11:ピンク
2日間の部活は終わり、ペース的に問題はなかった。2年生の間に生まれた不安の声は先輩方に届けられず、3人の間で抱えることになった。
今日は史歩ちゃんと買い物。久しぶりに史歩ちゃんと遊ぶから楽しみだ。
「……よし、行ってきまーす」
「おお……いってらっしゃい」
……ようやく休みに入った海斗は私と出かけることができずどこか辛そうだったが。
待ち合わせの場所にはまだ史歩ちゃんは来ていなかった。10分前についたから仕方がない。
それにしてもゴールデンウィークだから人が多いな。人ごみには強いほうだけれど普段よりも多いからちょっとしんどい。こんなに多いなら知り合いにも会いそう……なんて。百井くんならいいなー、なんて。
「あ、光賀じゃん」
栗生くんでした。
「誰かと待ち合わせ? 俺もなんだよねー」
「栗生くん……あんまりここにいないほうが」
「え、でも待ち合わせ場所ここだし……」
「史歩ちゃん」
「よし、連絡して場所変えてもらうわ」
物分りが良くて助かります。誰と待ち合わせしてるの、と聞くとサッカー部の後輩らしい。一緒にシューズを見に行くそうだ。
「そういや、光賀は後輩と仲良くできてんの?」
「ううん、まだあんまり……」
突然話を振られて驚いたけれど、答えたことは本当のことだ。栗生くんは後輩と仲よさそうで羨ましい。
「光賀面白いんだからさ、あんま気負いすんなよ。じゃな」
栗生くんは私にいろんなことを言ってくれる人だな。なんとなくそう感じた。
5分くらい経って、ようやく史歩ちゃんの姿が見えた。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「ううん、大丈夫だよ」
実際遅刻してるわけじゃないんだし、と言うと「あ、そっか」と言って笑った。
「今日はどこに行く?」
「うーん、じゃあ服でも見に行くか」
史歩ちゃんの言葉で服屋さんに行くことにした。史歩ちゃんはおしゃれさんだから、一緒に遊ぶ時はよく服屋さんに行く。背が高くスラッとしてて羨ましい。せめてもう少し私も身長があれば……。ヒールとかの底が高い靴はなんとなく歩きづらく感じるから、私自身が高くなりたい。
数分歩くとよく行く服屋さんに着いた。店の中では基本自分の好きなのを見ることにしてるので、私は夏用のスカートを探しに行った。
「うーん、これどうかな……」
膝下くらいの淡い黄色のスカートを手に取り、家にある服と着回せるか考える。やっぱり寒色系のほうがいいかな。
「史歩ちゃーん、これ私に似合うかな?」
「ん? あー……似合うんじゃないかな。でもそっちのピンクのほうがいいんじゃない?」
「そっかな……」
第三の選択肢である同じスカートのパステルピンクを手に取る。桜色とも言えるそれは確かに可愛らしいけれど。
「百井、ピンク系の色好きらしいよ」
「え、それどこ情報」
「さーね」
ピンクかあ……どうだろうか。うーんうーんと決めあぐねている間に史歩ちゃんは自分の欲しいものを会計に持って行っていた。
「……いける、かな」
頑張ってみよう。
服屋さんを出た後は2人で雑貨屋さんに行った。安めのアクセサリーや可愛い文房具が売ってるのでよく来る。文房具なら百均のほうが安いし使い勝手もいいものが多いけれど、シャーペンはやっぱり可愛いものがいい。可愛いと言ってもシンプルなデザインのものしか使う勇気がないんだけどね。
「そういや奏衣って、文房具とかも寒色系が多いよね」
言われてみたら確かにそうかもしれない。赤やオレンジのボールペンはもちろん使うけれど、筆箱だったりシャーペンだったり、だいたい緑や青系の色だ。もう少し細かく言うとエメラルドグリーンや浅葱色。
「たまにはピンクとか使ってみなよ」
「……それも百井くん絡みの理由?」
「いや、このシャーペン2本買うとおまけで消しゴムくれるみたいだからお揃いしないかなって」
見せてもらったシャーペンは暖色系のものしか残っておらず、ピンクやオレンジ、赤があった。史歩ちゃんは赤が好きだからその色を買うのだろう。
お揃いだなんて中学の時ぶりだからなんだか嬉しくて、いつもよりも暖かい色への先入観は消え去っていた。
「それならいいよ。お金後で払うね」
史歩ちゃんは少し暗めの赤、私は思いきってビビッドピンクを選んだ。




