⑧
「ひっ。ひぅっ」
思いのままに泣き続けたまぶたがとても重く感じて、何度か浅い呼吸でしゃくりあげる。
そんなわたしの背中をトントンと、優しいリズムで軽く叩く。
わたしを抱き締めるアルフェードさんの温かい胸から静かにとくん、とくんと心音が聞こえてきてとても安心する。
「少し、落ち着いてきたか?」
労るように優しい言葉が降ってくる。わたしは静かにこくりと頷いた。
「ヴェルゼピナ!冷やしたタオルを持ってきてくれ」
「はいよ」
そう言うと彼女は泣き晴らしたわたしに冷たいタオルをくれた。それを受け取り、両目に当てる。ほてった身体には、とても気持ちが良かった。
落ち着いてきたわたしを見計らって、アルフェードさんは口を開いた。
「嬢ちゃん。お前さんさえよければ、俺の艦にいればいい。路頭に迷った子どもを見捨てるほど非情じゃ無いんでね」
このときのわたしには、それ以外の選択肢なんてきっとなかったと思う。でも、それでも、嬉しかった。
「……ありがとうございます。宜しくお願いします」
わたしはベッドに正座して、深々と頭を下げた。ヴェルゼピナさんは、そんな様子をみて
、穏やかそうな表情を浮かべている。
「この艦は野郎ばかりだからね、華があって良いじゃないか。あんた一人ぐらいの面倒はあたしが見てやるよ。他の連中はあてにならないからね」
そう言うと、彼女はわたしの背中をぱしんっと叩いた。
うぅ、痛い。
「身の回りのことは遠慮なくババアに聞けば良い。その他細かいことはファングに聞け。艦のなかではお前さんに一番年も近いから、何かと話しやすいだろう」
扉のところに立っていたファングさんは一歩前に出ると、
「仰せのままに。アルフェード様。では、宜しくお願いしますね、ソラ」
そう言って、彼は恭しく頭を垂れた。
こうしてわたしは艦の船員として、仲間入りをしたのだった。
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