第九話
街。通りのサイドには商店が有り、商人や客の声で賑わっている。
食べ物、小道具、そして武具。
通りは人でごった返し、老若男女、色んな人が歩いている。
子供たちの笑い声や、おばさんたちの世間話など。
いつも街は賑やかなものである。
ただ、俺はその賑やかさに未だに慣れられないでいる。
昔から、人ごみは嫌いだったのだ。
足踏まれるし。肩がぶつかるし。大男に弾き飛ばされるし。
とまあ、いろんな障害を乗り越えながらなんとか騎士団の集会所(?)の前にやってきた。
「試験を受けたいんですが…」
そう言いながら、戸を開けると、少し信じがたい光景があった。
おっさんたちが酒を飲んでいた。
…ここ、本当に騎士たちの集まりなのか?
そりゃ、騎士たちもぶどう酒かなんかを優雅に飲んでいても良いかも知れないが、この人たちは酒瓶にそのまま口をつけてゴクゴクと飲んでいるのである。
あんたら、街を守るのはどうしたんだ。
まだ真っ昼間だぞ真っ昼間。
「おいおい、このご時世に騎士になりたいなんていう奴が出てきたぞ、フヒヒヒヒ!」
かなり下品な笑い方をする。
「いや、俺は騎士になりたいわけじゃなくて武具を持ちたいんです」
すると、さっきとは別のおっさんが答えた。
「なるほどなあ…ただ、ここの試験に受かると、武具を持つことが許可されるが、最低でも一ヶ月はこの街で騎士として働かなくてはならんのよ」
「ま、昼間は酒飲んでるだけだがな、ギャハハハハ!」
それにしても、かなりの酔いっぷりである。
ただ、騎士として働くってのは想定外だった。
確かに、騎士の試験なんだから、当たり前かもしれないけど。
だが、こちらもこちらで引き下がれない。
おっさんたちに向かって頭を下げる。
「お願いします!俺はこの娘を守らなきゃいけないんです!」
必死にお願いした。こんなことは初めてだった。
心から願う。そんなことは今まで一回も無かった。
「…あんちゃん、本気なんだな」
「はい。だからどうにか!」
「ただ、そういうわけにもいかねえ。騎士の試験を受ければ騎士になるのは当たり前。そうだろ?」
「はい」
やはり、駄目なのか。
そう思い、顔を上げて俺と話をしているおっさんを見る。
そして、彼の目は、彼の心を映し出した。
『なら、受けなければ良いんだ』
その言葉を彼は口に出して言う。
「だったら、受けなければ良い話だ。この街で試験を受けなければ持ってはいけないものは剣、槍、銃、弓矢程度だ。そして、この街で売ってるものは剣、槍、銃、弓矢意外に一つだけ有る」
彼の目は、彼の口が動くよりも先に俺に物事を伝える。
『盾だ』
「盾だよ。盾は、試験を受けなくても護身用として持つことができるんだ。まあ、とげ付きの盾なんかは無理だがな」
盾。
人を守るためにあるそれで人を攻撃できるのか。
「でも、盾でどうやって攻撃すればいいんですか」
「ん?簡単なことだろ。ふちで殴りゃいいんだ」
…斜め上をいく答えだった。




