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朝日って最も深い闇を生み出す光らしいよ?


とりあえずこちらには俺の精神衛生上守り抜かねばならぬ護衛対象が一名、相手は出し惜しみして勝てる相手ではなく。排除手段は…殺す以外ないだろう。昨日はよく寝たおかげか魔力代謝のリズムもいい、低出力で右腕を発動し続けてもなんとかなる。俺は右手を握りしめ魔力を調律、この状態では物を粉砕するほどの出力はないが、待機状態としてはそれなりに優秀だ。

「うっふん、いくわよ!9号!魔法の使用を許可するわ!」

名探偵なアレに出てくる犯人さんみたいな黒い男は駆け出すと同時に命令を出す。確信した。おそらくダークエルフは奴隷だ。おそらく命令の行使によって焼けるような痛みが背中を襲うのだろう。苦痛の表情浮かべる彼女とその表情に愉悦を感じているか顔を歪めるオネエ風の男…うん、ひでぇ組み合わせだ!

「動くなよエロメイド、密着してもこれ以上離れても死ぬから気をつけろよ?」

「っ!守らなくたっていいわよ!ていうか誰のせいよ!」

そうわめきながらもエロメイドは動かない、いや、どうやら腰が抜けている上にさっきの一撃で足が震えているようだ…いや、マジなんなのこの人は…

「よそ見厳禁よ!」

「ああ、そうだな!」

右腕を励起、オカマの振るう鞭を打ち払うが消滅しない、どうやら魔力を纏っているようだ。だが俺の拳は物を砕くだけの代物ではないのだよ!

「?ふぅん、変わった武技を使うのねぇ…でもぉ、それだけじゃあ意味がないわぁ!」

何か違和感があったようだが気にしてないようだ。振るわれる鞭、ソレを打ち返そうとするが、鞭の影からぬるりとダークエルフが現れ短剣を放ってくる。この前と同じなら毒が塗ってあるはずだが、今は無意味だ。

「つっ!」

少し拳の出力を上げた。某そげぶな右手よろしく自動で対象物に対して適切な出力をしてくれるわけではない、金属なら金属、石なら石、皮なら皮で必要な出力は違うし、その波動も違う。

これはあくまで殴る対象それぞれの持つ構造にあった波をぶつけて粉砕する拳、ここ一年でようやく物にできたじゃじゃ馬だ。最大出力なら問答無用でなんとかなるが、魔力障壁を少し広げている今は少しでも消費を減らさなければならない、出力は高ければ高くなるほど魔力が出て行くのだ。


数合程同じやりとりが続いたが、ダークエルフのナイフのストックが切れたようで彼女が魔法で編まれた武器を出してきた。オネェは鞭を振るい続けている。すごいスタミナだが…いつこれに気がつくかな?奴は魔力循環と純粋な戦闘力は中級冒険者上位だが、嗜虐心の赴くままに振るわれる暴力に溺れている今はさほど脅威ではない、問題は魔法で編まれた武器を持ったエルフの方だ。

「っく!」

「ほう…魔法は効くのか?」

そう、魔力障壁くんは確かに魔力によって発生した力場なのでちょっとやそっとの魔法ではなんてことないのだが、その威力、強度、物理現象よりなのか魔力の性質よりなのかでその耐性は結構変わってしまう。

実際、今この現状を打破するには魔力障壁を収束し、肉体強化で短期決戦しかないのだが、ソレをすれば後ろの彼女はあっさりと流れ弾やらでしぬだろう。最悪人質に取られて俺の精神に揺さぶりをかけてくるまで見える。

鞭を弾き、短剣を避け気味にダークエルフさんへの攻撃を試みる。

もう少し、もう少しだ…連撃をさばきながら祈る。これはあくまで理論上発動可能なだけであって、試す相手も、実験の時間もなかった未完成の技、正直今の魔石刃を此処で展開すれば街にどんな影響が出るかもわからないし、後ろにも気をつけなければならない…いや、俺、扱うのが難しい大技ばっかだなオイ、もうちょっと素の戦闘力を上げないとやってられんわ!


〜〜〜〜


「あ、あら?」

おかしいわね、さっきからちょっとだけ違和感があったのだけど…気のせいじゃあないみたいね、鞭の軌道が私の動きと違ってきている。最近寝不足だからかしら?一気に大技で決めて早く寝ましょう…

そう思い構えをとって魔力を放出した次の瞬間、私の魔力がどっと無くなった。

「っか?っは!?」

動悸が激しくなり、めまい、呼吸困難、これはっ!魔力欠乏症!?でも一体なぜ!あんな子供にできることなんて高が知れているし…っは!あのクソエルフ!毒を!?このクソあまガァ!こっちには人質がいるってぇのにふてぇまねしやがって!

