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第百三話 南海諸島と人魚姫

 スイレンの案内で、私とティアラちゃんは海エリアの奥にあるという《南海諸島》を目指して出発した。


 私の今回のメンバーは、たぬ吉とタマ、それにチュー助を連れて来たよ。


 戦闘タイプの子が全くいないけど、それには理由があって……なんでも、今向かってる先で発生する人魚姫のクエストは、アイテム収集系らしいの。


 だから、戦闘の方はスイレンに任せて、私は採取に集中しようってわけ。


 ちなみに、キュー太がいなくて水上の移動はどうするのかっていう問題については、これまたスイレンが解決してくれた。


 スイレンが連れて来た、水棲騎乗タイプのモンスター。シーホースだ。


「ブルー、はいよー!」


「フシュゥゥ!」


 魚と馬、それに亀の甲羅を合わせたような体を持つシーホース……ブルーは、ペガサスのスカイと比べても大きな体をしていて、私とティアラちゃんを含めて三人乗りしても平気だった。


 スカイと比べるとその分スピードは落ちるんだけど、水上での安定感が売りで戦闘向きなんだって。


 どれくらい安定するかっていうとね、なんと、思いっきり走っても私が振り落とされないの! これは凄いことだよ!


『キュー太であんだけ落とされまくってたクレハちゃんが全く振り落とされないのすげえ新鮮』

『いやまあ、落ちないのが普通なんだけどな。騎乗モンスターだし』

『クレハちゃんは圧倒的幸運と引き換えに運動神経赤ちゃんだから仕方ない』


「誰が赤ちゃんだー!!」


 人が感動してるところへ水を差す視聴者へと、私は全力で突っ込みを入れる。


 幼女扱いだけでも度しがたいっていうのに、ついに赤ちゃん扱いだなんて。全く、失礼しちゃう。


「いやクレハ、そう言いながら自分のモンスターにシートベルト付けて貰ってるじゃん」


「これはほら、タマのスキルの練習だし!! 決して振り落とされないための保険とかじゃないから!!」


 目敏く私の体を固定するタマの糸へと目をつけたスイレンがからかってきたから、全力で言い訳する。


 いや、本当に、私が頼んだわけじゃないからね? タマが自主的にやってくれてるだけで!


「大丈夫、クレハちゃんにお世話が必要なら、私が全部やってあげるから……!」


「全然大丈夫じゃないんだけど!?」


 そして、いつものように少しズレたフォロー(?)を入れるティアラちゃんまで参戦して、いい加減私の突っ込みが追い付かなくなってきた。


 全く、みんなして私をいじり倒して、そんなに楽しいの?

 ……返答は分かりきってるから、わざわざ聞かないけどね!!


「それで、スイレン。後どれくらいで着くの?」


「んー、まあ後十分くらいか、なっと!!」


 私の方から話し掛けると、スイレンは返答の合間に魔法スキルを放つ。


 その先に現れたのは、南海諸島周辺に出没するモンスター、ポイズンゼリー。

 毒々しい色をしたクラゲみたいなモンスターだ。


 それが、スイレンの雷に貫かれて一瞬で蒸発しちゃった。南無南無。


「いやー、スイレンは相変わらず強いねー、頼りになるよ」


「これでもそっちメインでやってるからね。そうは言っても、クレハのモンスターには勝てるか怪しいけど……何するか分かんない怖さがあるし」


 そう言ってスイレンは、私のモンスター達……現在私の膝の上で熟睡中のタマや、肩の上でまったりしてるたぬ吉とチュー助を見る。


 うちの子達が何しでかすか分からないっていう言い分は分かるけど、この子達を見て言われましても。


「スイレン、この子達はみんな探索タイプなんだよ? 戦闘は強くないってば」


『強くない……はずなんだよな、確かに』

『でもクレモンだしなぁ……』

『タマとか進化前から強かったし、今やったらワンチャンヤバいんじゃね』

『たぬ吉はサポートキャラだし大丈夫でしょ(震え)』

『言うて初期キャラのままイベント最前線を無傷のまま突っ走る狸だぞ?』

『既に強い(確信)』

『クソネズミはまだよくわからんな』

『クレモンの中では存在感薄いしな』

『そんなこと言ってたらめっちゃ活躍しだすんだろ知ってる』


「本当にみんな、うちの子をなんだと思ってるの?」


 ていうか、タマが進化前から強かったって何のこと? この子、まだ戦闘してもらったことないんだけど?


「クレハちゃん、クレハちゃん」


「うん? どうしたのティアラちゃん」


「その、あれ……」


 若干控えめに、ティアラちゃんが私達の後ろを指し示す。


 するとそこには、左右から現れたポイズンゼリーの放つ毒液を、たぬ吉の分身が海上を不自然に滑りながら回避して遊んでいる光景があった。


 ……いやあの、たぬ吉、いつの間に《デコイ》スキルなんて使ってたの? それに、敵モンスターの攻撃なんていつから始まってた?


 え、さっきからずっとやってた? 気付いてなかったの私だけ?


「クレハちゃんのモンスター、すごいよね……」


「いやその……うん、そうだね……」


 たぬ吉、本体はずーっと私の肩に乗ったまま欠伸なんてしてるけど、さりげなくスイレンのサポートをしてくれてたんだね。


 うん、うちの子は私と違ってすごいね! その調子でがんばって!!


「ほら、二人とも着いたよー」


 心の中でヤケクソ気味に叫んでいると、スイレンから声をかけられる。


 顔を上げると、そこには正に常夏の島! って感じの小さな島があって、それが無数に連なった一つのエリアを形成していた。


 そして……その浜辺には、たくさんの人魚が寝そべり、日向ぼっこしている。


「へー、ここが南海諸島エリアかー……それで、人魚姫ってどこにいるの?」


「さあ?」


「え、さあって……どういうこと?」


 目的の《海姫の涙》は、人魚姫から受けられるクエストを達成すると貰えるって話だからここまで来たのに、それが分からないとは??


 私が首を傾げていると、スイレンはポンと肩に手を置いた。


「人魚姫、位置が固定じゃないから探すの大変なんだよね。というわけで、ここはクレハのラッキーダウジングに任せた! 適当に進む方向決めて!」


「ラッキーダウジングって何!?」


 スイレンの意味不明な丸投げに、思わず抗議の声を上げつつ。


 取り敢えず、近くにあった木の枝が倒れた方に進もうって決めたら、一発で人魚姫が見付かったのは……まあ、うん。ノーコメントで。

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