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男の子はいつまでも武器と防具が大好きです!

ずびばぜんゆ゛る゛じでぐだざい…


何でもはしない


俺と彼女は互いに2、3メートルほど離れて対面していた。だがいつもの彼女ではない、メイド服でもないしあの似非戦士や土魔法で無理やり加工したスーツでもない、魔法使いらしく布製の服だ。そうは言ってもローブではない、あくまで彼女は土魔法使いの亜種、土属性近接魔法師だ。袖は七分丈ほどで下半身もズボンとかなりボーイッシュだ。

「ほへぇ…ジェシカさん装備が揃うとそんな感じなんだね」

「…えぇ、上から下まで揃えるのに底値で金貨50枚程です。因みにグラジオ様が討伐された竜は半分ほど消し飛んでいましたが金貨500枚ほどに化けました。私の装備で100枚、グラジオ様がもし私に勝てれば着れるワイバーンと重鉄の装備で50枚、斧で100枚、治療費100枚…旅費を出せば残るのは100枚ですね?」

様々な魔道具と触媒を身につけ、トンガリ帽子ではなく宝石の幾つか付いたサークレットをしている。…布の服からも魔力を感じるが恐らくあれは底値に近い筈、仕込みはあるだろうがヤバイのは…

「…魔法触媒の塊って感じだね?」

「ええ、勿論、私の様に常人並かそれより少ないくらいの魔力で魔法を使っていれば日に数回が限界ですから、使える回数は重要です。」

見覚えのある試験管も腰回りにたっぷり装備して、指輪と腕輪とタリスマンにイヤリングが戦闘の邪魔にならない程度に、そして下品にならない程度に装備されており見ようによっては踊り子の様である。



「感覚を掴むまでの時間稼ぎはいいですか?」

「ありゃ、バレてた?」

「当たり前です。私があなたに観察法を指南したのですよ?」

俺は相変わらず右半分が白黒の世界を見ながら冷や汗を流した。



事の発端は俺の色彩感覚と味覚がほぼ失われていると言うのを伝えたことにある。勿論、率直にかつ素直に言った。この時点でジェシカさんのお説教は始まっており、2時間ほどあの魔法のことや不注意などを追及され、当たり前のように全てをゲロったら火に油を注ぐかのような勢いで彼女の怒りが爆裂した。

だが、そんなありがたい怒りを俺はさらに踏み抜いていった。

「それじゃあ、安全に使えるようになるまで鍛えるしかないか」

「…そうですね、ですが今回のように自分がやる必要がない時に使うのは「無理だ。」…は?」

そう、それは俺が最強を掲げる上での最低ラインを踏み抜く発言だった。だから俺は拒絶した。

「俺は俺の信じる最強のために、目の前で救えるものを救わないという選択肢はとらない、ってことだよ」

その瞬間、彼女の纏う魔力が一変した。




「さぁ、条件は覚えていますね?」

「ああ、もちろん、今この時圧倒的な強者である貴女をあの魔法なしで打ち倒す。シンプルだし、当たり前のことだな…あの魔法は人に使うもんじゃない」

そう言いながらも俺は魔力を纏わない、何かがおかしい、右手の魔力が増えている。いや、この間まで包帯をしていたのでわからなかったが…魔石の体積が増えている?おかしい、障壁を解除する前はこんな風にはなっていなかったはずだ。

「えぇ…そして私は貴女を殺す気でいきます。どうか死なないでくださいね?」

だがそんな思考をしている隙に彼女の魔力が励起され魔道具と共鳴する。輝きは一瞬で次の瞬間には砕けた試験管と銀色の柱が俺に向かって飛んできていた。

「っ!」

足が動かない、いや、違う。足に岩でできた鎖が付いている。此処までして止めたいのか、たとえ禁止されてようと俺がどう行動するかを決められるのは俺だけだ。その意地を物理的に突き通すためにここで勝たなければならない、俺は自分の中で騒つく魔力をいつも通りに纏った。


瞬間、世界は銀色に包まれた。俺は足掻くために脳と思考を強化する。


……?

