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新しい朝が来る


「ふぁ…」

カーテンの隙間から入る光がまだ薄い頃、まだ薄暗い空模様の中俺はむくりと起き上がる。

「ふにゅ…」

「すーっ、すーっ」

ジェシカさんは相変わらず俺のことをお気に入りのぬいぐるみばりに抱きしめてきていたが、ここ何年かでそこからジェシカさんを起こさずに抜け出すという謎技能が発達していた。一応二人部屋なので横を見ればあの美人さんが身じろぎひとつしないで寝ていた。薬効ではなくごく自然な眠りだ。

起き上がって少し体をほぐしたら鎖を引きちぎり、毛布で彼女を包んで水路に向かう。


「おはようございます」

「おはよう、毛布を洗濯したいんだけどなにか貸してもらえない?」

ギルド職員は俺の抱える毛布に少し視線を注いだが、特に何も言わず石鹸を出してくれた。微妙に微笑ましいものを見る目なのがなんとなく引っかかるが、見た目5歳児だしお漏らししたとでも思ってくれたのだろう。最後に「きちんと水に浸してゴシゴシしてね?」と付け足してきたあたり確信があるのだろう。

ま、実際には中にはメイド服を着せられた女性が意識不明で入っているんだけどね!

ちなみにメイド服さんはジェシカさんの魔法で再構成されサイズはピッタリである。俺はとてちてとてちて幼児ボディを動かして毛布を俵担ぎした状態で近くの水路へと向かっていくのであった。


〜〜〜〜


気がつけば担がれていた。

この地面の近さを鑑みるにあの悪魔に担がれているのだろう。手足の枷は無理やり引きちぎられた様で短くなった鎖が擦れる音がかすかにする。

しばらく上下に揺れる奴の方の上で身じろぎしてみたり、声を上げてみようと試みたりしたが、毛布が思いの外強く巻いてある上猿轡もされているので思った様にはいかなかった。だが、次の瞬間には水の音が近い平らな場所に横たえられた。

「起きてるだろ?流石に密着してれば呼吸くらいわかる。」

…少し、師匠に似ている。いや、なにを言っているんだ私は、なぜ私はこの悪魔が師匠に似ているなどと思ったのだ?

「っち、後ろから刺してやろうと…ぉあ!?」

「oh…グッバイ布面積…」

装備品がない、それどころか服も変わっている。というかなんだこの服は!娼館でもこんなのはきたことが無い!は、恥ずかしい!?


〜〜〜〜


表面上はメイド服だがその内実は扇情的かつ際どいジャパニーズエロメイドスタイル…水着並みの肌面積に加え手足や首に付いたままの鉄環と傷ひとつない白い肌のコントラストが最高に倒錯的でヤバヤバのやばである。さらに戦闘者としてではなくエチエチな引き締まった体は、締まるところはしまっているものの女性らしい柔らかそうな感じがありありと出ており、女性という武器を最高に研ぎ澄ましたらこうなっちゃうんだろうなぁという感じがね、もうなんていうかね、そのね、えっちですね(脳死)

…いや、そうじゃなくて、うん、そうなんだけどそうじゃなくてね!?

おちおちおちつけ、素数を数えて、あぁ〜女の子座りで恥ずかしがってる色白きょぬーおねいさん可愛いんじゃぁ〜^^、っじゃない!

両頬をぶっ叩き正気を取り戻す。

危なかった。SNSで突如現れたエロ画像を後ろにいたJKに見られてゴミを見る様な目で見られた時並みにやばかった。


しかし、やはり羞恥のあまり顔を赤くしているあたり経験値の低さを感じる。なんでか知らないがやはり暗殺者であった彼となにがしかのきっかけで関わり、それ以降彼を追いかけてきただけの女性なのだろう。動揺や恐怖、そういった感情の波が隠せないのは暗殺者として致命的だ。…俺も修行を積まねばなぁ…

「っく…こ、殺せ!」

……

…………っは!?危ない、この世界において勿論ゴブリンやオークというものは存在しているが、彼らは人類種の一部であるので諦め掛けていた前世の記憶に残る異世界名言集第一位をまさか自分が浴びせられるとはおもわずちょっと意識が飛んでしまっていた。

