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ダンス・断裂・ダストボックス

ゲームイベントとタスクと体調不良が8割コンボをかましてきましたが、未だ生きています。


(そんな期待している人もいないでしょうが)遅れて申し訳ない、というか体調不良が続いているのでこの先も怪しいです。ごめんなさい


暗闇と言うにはいささか安らげない空間に俺は放り出されていた。より、正確に言うのならば俺と竜がそこにいた。

『なんと情けない…仮にも我を殺しきった貴様が意識を失ったままとはな?』

「仕方ないだろ、お前をぶん殴るために後先考える事なんてできなかったんだから」

暗闇には鎖で雁字搦めにされた奴の他に忌々しい蜻蛉野郎や倉庫ごと爆裂させた後蘇った次の瞬間に冷凍された蜥蜴もいる。他の気配はあまりに薄いか自我という物が感じられないほどに溶かされていた。

なんなんだ此処は、と思わない筈がないが…残念ながら予想できるし聞くでもない…

『してゴミムシ、なぜ此処に、魔石の内側に来た?』

「こっちが聞きたい」

原因はいくつか挙げられるがそれにしたって突然すぎる。…いや、必然なのかもしれないな?


俺は自分を見下ろす。五体満足で立っている様に見えるがよく見れば左腕と右足が中程から半透明になっているし、首をさわれば竜人ジェシカさんと殴り合っていた時に比べれば浅いが切れ込みが入っている。

『まぁ、貴様の意思できたわけではないのだろうよ、大方肉体と魂が剥離しかけたところを魔石が留めていると言ったところか…なんにせよ、我を殺しておいて貴様が死ぬと言うのは許せんなぁ?』

なるほど、どうやら俺はこいつらと同じ様に魔石に咥えられていると言うわけか…え、それ喰われたりしませんよね?

『…はぁ…目に見えて狼狽えるでないゴミが、まぁどうなるかは貴様次第と言った所だ。』

「答えになってねぇんだよなぁ…」

たしかにこう言う時は気を強く持てと言うし、こう言う系のストーリー展開は精神力極振りの逸般人による超理論、もといマジ耐えるだけの精神論的な何かがモノを言うが…残念ながら人間とは未知を恐れる者、真っ暗な中にぼんやりと化物の全身像が置いてある薄気味悪い場所で狼狽えるなとか無理である。

が、しばらくしても特に何がお起こるわけでもないし、奴らに絡みつく鎖もこない、少なくとも悪意は感じられない、別に空間に意志があるとかそう言う話ではなく魔石という構造物の目的を現状わかる範囲で予測しても俺に危害を加える理由はない、其処まで整理して漸く俺は息を吐いた。


罵倒紛れる竜との会話はいささかも弾む様子を見せないので仕方なく胡座をかきなぜか感じ取れる魔力をいつものように操作しながら考える。


結局、アレはなんだったんだろうか、思い返せば思い返すほど自分がやったとは思えない神業だった。確かあの時は…魔力、無属性魔力の持つ本質的な力の利用を目指した…んだっけ?……ダメだないくら集中しようが魔力を練ろうがうんともすんともない、感覚的にだが反射と受け流しはできると思うんだが俯瞰視点で見ていた様なあの朧げな記憶の中の動きは再現できそうにない、そうして瞑想しながら考えていると突然身体が、脳が、肺が、目が、体のあらゆる器官と感覚が激しく痛みを訴えそれに耐えかねて目を覚ました。

「っ!?」

すると其処にあったのは暗闇ではなく病室で、手足には厳重に取り付けられたギプスが重石の様になっており首も胴も固定具がつけてある。唯一動く眼球からの情報を精査したところどうやら俺はまたギルドの病室に運び込まれて来たらしいことが分かった。

「っく…はぁ…」

呼吸が辛い、如何やらこれまた専用の呼吸器をつけられて漸く酸素を吸える様な状態らしい、俺は少し重くなった様に感じる魔力を回転させようとするが肉体が物理的に穴あきチーズなので魔力路から魔力が漏れるし、魔力路は神経に隣り合っているので非常に痛む。脂汗が滲み出てくるほどに痛むが…とりあえず自分の体の全体像は掴める。

