみよ? 私の運のお裾分けだよ!」


「あ……う、うん!」


 ティアラちゃんと一緒に掘り起こして、出てきた《星真珠》を見て笑いあって。


 作って貰った水着衣装でそんなことをしていると、すぐ近くで変な声が聞こえてくる。


「はあ、はあ……クレハとティアラ、可愛い子が二人で仲睦まじく潮干狩りする光景……! んぁー、たまらん! 動画に残して永久保存だよこれ!」


『スイレンが完全に不審者な件』

『いつものこと』

『悪い子は通報よー』


 見れば、スイレンが一人離れたところから私達をムービーで録画していた。


 全く、何してるのやら。


「ほら、スイレンも早くこっち来て、一緒に真珠探してよー! クエストで要求されてる数、結構多くて大変なんだからねー!?」


「いやいや、私はもうここから二人を眺めてるだけで満足だから」


「満足とかじゃなくて、手伝ってって話だよ、ほら!」


「そうですよ、お姉様。クレハちゃんがこう言ってるんですから、一緒に探しましょう……!」


「ちょ、ティアラまで!?」


 ティアラちゃんと二人、抵抗するスイレンを両側からがっちりホールドして、浜辺まで連行する。


 私達が働いてるのに、スイレンだけサボるなんて認めないんだからね!


「ほらスイレン、ちゃんとこれ持って」


「これです、この小さい穴のところ掘るんですよ」


「お、おふぅ……! 何これ、私知らない間に天国に来てた……!?」


 スイレンに熊手を握らせて、ティアラちゃんの時と同じように一緒に掘っていく私と、スイレンの橫で掘るべきポイントを示すティアラちゃん。


 そんな状況で、促されるままに貝を掘り出すスイレンは、なぜか顔を押さえて今にも死にそうな顔をしていた。


 いや、なんで?


『ナチュラルにスイレンの理性を破壊していく幼女二人』

『天然って怖い』

『クレハちゃんはともかくティアラちゃんは天然なのか??』

『わからん。結構ウブなとこはあるが……』

『もう可愛ければなんでもいいよ(脳死)』

『せやな(脳死)』


 視聴者のみんなもよくわかんないこと言ってるし……って、いつものことか。


 全く、みんな想像力豊かなんだから。


「おや、君達は……こんなところで会うとは奇遇だね」


「およ?」


 視聴者も交えて、三人でわちゃわちゃと真珠集めをしていると、後ろから声をかけられる。


 振り返ってみると、そこには思わぬ人がたっていた。


「ゼインさん! それにスピカさんも、お久しぶりでーす!」


 このゲームにおけるトッププレイヤー(らしい)二人に向かって、私は手を振りながら挨拶する。


 ティアラちゃんが所属してるギルドのマスターとサブマスターでもあるらしいけど、近頃全く会う機会がなかったから本当に久し振りだ。


 ちなみに、二人の装備は海らしく水着仕様で、スピカさんは色気たっぷりなビキニ、ゼインさんはサーファーみたいなウェットスーツを着込んでる。


 なんというか、元々騎士っぽく大柄な感じだったゼインさんがそれを着ると、筋肉が浮き出てすごいことになってる。細マッチョ的な?


 ただ、ウェットスーツの上に剣を装備してるのは似合わないと思う。スピカさんの魔法使い装備は似合ってるんだけどね。


「ここにいるってことは、お二人も人魚姫のクエストを?」


「ああ、もちろん。せっかく君が見付けてくれたイベントクエストだ、達成しないと損だろう?」


「なるほどー」


 どうやら、私の配信から情報を得て、すぐに動き出していたみたい。


 しかも、既に《海竜の宝玉》だけじゃなくて、《海王の牙》も入手済みなんだって。すごい。


「前回のイベントでは遅れを取ってしまったからな。今回こそは君に勝ってみせよう」


「え? 勝つって言っても、今回はランキングとかも特にないですよね?」


 だから、誰がいくら稼いだのか、みたいなのもわからないって聞いたんだけど、何を勝負するんだろう?


「む、知らないのか? イベントの最後に、より多くの貢ぎ物をしたプレイヤーが王から表彰されるそうだぞ」


 だから、トップのプレイヤーだけは誰なのか分かるとゼインさんは言う。


 ほえー、そうなんだ……ていうか、それを勝敗の基準にするっていうことは、ゼインさんはトップを狙う気満々ってことだよね。


 私は今回、みんなからアイテムを分けて貰うことも出来ないし、流石に無理だろうなー。


「チューチュー」


「おお? チュー助、早かったねえ、もう採取終わったの?」


「チュ!」


 そんな話をゼインさんとしてたら、チュー助が戻ってきた。


 たぬ吉やタマ共々、この島に着くなり勝手に採取を始めてたけど、何を持ってきてくれたのかな?


 クエストが進むし、《星の真珠》がたくさんあるとありがたいんだけど……。



・海の財宝×50

・海の真珠×20

・星の真珠×2



「うーん、チュー助でもそんなにたくさんは集まらないかー、まあ仕方ないよね、地道にがんばろっか」


「チュ!」


『いや待って待って』

『確かに真珠はクレモンにしては少ないけどさw』

『イベントアイテムの財宝、どんだけ拾ってくるのよw』

『五十個はヤバい』

『てかクレハちゃん、ひょっとしてクエストのことで頭いっぱいになってて、元々今回のイベントが何を集めるイベントだったか忘れてない?』


「…………」


 わ、忘れてないし。ただ、今は真珠の方が大事だっただけだし。


 ちょ、みんなわざわざ溜息をコメント欄に書き込まないでよ!! 誰がアホの娘か!!


 ていうか、今チュー助まで溜息吐かなかった!?


「チューチュー」


「んん?」


 私が愕然としていると、チュー助はやれやれ、みたいな感じでティアラちゃんの方に寄っていく。


 なんか、スピカさんと「たまにはギルドにも寄ってね」みたいな話をしていたらしいティアラちゃんは、チュー助の存在に気付くと慌てた様子で私の下にやって来た。


「ご、ごめんねクレハちゃん、話し込んじゃってて。えと、まだ真珠、足りないよね? もっと一緒に掘ろ?」


 えへへ、と、楽しげに笑うティアラちゃん。可愛い。


 すると、視聴者から謎の納得の声が。


『なるほど、チュー助はご主人様とティアラちゃんの楽しみを奪わないために敢えて真珠を集めなかったのか』

『空気読む能力高過ぎへんかこのクソネズミ』

『さすがクレモン』

『クソネズミ呼びはもう出来んな』

『イケメンネズミ』

『イケネズ』

『誰一人としてチュー助が拾うアイテムを選り好み出来る存在だという前提に意見してないの笑う』

『そりゃクレモンだからな』

『当然』


 どうやら、みんなの中でチュー助の評価が爆上がりしたみたい。なんかおかしくない?


「運営に対策されたと言われていたが……ふむ、やはりクレハは油断ならないな」


 ゼインさんまで、一緒になって私にライバル意識飛ばしてるんだけど……いや、流石に今回は勝負にならないと思うよ? 期待しないでね??


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― 新着の感想 ―
[一言] 自立行動に好感度とかその辺の隠しパラメータが実は存在してるけど、 そもそも自立行動とかさせないからその辺の検証が欠片も進んでないとかそういう奴なんじゃないかって気がしてきた…… ○ケモンでバ…
[一言] ドラコ「や、やっと材料揃え終わった、、、、、、ん?イベントだと?ポン太先輩場所どこだ、、、、、、、、う、海だと」
[一言] 百合にはさまる男(ゼイン)に敗北を
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