おかしい、明らかに叩きつけられた質量に対して来るべき衝撃が小さ過ぎる。そもそも魔力障壁じゃあの攻撃を受け切れる訳が無い、そもそも最初から初見殺しの一撃必殺が彼女のプランだ。もし俺が彼女の立場であるならそうする。

見開いた目に映る視界は相変わらず銀色だが…突然頭が割れそうな位のひらめきが俺を襲った。

無属性魔力は力を操る。俺の現実改変力は類い稀なレベルであり、魔法という魔力消費の大きな形ではあれ属性の範囲内であればほぼなんでもできる。


ならば、障壁で受けた力をそっくりそのまま返すことも、受けた力を取り込み、流すこともできるのではないか?


無属性の唯一使える強化というのはいつもいうが要は伝達する速度に魔力による力の加算をする事や、原子や分子レベルでの結びつきの強化である。

この世界では森が人類の生存圏を常に脅かし続けている。それが故に自然を理解するという営みは既に前世の中世を超えて近代へと手をかけている。魔法のイメージを補強するために生物学や物理学を学ぶ魔法使いがいるくらいには世に浸透しているのだ。


そして、俺は数度の思考と脳本体の神経系全てを強化するという暴挙によって漸く気がついた。いや、本能レベルでの行使は何度かしていたはずだ。

なにせ熊との殴り合いの時もそれ以前のデイダラさんとの模擬戦でも、あのクソ忌々しいトンボ野郎相手でも…そう、普通に考えれば考えるほど俺の魔力障壁は込めた魔力以上のものを防いできた。

今も無意識的に障壁を使って土魔法の勢いを殺すでもない、相殺するでもない、受け流し続けている。だが気がついてしまったのならばその動きは無意識ではなく意識的に制御される。

だが、気がついたとて悠長にはしていられない、前々からそうだったように受け流しは魔力を込め直す必要を感じるほどに消費が大きい、削られる魔力とともに最初からあった嫌な感じも増してきている。

「…初めてやるのが実践ていうのはあまり良くないんだけどな」

そう言いながら俺は前世で見たアニメや漫画を参考にイメージを固める。方向性は力の反転、若しくは貯蓄からの解放、現状最も簡単に行えるのは…

「攻勢障壁、展開、反転を開始!」

想像力は知識と繋がり魔力という現実を捻る力で具現化する。



〜〜ジェシカ〜〜



「…押し切れませんか、流石ですね」

魔力障壁を展開するでもなく。自らの体を見定めるような彼の視線、恐らく何かしらの不調があったのでしょう。そして彼の場合そういうものは何かトンデモナイひらめきや、魔石や魔法がらみの厄介事の始まりだ。

一瞬膨張した魔力が一気に練り上げられ収束する。それだけで私の生み出した重金属に柱は半ば折られ、まるで砲丸のように吹き飛んできた。

「はぁ…上手くいかないな、やっぱり実践でいきなりは凡人に厳しいよ?」

「…無属性魔力の本質を掴み始めましたか、厄介ですね」

属性魔力の本質、魔法や魔術にかまけるだけで無く自身の持つ魔力への理解と納得、魔法使いとしてある程度の位階になれば皆がその命題に当たります。

私の場合、土属性の魔力に水が混じっていた所為かそれとも本質的にそういうものだったのか、土と水と言うよりは泥の様な中途半端な性質を持っていました。彼の場合がなんだかは判りませんが…少なくとも物理的な錬成を主軸とする私には最悪な本質を掴みとったのでしょうね、明らかに普段の魔力障壁とは違う雰囲気…いえ、違いますね、明らかに私の魔力を弾いている。

試しに散らばった金属を集めて投擲しても正確に飛んできた方向へ返って行っている。まさか…

「物体に反転を付与したのですか?」

「いや、力をそっくり返しているだけだ。」

はぁ、相変わらずデタラメです。が、それどこそ私が見込んだグラジオラス様です。これなら…

「武具を渡さなくて正解でしたね」

「えぇ…俺も装備着たいんだけどぉ?」

バカを言わないでください、何だかんだ貴方はあの黒竜を圧倒したのです。そして使い手に相応しい物を作ると言う鍛冶屋の悪い癖が出た結果貴方の装備はトンデモナイ怪物に仕上がってしまっているのですよ!?

