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稼ぐって、難しい!(知ってた)


「なかなか状態のいい肉と毛皮ですね、まぁ、量もありますし、血抜きも完璧なので全部で銀貨2枚出しましょう」

「ありがとうございます」

狩人から冒険者になった人達はこの解体場や品質検査の仕事と害獣駆除を兼任して初級のうちを過ごすらしい、勿論、俺も最低限解体は学んでいるが、奥に見える人達にように素早く的確に獣を食肉にする様な域には達していない、ここへ潜り込むのは難しそうだ。


夕方になってざわつき始めたギルドホール(ギルドの正面玄関であり以来掲示板と待合室、酒場と受付が合体した様な場所である)で先に以来の処理を終えたジェシカさんと落ち合い今日の稼ぎを勘定する。

「薬草は需要が高まっている様でしばらく以来がなくなることはないそうですよ」

「じゃぁ、台車と籠を作って狩と薬草摘みか〜」

依頼の成功で得たお金は銅貨80枚、浅い層にあり数も多い薬草は籠に入れられた7個分、イノシシはジェシカさんの調べ通り銅貨10枚だった。

「いえ、どうやら春の繁殖期が始まったそうで森での狩に当たって森猪とうさぎや狼の他にホーンベアや魔狼が出始めたそうです」

「うぇ…」

繁殖期は春が多く。多くの魔獣や動物がつがいを求め、もしくは子を守る為に気が立つ時期だ。俺たちが今入っている浅い層では番いをめぐった争いに敗れたどう猛な動物や縄張りを追われた魔獣などが現れる様になる面倒な時期だ。単純な頭をしているザックあたりは『稼ぎが増えるな!』とかほざきそうだが、実際には魔獣や猛獣が増える事で生態系のバランスが一時的に崩れ、不安定になる。これによって増えすぎた草食動物や植生が調節されるのはわかっているが、熊は一匹銅貨30枚、肉毛皮は銀貨2枚、肉があまり美味しくないが皮が高い、だが人間と違い俺の腕力でミンチになるなんていう事はなく。普通に殴り合える生物なので仕留める事はできても消耗が大きすぎる。魔狼はまず早すぎて捉えられなかったり、周りの狼を従えて巨大な群れを作ったりするので単独で挑むには強すぎる。


ま、要するに面倒くさくて稼ぎずらいのだ。そしてそれに加えて今の俺が全力で持って漸く届くのは魔獣の中でもごくわずか、魔石刃と暴走肉体強化を使えば首や心臓などの切断で死ぬ普通の生物やそれに近い物理的性質の魔獣なら問答無用で殺せるかもしれないが、それでもよく見積もって生態系下位の中ほど程度の魔獣までが関の山だろう。

この世界には上を見上げれば世界にたった一匹の生物として存在できない様な超級の化け物やそれこそギリシア神話の怪物やらの様なトンデモ幻想種が蔓延っている。

森の中が不安定になっているという事は、運が天文学的によければそんな怪物と出会って視線だけでプチっと殺されるなんていう可能性も無きにしも非ず。という具合だ。


しかし、外に出れなければ稼げないのかといえば、そうでもない、ジェシカさんの様に錬金術師や薬師の手伝いをしたり、さっきの狩人の人たちの様に解体場などでその腕を振るい肉や毛皮など生活に必要な物資の生産に勤しんだりと仕事自体はあるのだ。

だが…問題がある。

特別な技能がなくともできる仕事とと言うのは大概肉体労働である。そして俺は今5歳児、冒険者ギルドによって身元や技能はある程度の信頼性を持つが、こんな幼児にどんな重い荷物を運ばせようと言うのか、いや、うん、正直に言おう。

「受付できません、というか普通にギルドの面子に関わります。幼児に不当な肉体労働を課しているとか妙な噂が立つと我々としても問題なので…」

「アッハイ」

まさか…まさか普通に年齢で就業に影響があるとは…この剣崎の目を持ってしても見抜けなかったよ、というか普通に考えたらそうだよね、幼児が荷車に満載された土や瓦礫を運んだり土木建設してたら流石にやばいよね、知ってた。


だが、この程度で諦める俺ではない、栗色の髪を後ろでまとめた人の良さそうな受付嬢さんを捕まえて俺でも受けられる仕事を聞いてみた。

冒険者ギルドは依頼斡旋を主な業務としている。聞けば少しは出てくるだろう。

「え〜っと、そうですね、それなら…ギルド会館内での仕事は如何かな?」

「ギルドの仕事ですか?」

はて、仕組みや内実、その形態を調べたりはしたが具体的にギルド内で行われている仕事については想像もつかない、書類やら整理やらだろうか?

「いえ、ギルド会館内の仕事ですので解体場や食堂の補助やウェイターとかですかね、あ、それにグラジオくんは語学系の技能試験でかなり高い得点を出しているから…資料室や依頼翻訳なんかも出せるかもしれない、何だかんだ人では足りないからね!」

「へぇ…」

「賃金は日給銀貨1枚からだね、仕事ぶりに応じて色々とボーナスが付くよ?」

「あれ?けど依頼掲示板にはなかったですよね?」

話を聞く限り面白そうだしお金にもなる様だが、依頼掲示板にはなかった。すると彼女は受付横の依頼掲示板ではなくただの掲示板を指差す。

そこには『ギルドでのアルバイト、募集中!』と書かれちょっと擦り切れた張り紙が寂しげに置いてあった。

「依頼じゃなくて、アルバイト、だから依頼掲示板には置けなくてね」

テヘヘ、と笑う彼女、見た目に騙されてはいけない、循環する魔力は間違いなく中級上位レベルの実力者であることを示している。右手を使うときに何かをかばう様な動きを見せるのでおそらく怪我で一線を退いた元冒険者なのだろう。

だが、まぁ、何とか仕事にはありつけそうだ。「受けるつもりなら明日もう一度話しかけてね」と言って彼女は他の受付業務に戻っていった。


酒場はすっかり盛況で食堂にも晩飯を掻き込む冒険者たちがいっぱいだ。少し前に済ませておいたが、正解だった様だ。今日は、少し疲れた。ゆっくりと休んで明日の仕事に備えよう。

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