「いや、殺さないし、貴女はもう自由の身だ」

いや、まぁ、冗談だが、それにしても何というか、あれである。このまま解放したとして、彼女はまともに生きていられるんだろうか?俺が左手で触れると震えて縮こまってしまった彼女の鉄環を高周波パンチで破壊しながら思う。

一応、武器として短剣を渡すつもりだが、お金もないし、思えば身ぐるみ剥いでジェシカさんの装備とお金に変えてしまったのは結構まじで鬼畜の所業である。

「は?」

鉄環が壊されたのを呆然と見る彼女に短剣を投げ渡す。

ダメだな、これ以上いれば情が移ってしまう。そうなればきっと俺は道徳的なナニカに縛られて、頭お花畑な感じで保護してしまう。俺にそんな力も、理不尽を打ち壊す強さも何もないのにそんな事は許されない、アレらは全て彼らが理不尽という名のあらゆる物を暴力であったり知力であったり、どんなインチキじみていたとしても何とでもできるからやれるのだ。

きっと今の俺がして仕舞えば、子供の頃に捕まえようとした蝶を握りつぶしてしまった様に、意図せずに壊してしまう。


俺は強くなる。

だが今は強くない、だからワガママを押し通せない、あの母親の形をしたマッドサイエンティストや、父親の形をした貴族思想と熱量の塊の様な圧倒的な何かが俺にはまだないのだ。

だから、俺は『彼女』という弱さと今は別れなければならない、強さとは何か、まだわからないけれど、今は身の程を…わきまえろ、俺!

「みつけタァ…」

「っ!」

その不気味な声が聞こえた。俺は魔力障壁を活性化し飛んできた金属棒を弾く。

視界の外から来たソレに気を取られていた間に俺の目の前に、つい昨日見た黒衣の誰かが立っていた。

「死に損ないが…死ね」

あの時と同じ最短最速の短剣、ソレはあの時の様にあっさりと俺を貫く…なんてことはなかった。

「なんだと?」

「なぁに手間取ってんだ9号!…いや、あはぁ♡いいや、メイドを先に始末しろ!」

「っち、了解」

ダークエルフは影をつたう特別な魔法を使うらしいが、彼女はそんな様子もなく。ただただダークエルフという種族の身体能力のみでメイド服を着た女に接近した。

「っひ!」

「死ね」

そして当たり前のようにメイド服の彼女は、なすすべなくやられてしまう…そんな事は、少なくとも俺の良心と志す先が変わらない限り、ありえない!瞬間的な魔力の爆発と肉体強化を利用した突進、彼女の師匠をミンチにしたソレを俺は今度こそ完璧に制御した。俺はエロメイドとエルフの間に体をねじ込み、その短剣を受け止める!

「やらせないよ!」

「なっ!なんで!」

「っチ!」

ダークエルフは距離を取る。もちろんその隙を逃す俺ではないが、カバーするように飛んできた金属棒に足止めされる。

「にゅふふ…いいですねぇ、魔力による障壁、バカみたいな魔力量、間違いないですね、貴方ガァ…ターゲット!グラジオラス・フレイアール!」

「…あいにくと、その名字は嫌いでね、グラジオラスとでも呼んでくれ」

ダークエルフの隣にはまるで影から染み出てきたような黒い男がクネクネしていた。ちょっとオネェっぽかったり、筋骨隆々だったりと色々奇抜ではあるが…

(強いな、少なく見積もってアルブレヒトさんくらいだ。)

後ろにいる彼女に目を向けるが、信じられないものを見るような目でこちらを見る以外能がないらしい…2対1、時間を稼いでジェシカさんを待つしかないか?いや、それじゃあ騒ぎもでかくなるし、影を使って移動できるダークエルフ相手に捉えられた今、どうにかして彼らを倒すしかないだろう。

「はぁ…冗談きついなぁ!」

朝日とともに現れた二人組は暗殺者とか、今日は厄日に違いないだろう。

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