「装備できるといいですね…」

「え、なにその深刻そうな顔!?」

彼の抗議を受け流しながら投擲を続けること数回、魔力の消費が大きいのか紙一重での回避と緊急時の反転という風に使い分けているのを確認して次の攻撃を開始します。

「唸れ」

起動用の単語に護符と指輪が反応し互いの性質を最大に引き出し合う。どの魔道具にも仕込まれている日に一度の手品、今回発動させるのは…

「泥の木偶よ!」

ゴーレム、魔道具製作者によって加工された魔石を核とする異形の魔法、しかし今回のそれは魔道具にまで発展させられた永続使役の逸品、合わせて発動した護符は土を生成する低級の魔法が込められた物、この二つを同時に発動するだけでゴーレムは無尽の体を持つ怪物へと変貌します。

更に弾丸や槍などの射出も開始、反射によって逸らされますが…

「要は物量勝負です」

「ひどいよジェシカさん!」

一度勝負をふっかけたなら簡単に負けてはあげないのが私ですよ、グラジオラスさま?

「…単に負けず嫌いなだけでしょうに…」

…魔法の角度を調整し直しましょう、見物人の同級生にうっかり当たっても模擬戦中の事故で処理されるはずです。



〜〜〜〜



右腕の魔力を調律し高速振動させる。竜やクマみたいな幻想種や魔獣相手だとどうしても魔力障壁を砕くことにしか使えないが、こと無機物相手ならば俺の高周波パンチ君はバツギュンの攻撃力を誇る。問題はこっちに向かってくる土魔法を今しがた半分ほど消しとばしたゴーレムに当てない様に避けたり反射しなければこのまま押し切られるという事だ。


勿論、ただやられるなんて事はない…と思うが、決定力不足と反射と調律による魔力消費、何より一方的に攻撃され続けている状態で時間が過ぎてしまえば俺の負けと言わざる得ない、恐らく一発で決め切れなかったのを見て俺を捕らえるか、魔力や時間勝負に持ち込もうとしているのだろう。そうでなければもう二、三回大きいのと小さいので波状攻撃してくるだろう。

「反射を見せたのは失敗だったな…」

地面の土や術者から供給される材料で再生するゴーレムを殴り飛ばしながら呆れる様な弾幕を避ける。だがその弾幕の一発一発もゴーレムを構成しうる物質群であるが故に吹き飛ばしたはずのそれは一瞬で蘇る。

「っく!」

4メートルほどの巨体が見る見るうちに復元され拳での攻撃を開始してくる様はいい様もなく恐ろしい、障壁ではなく左拳と体の動きで何とかそらし高振動の右拳で粉砕する。

だがあまり猶予はない、ぶっちゃけ反転はイメージする力の数が多いために思考量的にマジきついので連発できないし、魔力がある程度補正してくれるとはいえイメージが十分でないと受けた衝撃や圧力に耐えきれず吹っ飛ぶ可能性もある。だから某白セロリ的な柔軟な使用法は不可能なのだが…足で地面を蹴る力と地面が受ける力を同一ベクトルに向けるくらいはできる。

弾丸の雨を障壁で無理やり逸らしながらの突進、地面が凹む事などない推進力100%の踏み込みは容易く俺を彼女の元へ…

「来させません!」

指を一つ鳴らすと彼女の魔力とともに地面が発光、起点は弾丸、恐らく弾丸に術式魔法を仕込んでいたのだろう。土壁や大小様々な隆起、真っ直ぐに突っ込んでいた俺の足元にも発生したそれは簡単に俺の体を転がした。

「っとぉ!?」

思考加速と脳力強化は神経系への負荷が高いためさっきから切っている。それ故に引っかかったといえば軟弱がすぎるな…っと、反省は後だな、彼女は普段見せない冷徹な狩人の目をしている。何か来る。そう思うと浮き上がった体に容赦なく弾丸と槍の投射、何本か投げ返すも追加発動する土壁や弾丸や槍そのものが土壁に変化して斜線を遮り、砕けた後も重力に従って落ちる前に彼女の支配下に置かれ嵐の様に襲いかかって来る。