激昂、しかしその頃には私の肉体は完全に魔力を失い、私の意識は途絶えた。


〜〜〜〜


「成功だ」

俺は思わずほくそ笑む。

「…何をした」

ダークエルフは魔力の急激な減少と欠乏によって苦しみ悶える主人を見て一瞬すごい顔になっていたが、すぐに武器を構えるだけ構えて疑問を投げてくる。もちろん、答える義理はない…

ああ、もちろんそんなものはないが…すごい言いたい、実は今俺は世界初の快挙を成し遂げたのだ!


俺がやったのは実に複雑なのだが、言葉にするだけなら簡単だ。

魔力を調律し放出させたのだ。

一体、どうやったのか、魔力調律の応用である魔力吸収の実験の失敗、俺はあれを攻撃に転用したのだ。あの現象の仕組み自体は至って簡単で大気に含まれる魔力は世界を循環するために非常に強力な引力と力を持っている。俺たちはその魔力の奔流という大河から用水路を引くように魔力を取り入れ、代謝している。

だが、逆に言えば体内の魔力は飽くまで体外の魔力を取り入れ溜め込んでいるだけであり、魔法などを使った時の様に放出されれば簡単に大気へと再吸収される。魔力で起こした現象が長続きしないのはそのせいだ。

魔法として魔力が放たれた時、その瞬間にすでに魔力の波長は体内のものではなく魔法という形に変換され出されているため再吸収されるのは魔法に込められた魔力のみなのだが…自身の体内魔力と同じ波長のものを外へと放出した時、出された魔力は体内のものと紐ずけられたままの状態になり、そしてソレは魔法と同じ様にあっさりと流れに巻き込まれる。

俺たちは魔力炉というポンプで魔力を取り入れ自分の中へ押し込んでいるだけであって、ポンプが壊れるかもしくは肉体という入れ物が外との区別を失った時、魔力は簡単に外へ流れ出てしまう。


俺はこの現象を魔力放散と名付け、今回俺は魔力吸収によって奴の魔力波長を読み解き、魔力を通された鞭の先端から少しずつ大気に吸収させていた。その時はほんの少しづつ消費が大きくなる程度だったが、最後の魔力放出、アレによって鞭の先端から大気に吸い出される様に魔力を吸収され、そのまま体内の魔力を一変残さず放出させた。もっと近くで戦えれば波長の解析や調律に時間はかかるが有効かつ早急に効くはずだ。

問題は相手が多少違和感を覚える。という事、これによって普通の状態の相手や警戒心が強い相手には通用しないことが予想される。今回は脇がガバガバだったし、俺を見て油断したのか鞭を振るうのが好きなのか嗜虐心のまま暴走していたため決まったが、所詮手品、おそらく今目の前で武器を構える魔力の流れすら読めない格上には通用しないだろう。

「ソレで、ご主人さまがやられた様だが…まだやるか?」

そう、大技が決まって舞い上がってはいけない、戦いはまだ続いているし、正直短剣を渡したから後ろから刺される可能性も大きい、とりあえず呆然としている後ろを放置して目の前の彼女に問いかける。

「…ふむ、たしかにあのクズは倒れたが狩人たるダークエルフの矜持の元、一度逃したお前を狩るというのも悪くない、ただ殺されるだけの弱者ではない様だしな?」

影の魔力が渦巻き、輝かしい朝日の生み出すあまりにも深い闇は呼応する様にざわめく。水路近くの広場故に近くの建物が作る影くらいしかないのだが、それでもその魔力は俺の防御を貫通し容易に傷をつけてくるだろう。あの時魔力障壁をわざと切って攻撃された時と違いほんとうにレジストしきれずに貫かれる。

…拳の励起を高め、最悪の場合魔石刃と暴走身体強化を使用する準備もしておく。このために魔力を極力消費せずにいたのだ。楽観的にコストを払って勝てるほど俺は強くない、彼女の声音からは何も読み取れない、あの教団員の様に平坦で、冷たく、背筋に氷柱を入れられた様な悪寒が走る。

昨日受けたアルブレヒトの殺気と威圧、アレをもっと濃く煮詰めた様な恐ろしい気配…

「…っふ、はは!今日のところは帰らせてもらおう。このクズの意識がないうちにやっておくこともある故にな、またいつか、貴殿が一角の戦士にでもなった時遊びに来るさ」

そう言って彼女は威圧を霧散させ、男を抱えて影に消えた。



少し間があって、今度こそ何も起きていない、金属棒は飛んできていないし、影はもうただの影だ。それを確認して漸く俺は魔力障壁と肉体強化を通常モードに戻した。

「はぁ…終わったか」

俺が後ろを振り返るとそこには失神し毛布の上で色々と尊厳を失った女性がいた様な気がしたが、うん、俺は何も見ていない!



勿論、毛布は念入りに洗った。

これでもうあとは…戻る。だけだ。

すいろから路地を通って、ぎるどのあるおおどおりに…

「グラジオ!」

「あ…じぇし…か?」

俺が覚えているのはそこまでだ。

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