大魔力の保持者特有のイメージによるゴリ押し、俺は以前記憶した完全な状態の身体をイメージしさらに今回の負荷で強化された部分を上書き、今回復しているほぼ全ての魔力を消費して肉体の回復魔法を発動した。

「があああっぁあ!?」

もちろん、普通に直せば肉体の回復を早まきするだけの痛みで済むが俺の様に余計な段階を挟むとその痛みは失神すら出来ないほどの強烈で鋭い物となる。痛覚の薄い内臓系はまだマシだが骨、神経、筋肉の段階までくると痛みは加速し皮膚の様な触覚器の再生になってくると思考が飛びそうになるほどの痛みが俺を襲う。

もう既に何百回とやって来たこの強化回復で俺は久方ぶりに意識を飛ばしそうになりながら耐えた。

というか現状認識とか回復とかやってちょっと落ち着いて考えるとあの魔石空間はなんだったんだろうか、体の回復は結局自力でやることになったし、そもそもそんなに長い時間あそこに閉じ込められているわけでもなかった。俺は一体なんであそこにいたんだ?

というか今いつだ。今度はどれくらい意識を失って…



其処まで考えていた俺の思考は扉が動く音で遮られた。

ちょっとした香水、ジェシカさんがいつも使っているハーブの物だ。そういえばなんで彼女は毎日欠かさずに香水を付けているんだろう。呑気な思考、だがその香りに混じる鉄臭さ、そして彼女の叫びと共に病室を区切るカーテンが巨大な剣に切り裂かれその金属塊は俺のベッドを叩き割った。

「ほう…此処まで進んでいたか、想定外だ。」

「何が想定外だぁ?」

真っ二つになったベッド、しかし俺はその金属塊を避けなかった。ベッドが真っ二つになったのは俺の魔力障壁に与えられた衝撃を全てベッドに流したからだ。

「無属性魔力…いや、覚醒した貴殿のそれはベクトル操作と言っても過言ではないな…やはり無属性魔力は無能でもなんでもない、戦いという場において固定化された魔法より遥かに優れている。」

「何をごちゃごちゃ言ってんだ!」

状況がわからない、だが、だがしかし、その黒騎士の足元に倒れているのは誰だ。血の海に沈んでいるのは…視界が赤くなる。やはり上がっている。いや魔石によって俺に取り込まれている魔力を増大した魔力で外殻を形成、最近ちょうど良いお手本を見たので身体強化をアドリブで改良、幻想種の様な余りある魔力リソースは無いが…

「ま、起き抜けな方が問題だな」

踏み込む。今までとは一段階違う加速、力の方向を収束させた作用反作用全てを注いだ推進力は一瞬で距離をゼロにした。

「っ!」

だが相手も尋常では無い様で振り抜いて戻していなかった筈の金属塊を一瞬で引き戻し振るってきた。が…

「おせぇ!」

鎧の表面にそっと触れる様に掌を当てる。其処に運動エネルギーを押し込み、内部に通した魔力を暴走させる。

「っぐ…!ごぉ!?」

鎧の上からメキメキっという鈍い音と金属が砕ける様な音が重なる。5歳児とはいえ筋肉質ゆえか25kg以上はある体重、それが関節を固めそれだけの重量の重りになると同時に加速して突っ込んでくれば2m近い巨漢もご覧の通り廊下の端っこまで吹き飛んでしまう。

だが、それを確認するよりも!

