プロローグ的なエブリシン その6
「ほれ、こっちじゃ」と案内されたのは高級そうな調度品に囲まれた偉いさんの執務室ぽい場所。
ほら、あのデスクだっておそらくマホガニー製。勧められるままに座ったソファもハイソサエちいな物、オレの愛車より余裕で高そうなフカフカ感。壁に掛けられた歴代のと思わしき肖像画。最初からこの部屋に居たであろう秘書らしき女性から黙っていても出されるお茶。
場違い感ハンパないとキョドっても仕方なくない?
なくなくない?ねえ?
「それでじゃな。キミに話があるんじゃ」とにこやかに話し始めるご老人。
「キミはあれらが見えて、聞こえて、しかもあれらに自分の言葉を届けることができる。間違いないね?」一転、真剣な面持ちで断定してくる。
なかなかに否定し難いが、“あれら”ってのはあの小説の表紙画の宇宙人達で良いのか?
待て!
そもそもこの爺さんもあれが見えるのか?
だからオレ程度の若造に声を掛けたのか?
まあ良いか当たって砕けろだ。
黙ってオレの返答を待っている老人に
「あれらと言うモノが何モノかは知りませんが。あの小説の絵の様なモノに遭遇したのはそもそも今日が初めてでして。混乱しているというのが現状です。見て、聞いて、口論したのは事実ですが」と言う。
「ほう?初めて?天然のしかも覚醒直後?ふむふむ。
ワシはなあれらがうっすらと見えるだけじゃ。キミは付喪神を知ってるかね?」
「付喪神?年を経た物に憑くと言うアヤカシとか神?とかのアレですか?でもあのSF小説は古いと言っても80年代後半から~90年代では?」
「ほう。知っとるか?じゃがな、あれらには経た年月は関係ない。染み着いた執念、妄執や思いの力でそれを越えうる。ま、珍しいがな?」
「一念岩をも穿つですか?史記や韓詩の外伝?どっちだっけ?の?」
「ほう。勉強家だのう。両方正解。それじゃそれ。」
「で、オレに話ってのは?」
話を纏めると文楽堂書店の資料室古書課特殊対策室に就職しないかって話。付喪神を代表するような書物関連の怪異に対する相談員として働かないかと、荒事は専門の外注が居るから危険はないし、外注先(TVに出せないホンモノの霊能者など)との交渉や調査、対処の依頼するにも自社内に専門員が必要。給料、福利厚生良いし、NY,paris,Londonとかに海外支社あるしと猛プッシュ。頭もこれでもかと下げられ、のらりくらりとかわしていたが最終的に何故特定出来たのか本家の伯父の名前まで出され、個人情報諸々を白状させられ、後日部下から連絡させるからと笑顔で送り出されるオレ。
あれ?
は?あのエセイケメンとの揉め事は?
事情聴取は?
オレの最終兵器ボイスレコーダーは出す間もなかったけど
オレの輝く勝訴の場面は?は?
あっのころは~!ハッ!!
まっ、あれはどうでも良いかとか、
これは外堀埋めらて逃げられないかもなあ、母さんに何て言おうとか、
内堀もやばくね?大阪夏の陣かよ?あれ冬の陣か?オレの真田丸はどこだ?
敵中突破ばい!すてがまりば御馳走いたすでごわんど!!あれ?これ関ヶ原の鬼島津に途中からなってね?裏切ったな小早川め!ぐぬぬ、ワシは柿は喰わぬぞ!!
とため息混じりにワリと効いてない感じで
それこそどうでも良いことも考えつつ駅へ向かうオレであった。
ふぅ、今日はここまでです。
誤字脱字等の指摘、アドバイスお待ちしてます。もちろん批評や感想もです。
ここまでお付き合い下さりありがとうございました。
初めての投稿ですが楽しんでいただけたら幸いです。
それでは、次回、今回のプロローグジシイ視点の間話(というおもに説明の補足)を挟んで第一章 出社編でお会いしましょう。