表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

9:映画を見よう

 今年のゴールデンウィークは1日が土曜日なので5連休である。長いようで短い5日間。課題と予定はたくさんありすぎて困るのだが。

 手帳を開いて予定を確認。ちなみに今日は勝実お兄ちゃんと映画を見に行く。海斗はお仕事です。残念がってたけど仕方がない、何かお土産がてらに美味しいもの買っとくか。

 2日と3日は部活が丸一日入っていて、4日は史歩ちゃんとお買いもの、5日は朝部活があるけど昼はフリーだ。

「男といる予定は兄と部活だけって寂しいわねえ」

「うるさい」

 カウントダウンの数字を見るためにロケットを開いていたが、声に出さなくてもロサは私の脳内の発言を読み取るようになってきた。変なこと考えないうちにロケットを閉じるのが最適解だろう。


 映画館に着いたのは10時前だった。上演は11時半からなのでそれまでぶらぶらすることに。ショッピングモールの中にある映画館なので時間を潰せる場所はいくらでもある。チケットは既に予約しているので映画館ではジュースを買う時に並ぶだけで良さそうだ。

「それにしても映画館で観るなんて珍しいね。いつも家でレンタルしたやつなのに」

「チケット貰ったんだよ。でもごめんな奏衣。あんま興味ないだろ」

 今回観る映画『ヤッピーの城』は簡単に言うと、ホラーだ。どうしてゴールデンウィークにホラー。夏にやればいいのに。でも役者の演技が素晴らしいそうで、中海先輩に勧められていた。

 ホラー映画は海外のグロテスクなのも、日本の夜眠れなくなるやつも苦手。でも今回観るやつはコメディタッチらしいから大丈夫なはず。

「ううん、部活の先輩に観るように勧められてたからよかったよ。それよりお兄ちゃんこそ、彼女さんを誘えばよかったのに」

「ああ、彼女はな……うーん」

 途端に歯切れが悪くなる。もしかしてもう倦怠期なの。

「あいつはその、なんというか……今日はどうしても抜けられない集まりがあるとかで。それにこの貰ったチケットは今日までだし」

 集まりってなんだろう。でも言いづらそうだし、追求するのはやめよう。ふと周りを見渡すと本屋さんが目に入った。

「あ、お兄ちゃん私本屋さん寄りたい」

「おー、じゃあ寄るか」

 そうして映画まで時間を潰し、あっという間に上映時間になった。



 結論から言おう。『ヤッピーの城』、すごくよかった。

 本来のヤッピーとは簡単に言うと少し嫌味なエリートサラリーマンで、スーツや車、家にお金をかけるイメージがあるらしい。

 主人公のヤッピーも(名前がヤッピーだった)そんな感じで、新しく家を買ったんだけど……そこが曰く付きで。お化けたちがヤッピーを呪い殺そうと襲ってくるけど本の当人は何も見えないから気づかない。お化けはリアルで怖かったのに、見えないから起こるすれ違いがコミカルで面白かった。

 もちろんどの役者のレベルも高く、個人的には脇役だった部下のカレンが好きだった。ヤッピーの指示に納得いかないところがあっても従う姿が、私が今度する役柄と性格が似ていたこともあってかなり真剣に観ましたとも。

 吹き替え版だったから今度は字幕版も観たいな。


「面白かったね。特にカレンの声可愛かったし、演技も凄かった」

「そこは主役ヤッピーじゃないのかよ。でもまあ……カレンの声よかったな。にしても奏衣、ホラー苦手なのに大丈夫そうでよかったわ。映画も終わったし何か食べて帰るか」

「うん。あ、海斗にもおみやげ買って帰ろ」

「じゃあどっかの店でケーキでも買って帰るか」

 今は2時前だけどそんなにお腹空いてない。でも大学生という食べ盛りの兄はカフェで軽食なんて物足りないだろう。映画館のチケットを持っていけば少し安くしてくれるフードコートならガッツリ系も軽いものもあるし、そこで食べることにした。


 私はスイーツ系のクレープを、お兄ちゃんは石焼ビビンバを注文した。映画館でお兄ちゃんからのポップコーンの誘惑に耐えたからクレープは許してほしい……。

「あのねえ、あんたそんな太ってないでしょ」

 ロサが呆れて言う。ちょうど今お兄ちゃんは、注文札が反応して取りに行ってるので席には私とロサしかいなかった。

「でも、私気を抜いたらすぐ食べちゃうんだよ……。今日はご褒美として食べるからいいんだけど」

「これだから人間はわからないわね」

 呆れた声が返ってくる。どうせ神様は太んないんでしょ、と少しムッとしてペンダントを閉めた。

「ん……?」

 ふと前を見ると遠くの方に目立つ人がいた。目立つと言うのは違うかな、なんというか自然と目に入ってくるというか。けれども一瞬でその人は消えてしまった。綺麗で少し背の高い女の人、としか覚えれてない。

「あんな人が勝実お兄ちゃんの彼女だったりするのかなあ」

 なんて思いながらクレープを頬張った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