「ジェシカさん!」

「…っぐ…グラジオ、さま?」

意識を確認したので抱き寄せる。いささか理性には良く無い感じの重みと柔らかさが俺を襲うがそれを気にしている場合では無い全く持って足りない魔力放出力を全開にして俺の障壁に彼女を入れ血流を操作、止血しながら周りに散らばった薬品などを使い完璧な止血と手当てをする。幸い腹に穴が開いた程度…って、それは俺基準だが彼女も少し荒技だが土属性魔法で皮膚を繋げて内臓の流出を防いでいた。

「っ!気を確かに持ってくれよ!」

「に、にげて…くださ…い!」

だが俺が彼女を障壁内に入れたのはそれだけでは無い、なんの前触れもなく飛んできた雷光を投げ飛ばしたメスで散らし続いて化物めいた加速で突撃してきた全身鎧の攻撃で俺はギルドの中庭に放り出された。いや、その言い方は正確じゃない、俺はわざわざ相手の攻撃を受けたのだ。


雷鳴のような、ある種のビーム効果音のような空気のこげる音共に建物を破砕しながら迫る衝撃音はまるでアニメか何かのようで、それを放ってきた人影は手応えがあった筈の鎧が再生され青白い輝きとともに金属塊を突き出した。


物が空気の壁を突き破る快音が鳴り響いた。


「っぐぅう!?」

脳髄が揺さぶられる様な衝撃、それは物理的なものだけでない増大した魔力がごっそりと削り取られる様な感覚に文字通り脳髄を鷲掴みにされているかの様な寒気と衝撃が俺を襲っていた。だがその甲斐あってか俺とジェシカさんは先ほどの衝撃の全てを推進力に変えて真っ直ぐに吹き飛んでいた。

風圧で障壁が消し飛びそうになるほどの攻撃、自壊魔法を使った時と同じような感覚で障壁と魔力が目減りしていくが力の指向性を操作した以外は俺の支払うコスト無しで飛行しているのだ。それくらいの魔力ならくれてやる。

周りには満天の星空と風切音だけ…そう思ったのも束の間俺の耳は遙か遠くのはずなのにあたかも雷鳴のような異音を放つ何かがくるのを察知した。

「…いや、ダメそうだな」

「捕捉した。」

お手軽にギルドから隣の街まで吹き飛んで来れたがどうやら相手は走って追いついてきたようだ。全身鎧に身の丈を越すような剣槍を持ち、まるでそれらの重さなど感じないかのような異常な速度、此方は奴の攻撃の全てをほぼ完璧に加速に使ってしかもそれに耐えるのにも膨大な魔力を使っているというのに…まさか走って追いかけてくるとは…

「バケモンかよっ!」

「否定はしない、が、貴様のそれも人と呼べるのか?」

全身鎧は跳躍によって俺の真上に陣取り、打ち落とされた。魔力障壁が軋むが手心だろう。何故かは知らないが死なない程度に出力を抑えているらしい、だがそうは言っても上から下に突然打ち下ろされた為に操作が間に合わなかった。一気に下に向かって加速した体は凄まじい浮遊感に襲われる。なんとかしてジェシカさんにかかるエネルギーを魔力で無理やり相殺し落下する。

地面に叩きつけられ軋む身体、肺から空気が一滴残らず押し出されるが魔力障壁と少しだけ発動できた力の反転によって周囲がクレーターめいているのに対してかなり軽傷で済んだ。だがホッとしている間もなく俺の首筋に冷たいものが添えられる。

「貴様の命を捕捉した。」

「っへ…」

冷ややかな、しかし何か熱量を持った視線、そして何より眼帯の奥に魔力によって輝く何かがある。見ようによっては某未来から来た殺戮マシーンめいているが今はそんなおふざけしている暇はないようだ。

「質問が二つ、答えなければ容赦はしない、答え以外で口を開いても同様だ。返事は必要ない。」

「……」

鎧の男、その人相は音に聞くエレメント王国、いや大陸最強に名を連ねる竜騎士のそれであるがその雰囲気はあからさまに人では無く。どこか直接顔を合わせることがなくなったあの母のようだ。そう、まるでヒトという枠組みから何か別のものへと変貌したような…

「この国を護る戦士になる気はあるか。」

「ない」

「その女を此方に引き渡す気はあるか。」

「ない!」

「了解した。」

その瞬間、一切の興味を失ったかのように俺の首に添えられていた金属塊は圧倒的な加速でもって振り抜かれた。

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