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劣等とはいうものの空を飛んでるってだけで脅威ってそれ一番言われてるから


「どう思う?ジェシカさん」

「正直言ってあの規模の群れが渡ってくるのは難しいでしょう。森に鎮座している竜種の強度を見るまではなんとも言えません、が、不自然な事は変わりないでしょう。」

俺は物理的な身体能力で、ジェシカさんは肉体強化と土魔法で騙し騙し屋根の上を走る。

ワイバーン、いわゆる劣等竜や劣化竜と呼ばれる竜の眷属は幻想種でありながらその強さは良くて中級魔獣程度という竜をベースにしているとは言い難い幻想種である。しかし、それもそのはず。竜種とワイバーンは明確に違う生物なのだ。竜種は4足に羽がつき堅牢な鱗を持つ優美な姿だが、奴らは二本足に翼がつき鱗も魔力による障壁はあるがそこまでの強度は無く。どこか貧相な印象を受ける。

生息域は高い山や古くから竜種の居座る竜の巣と呼ばれるエリアであり、ここら一帯は平坦で竜の巣もない、食性も主食は肉ではあるが幻想種特有の魔力からの栄養補給ができる。が、燃費はあまり良く無く竜種と違い変温動物なので魔力によって体温を維持し、必要なカロリーを肉から得ている為安定した狩場や巣から離れる習性は皆無だ。


「ん〜数が多いな、しかも高い」

「そうですね、少なく見ても千体ほどでしょうか?しかし森の竜種に怯えているのかそれとも他に理由があるのか知りませんが統率は取れていないようです。」

遠目に見える奴らは結構散り散りに飛んでいる。スタンピートならば統率種がおり、統率が取れていればかなり綺麗に編隊を組むそうだが、その様子が無いあたりスタンピートが原因では無いし、その先触れでも無い、だが漸くたどり着いた壁ギリギリは思った以上にピリピリとした空気が漂っていた。だがただ単に殺気立っているわけでは無い、受付嬢も、冒険者も至って冷静であった。それとは別の意味で空気はかなり最悪だった。

「…高度は未だに高いまま、ですか…」

「受付嬢さん、今来たんですけど…」

いつも通りのハイヒールにギルドの制服を着た彼女は険しい目つきで空を見上げていた。

「ああ!グラジオ君とジェシカさんですね、今はギルド長の魔法で被害は抑えられていますけど状況は最悪です。とりあえず今回の依頼を受けるのであれば冒険者証を出してください。」

俺とジェシカさんは証を出し、彼女は発行番号を名簿に書く。

「これで簡易的な依頼の受理をしました。で、ですけど…二人とも風魔法を使えたりは…」

「すみません、無理です」

「私もですね…」

「ええ、まぁそうですよね、あぁ…うーん…」

「…とりあえず状況説明をもらってもいいですか?」

俺がそういうと彼女がどうにか笑顔を浮かべようとしたが、どうにもぎこちないものになったまま説明をしてくれた。だが、現状を見て分かる事以外はギルドも掴んでおらず。とりあえずこの街にいる冒険者全員で防衛をすることにはなったが、装備品が十分で無いということくらいしかわからなかった。


「どうしようかね」

「どうしようもないでしょう。グラジオが切り札を切ったとしても倒せるのは良くて数匹、相手が飛んでいるのが最大の障害でしょう。」

門の外側には冒険者がパーティー毎に集まり、一様に上を見上げている。

高さにしておよそ200メートルほどだろうか?いや、デタラメだ。目測で距離を測ることはできない、少なくとも今の俺には不可能だ。だが弓使いや狩人の冒険者ならば撃ち落とせなくは無いようにも見える。そう考えるのは俺だけじゃ無いようで既に数人の冒険者が矢を射ってみてはいるが…

「風避けの加護!」

「っ!ダメだ。矢が当たる前に避けられるし当たっても障壁に刺さるだけだ。」

「はぁ…駄目かぁ…」

芳しくは無いようだ。というか今ここにいるのは初級冒険者、大弓でもあれば話は違うが最初から装備が整っている冒険者などいない、魔法使いも細々とした補助具や触媒はあるだろうが中、上級者のような一撃で諸共吹き飛ばせるような魔法を放てるほどの練度は無いとみていいだろう。そう思っていた。

「ダラっしゃぁぁぁぁ!」

「「!?」」

暑苦しい咆哮とともに凄まじい轟音が響き、なにかがソニックブームを発生させながら吹っ飛んだ。どうやら打ち出されたのは金属の砲弾、打ち出したのは筋骨隆々の男、その砲弾はみるみるうちに高度を上げて行き火球で逸れはしたが…

「GYOOOO!?」

「ンー、マーベラス!」

輝くような笑顔と共にポージング、それと同時に数匹のワイバーンは翼を破壊され墜落した。

「うおおお、すげぇ!マッサルさん!さすが!俺たちにできないことを平然とやってイクゥ!」

「えぇ…」

多分俺たちと同じように遅れて合流したんだろうが…なんだあのフィジカルの塊、デイダラさんのような恵まれた体にまるで彫刻のように美しい筋肉を載せた大理石像めいてるぞ?

「凄まじいですが…光明は見えましたね?」

「え?」

彼女はスッとあのラオコーン像の様な筋肉が戦鎚でナイスショットしたのと同じ様な金属塊を渡してくる。

「できなくは無いでしょう?」(ニコ!)

「アッハイ」

…最近アッハイしか言ってねぇなと思いながらジェシカさんの生み出した金属塊を上に少し放り投げ、足を多めに開き体を弓の様に引きしぼり丁度いいところに来るまで循環の加速に努める。

敵は前方上空、角度は適当、速度も適当だが…ぶん殴る!

「でぇい!」

熊相手よりも更に循環と強化に集中できたのもあって肉体強化としてはほぼ理想状態だった。現状暴走強化なしでたどり着ける最高威力は砲弾にしっかりと命中し瞬間的に肉体強化を暴走させる。砕けた拳は数秒で治り、砲弾はちょっとヒビが入ったが周囲に衝撃を撒き散らして音速まで加速した。

「GYAAAA!?」

「はぁ…当たったか」

「流石ですね…」

なんか周りからすごい視線を感じるが雰囲気はだいぶ変わった。そりゃあそうだろう。バカみたいなゴリ押しだが金属を打ち上げるという単純明快な動作でもってワイバーンを撃ち落としたバカが二人も現れたのだ。

それに相手さんも仲間を撃ち落とされたからか、それとも劣化しているとはいえ竜の名を持つ存在として地を這う虫けらに叩き落とされたのが頭に来たのか、半分くらいが低空まで降りてきて火球を撒き散らし始めた。パーティー毎に魔法使いが障壁を発生させ、弓使いが待っていましたと魔力を込めて武技を発動させる。

「さて、じゃあ俺たちも働くか」

「ええ、竜種には劣りますが幻想種、魔石も素材も高値で売れますよ?」

おっほ、やる気出てきたぜ!

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