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みなさんのアクセスが大変励みになります。
銀髪、琥珀の色の瞳の「悪魔さん」視点で書いております。
なんとなぁ~く、物語っぽく繋がってきていたら嬉しいです。
19時頃更新を目指します。
優しい話が書きたいなぁ、です。
「ちっ。逃がしてしまったか」
忌々しげに舌打ちをする。
もう少しで獲物を捉えることが出来たはずなのに、漸くありつけた餌を前にして取り逃してしまった獣の気分である。
私は血と油がべっとりと貼り付いた剣を、持っていたハンカチーフで拭うと、汚れたそれを燃え盛る炎の中へ投げ捨てた。
その足で、本陣に戻る。あちらこちから焼け焦げる嫌な臭いが充満し、風にあおられ火の粉が舞っていた。
真っ暗な空に映える。まるで赤い雪のようだ、と思った。
◯◯◯
「大丈夫ですか、指揮官どの。顔色が優れないようですが。あなた様が直に手を下す必要はなかったのでは……」
本陣へ戻るとすぐにこちらの様子を伺うように訪ねてきたのは、副官の男であるサイアスだ。今回この町の制圧に携わっている者のうちのひとりだ。
鍛え上げられた体躯が凛凛しい、という表現もできるであろうが、図体は大きな割に小心者だという印象しか抱けない。
「別に特に問題はない。途中邪魔が入ってひとり消し損ねたが、小さな子どもだった。放っておいても何ができるわけでもないだろう。それに、下手にこちらから兵を仕掛けても無駄に死体を増やすだけだ。私が全面に出る方が早い。それよりも、間に入ってきた奴らの身元はわかるか?」
先ほど私が剣戟を繰り返していた際、どうせ副官であるこの男は、透視の力を持って私を監視していたのだろう。という前提で尋ねる。
私が横目で一瞥すると、サイアスは敬礼し、慌てて答える。
「はっ。只今調べさせておりますが、彼らが一体何者なのかまだ掴めておらず……」
「魔力操作で私の行動を逐一監視していたことは否定しないのだな」
そう吐き捨てると男はビクッと身体を震わせた。
失言だったと思ったのだろう。
この世界には魔力……すなわち生命エネルギーを特別な力に変換する力を持つ者が存在する。火をつける、水を生むなど簡易的なものから、人を呪い殺したり監視したりと様々だ。
魔力は本人が生まれつき持っている適合性でより強い力を放つことができたり、訓練次第で力を高めることも出来る。
副官であるこの男は監視の力を持っていた。……本人は私に気付かれていないと思っていたようだが。
「貴君は私を疎ましく思う者の回し者だからな。腹の探りあい、といったところか。お互いにな」
私はにやりと口角を上げる。
すれ違い様、ポンっと軽くサイアスの肩を叩き、耳元にささやく。
「私の邪魔をするとどうなるか、貴君もゆめゆめ忘れぬようにするといい」
そうして私はその場を後にした。