魔力の制御力、魔力によって生み出したものの支配力が高い、しかも驚きなのは制御力関連の護符や魔道具は装備していないという事、だが…

「甘い!」

背筋と腹筋で無理やり空中で姿勢を制御し向かってくる石礫を足場に更に空高く舞い上がる。彼女ほどの魔法制御力があってもその範囲は限られている。

「っく!」

上空で右手に魔力を集中させ調律する。空気ごと振動しているかのような錯覚を覚える。彼女は俺に届かないのを分かっていながら弾丸を射出しゴーレムも上空にいる俺に向けて両手を掲げている。そして俺の自由落下が始まる。

「俺の!自慢の!拳ダァァー!」

軽くテンション上げ上げすぎてアレだが建物の屋根よりも上に吹っ飛んでいるので超怖い!

「術式展開、全魔道具制限解除、受け切ります!」

さっきと同じように弾が土壁に変化し、それを更にどの魔道具の効果か分からないがそれが更に金属化、更に俺の拳の部分にのみ焦点を絞るように圧縮、分厚く変形する。それと同時に俺の拳と衝突し…甲高い音と共に爆散!爆散!

「うぉぉぉぉぉ!!」

「っく!」

俺の体めがけて金属片が飛んでくるが最早些事である。ドンドン俺と彼女との距離は縮まっていき、砕けた金属片で攻撃ではなく即席の壁を作る方に注力し始め、壁と壁との隙間が小さくなるが俺の全力全開の右手の前には意味をなさない!

「柱よ!」

「ぐぅお!?」

重金属入りの試験管を砕き叫ぶように活性化させると最初と同じように俺の視界が鈍色に染め上げられ同時に僅かながら俺の体が上方向へと押し上げられるが…問題などない!

「再調律!抉れ!」

金属柱に左手を叩きつけそれと同時に内部に魔力を無理やり詰め暴走させる。そしてその衝撃を全て反転させ、柱を粉砕する。

「なんて無茶な!」

声はもう近い、俺は突き出した右手がゴーレムを粉砕したのを確認して悠然と近づく。…なんて、舐めた真似出来るわけがない、首を逸らし放たれた短剣の鋭い一撃を躱し、引く手を取って摩擦係数を弄られる前に肘を外す。

「っ!!」

「油断はしないよ、少しもね?」

ダラリと下がった右腕から左手に短剣を持ち変えるが脂汗が滲み出ている。一歩進めば間合いだが、俺は右足の筋肉収縮や力の方向を絞り一気に地面を踏み抜いて辺りを一瞬でクレーターにした。

「仕込みは何個潰れたかな?」

「…えげつないですね、こんな戦法を教えた人の顔が見て見たいです。」

「鏡を見ればすぐ会えるよ」

俺が右手で彼女の訓練用の木製短剣を粉砕すると勝負はついた。


さて、じゃあ装備を…

『キヒィ』

俺の気が逸れた一瞬で俺の中にあった何か黒い物がジェシカさんに取り憑き、少し遅れてそれに気づいた俺はソレからナニカを奪い去って呑み込んだ。

爆発めいた魔力の暴風と共に現れた彼女はこの間ぶち殺したあの黒竜の様な幻想種に近い気配と服がぶっ飛んでなんかエチエチなスケイルアーマー姿で立っていた。

『…半分ほどか、なかなかに良い体だ。素晴らしい!』

「…お前…」

奴がその縦長の瞳孔で俺を睨む。

『ああ、そうだとも我を喰らいし愚か者が、貴様の考える通りの存在だ。』

俺の不注意だ。いや、そもそもどうしてあいつが俺の中にいたのかとか色々と思う所があるが、重要なのはアレがジェシカさんに手を出したという事だ。

「そうか…



ならその精神を粉砕しよう!」

俺がそう吠えると右手の魔石が輝いた。

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