IV:抜けた完璧感
携帯のメールアドレス一覧をじっと見つめる。登録された女子の名前は少ない。当時携帯を持っていなかったこともあるが、小学校や中学校の時の同級生は学校の連絡網を使うか交友関係の広い男の友人に聞けばなんとかなるため、ほとんど登録されていない。まあ聞く機会もないだろうが。
だから登録されている女子は嗣武の彼女であり小学校からの付き合いの春野さやと、部活の女子、それから……光賀さん。
文化祭実行委員ということで交換した番号。実行委員関係で繋がったのは彼女だけだ。
体育部はほとんど一緒に残って作業できなかったため、必然と文化部の人ばかりで一緒に作業することになった。こちらも部の展示の準備や作品作りがあったが不思議と文句はなかった。それに体育部の実行委員には学年展示の後片付けを率先してやってもらったし。
俺を巻き込んだ司が運動部側だったのは少し不満だったけど。
残された文化部ばかりでやった準備は、なんというか二分されていた。
光賀さんと俺以外の数人はどうやら友人同士だったらしく固まって作業してた。お互い1人同士ということで2人で1台のパソコンと資料に向き合い文字を打ち込んだ。
その時の彼女の印象はしっかりしてる完璧な人だと思った。自分たちの作業が終わったらすぐに先生に報告し次は何をしたらいいのか聞いていた。俺個人としてはもう少しゆっくりしてもいいのでは、と思ったが悪い印象はなかった。
世間話を作業をしながらたくさん話した。話しやすく真面目な人柄が映し出されていて、一緒にいて疲れないな、なんて思ったりもした。
文化祭が終わってからも廊下で会ったら挨拶をしたり、帰る時間が同じになれば夜道だから危ないという思いもあり途中まで一緒に帰ったりした。その時も、最初の印象は抜けなかった。
でも、最近の光賀さんは面白い。
すごく大きなお腹の音がなったり、驚いた時うまく喋れなかったり、表情がころころ変わって顔に出たり。
あと、意識がもうろうとして迷惑をかけてしまったあの保健室での出来事。今日の朝に病院での診断結果を報告しに行った時、保健室の先生から聞いた。
「普通、おでこに手を当てといてと頼まれたからって先生が来るまでするかな……」
具体的な時間は聞いていないが多分1時間はかかっただろう。そう思っただけで申し訳なさと嬉しさがこみ上げてくる。
「完璧感、抜けたなぁ」