第十話
集会所。何人かのおっさんと、俺と、カエデ。
アルコール臭いそこで、俺はおっさんの斜め上をいく発言に固まっていた。
「ああ、そうだ。何もわざわざ買うことはねえ。俺のお古をくれてやるよ」
そういって、おっさんはがたがたとそこら辺を探し出した。
俺が硬直しているのも気に留めず。
頭の中ではさっきのおっさんの発言がぐるぐるとリピートされている。
『ん?簡単なことだろ。ふちで殴りゃいいんだ』
ふちで、殴る?
騎士ってのはそんなむごいことをするのか?
撲殺だよそれ。撲殺。
それも多分、死ぬか死なないかのぎりぎりのところを狙うやりかただよ。
もし死ななくても、後遺症とか残るよ。多分。
そんなことを考えていると、おっさんがこっちへ来た。
「ほれ。なかなかかっこいいだろ?な?な?」
「そんな自慢の物を今日会ったばかりの他人に渡していいんすか?」
半ば呆れながら聞いてみる。
「ああ。武具なんて、使われなくっちゃ意味が無い。人を守るためにあるもんが、そこら辺でホコリをかぶっている。それがあれば二人の命が救えるっていうんなら、俺はそんなものくれてやるよ」
…実に、おっさんは良いことを言ったと思う。
彼が酒臭く無ければ。
そんなことを考えていると、彼は俺の腕に盾を付けて、調整を始めた。
おっさんが持っていた盾は円盾のセンターグリップ式で、中心軸に持ち手がある。
直径は片手の拳から肘まで位の長さで、さほど重くはなかった。
ていうか、軽い。これなら、付けていても大きな動きができそうだ。
「ほれ。ぴったりじゃねえか」
「ありがとうございます」
彼はご満悦のようだった。
「よし、じゃあ基本的な使い方を教えてやる」
ついてこい、というと彼は集会所から出て行った。
それに俺がついていき、それにカエデがついてきた。
「ここだ」
よく分からない場所だった。
そこまで狭くなく、広くもないような場所。
おっさんはそこらにある棒を拾った。
「よし、それでは訓練を始めるぞ」
――右だ!
ガァン!という音が響いた。
彼が振り下ろした棒が俺の動かした盾に当たったのだ。
「うむ。反射神経はなかなかだな」
そう言いながらも棒を振ってくる彼。
カエデをかばいながら盾で攻撃を防ぐ俺。
「よし」
しかし彼はそう言って、ぴったりと攻撃をやめた。
「うむ。反射神経はなかなかだな。それでは盾での攻撃方法を教える」
…本当に盾で攻撃するんすか?
そう聞きたかったけど、言わないでおいた。
俺はおっさんから盾の使い方を教わった。
彼曰く、『武具の使い方は使う人の数だけある。自分流の闘い方を極めろ』だそうで。
そして、俺とカエデとおっさんは今、街の飯屋にいる。
おっさんが『俺のおごりだ、食え食え』というのでせっかくだからおごってもらうことにしたのだ。
「うーむ…今日は中々いい日だった」
「いつもは何やってるんすか?」
「酒を、飲んでいる」
「…あ、そうっすか」
確かにそうだろうな。
「ああ、そうだった」
そう言って彼は席を立ち上がり、カエデに何かを渡した。
「なんすかそれ?」
彼は少し笑って、
「秘密だ」
と言った。




