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冒険者となる為に


冒険者、冒険者ギルドその関係は多くの人が、主に異世界人たる俺やその他が思うような自由さや誇りやらなんやらとは全く関係なく。そぐわない、そもそも最初から言った通り冒険者ギルドという組織は超巨大な、領地を持たない国家である。

その源にはとある古代遺跡やその遺構が関わっているのだが、まぁ此処は今はどうでもいい、問題は…


「ふむ…それでグラジオ君、だったね?わかっていないかもしれないが…」

「成人である15歳まで冒険者ギルドへの入会は原則を認められてない、ですよね?」

「…ふむ、規則も道理もわからないお子様、と言うわけではないか…君の目的、入会に際してこのギルドに求める事はなんだい?」

銀貨と偽名とほんの少しの本当を混ぜた書類を提出した俺とジェシカさんが通されたのはなんて事は無い面接室…の筈だった。

尖った耳、ギルドは多種族の入り混じるサラダボウル的な準国家にして巨大組織、そしてその中において長命種たる耳長、あるいはエルフと呼ばれる森の住人の役割は多くの場合支部の長や司書などである。流石に鈍感な俺でも至近にいればわかる。この尋常ではない魔力循環と魔力量、そして何よりも身に纏う空気が明らかに外でうろついている冒険者や傭兵とは違う。

よく言えば凪いでいて、悪く言えば薄気味悪いほどに波風の立たない湖面の様だ。

つまるところ異常な使い手、支部長か幹部クラスか、直接的な戦闘力だけで役職が決まるほど単純なところではないが、直接的な戦闘力が高ければ高いほど高位の冒険者であるのは確かだ。

そして、高位であると言う事はそれだけギルドとの距離が近いと言う事、つまり俺は疑われていたのだった。


「俺の望みは自由である事、ギルドに求めるのは身分の保証、よくあるでしょ?」

「ああ、いっそ陳腐な理由だ。だがそれだけに許可には慎重な審査がいる。ギルドは国から保護されているのではないからね、密偵もいればわざと粗悪な冒険者を生み出し、隙を作ろうともする。…そして今僕は悩んでいるんだ。」

その後ろに君の処遇についてね、と付け足した銀髪の長命種は口にキセルをくわえ息を深く吸うと煙を吐く。…煙に含まれる匂いである程度の薬草はわかる。むしろそれくらいしか座学でやるべき事はなくなっていた。含まれる薬草の名をある程度割り出した俺は平気な顔して息をし続ける。


2分、3分…普通なら効く程度に時間が経ったところで彼はキセルの煤を皿に開けた。

「暗殺者でもやっていたのかな?」

「いえ、暗殺される役はやってましたけどね?」

俺がそう答えると口の端をゆがめた彼が噴き出した。

「っくふ、あははは!君を殺そうとしたやつは相当の間抜けらしいね、毒は徐々に与えていいやつと悪い奴がいる。君はダメなタイプだ。魔力による身体強化を常時かけているのかな?代謝もいいし、魔力量が多いからか弱毒なんかは効いても問答無用で治されている。いや、そもそも自然死に見せかける様な毒の盛り方じゃあ死ねない体らしいね…弱毒も、薄めた強毒も一度に摂取する量が少なくそれがたくさん続くなら毒素に対する抗体ができてしまう…なかなか面白い経歴の持ち主らしいね、只人の幼子とは思えないな」

「さぁ、どうでしょうね?」

面白い経歴なのはそうだろう。20歳になって後ろからざっくりやられたと思ったら赤子になって、数年経ったら家から追い出される様な人生遍歴の持ち主などそうそういないと思う。…赤子の頃に捨てられて犬猫や伝説の魔獣とかに育てられたりとかそういうのとはまた違う。人特有の悪意にさらされ続けたと言う意味では彼らよりも悲惨かもしれないな!

「まぁ、人格も問題なし、言語は…」

「ほぼ完全に使えるのは標準中央大陸語と中期魔法言語、少しかじったのは北方系と南部系、読文は古代魔法文明語と神聖文字くらいです。」

「…ふむ…では、試験に筆記を追加しておこう。一つ注意しておいて欲しいのはそれで『くらい』だったら世の中の魔法使いや学園生は泡を吹いて気絶してしまうだろうから、気をつけてね?」

「ええ、そうですね」

時間は少なかったが幼児の体、頭は覚えたいことをすぐ覚えられた。幼児教育は大事だってはっきりわかるんだね!ちなみに普通に魔法使いするだけなら中央大陸語と言う名の共通語と後期と前期両方に共通する文法や語が全て詰め込まれている中期魔法言語が使えれば問題ない、だが家を出る時から変装するのは決定事項みたいなところがあったのでデイダラさんとピーター氏に北方訛りと南方訛りを教えてもらい、それに標準語を混ぜてお上りさん風にしたり、完全に訛りを入れて出自をぼかしたりできる様に習得した。

ついでに無属性術式魔法が描かれていると噂の古代魔法文明時代の遺構の探索のために古代魔法文明語を、神によって造られたとされる迷宮内部で見受けられる言語である神聖文字は習得した。探索や冒険者になってからの稼ぎにつながると思ったのでこちらは最初からコツコツとやってきた。


ここでの情報開示や試験結果は後々発行される冒険者証に刻まれるため、公的機関による保証を得た技能の証明となり、信頼性が上がるのでやっておくべきであると物の本には書いてあったが、彼の反応から間違ってはいないと言うのがわかったので昇級時には何か他の技能の開示もしようかと考える。

昇級時には証が再発行されるためまた試験を受け直し更に追加の試験をする必要があるのだ。勿論、座学だけでなく。戦闘力もある程度の指標を用いて測られるため、オツムも体もきちんと鍛えておかなければ昇級時にひどい目にあう。優秀な冒険者は常に自らを高め最低でも保っていなければならない、そのための仕組みらしいが、なかなか近代的である。

こうなってくると古代魔法文明やギルドの所有すると言う遺構、アーティファクトと呼ばれる古代の遺物に異世界人や未来人なんかの関与を疑ってしまうが…まぁ、今の所は良い方向に働いているので放置だ。

好奇心はくすぐられるが、これから旅をするための身分を手に入れて早々にその組織の核心を探るのはあまり賢いとは言えない、好奇心猫を殺すと言うし、今は王都から離れる事が最優先だ。

「まぁ、話に矛盾もないし、こちらに不利益そうな嘘もない、僕個人としてはようこそ冒険者ギルドへ!といってしまいたいのだけど、規則は規則、根無し草であり機構だけで存在している僕らだからこそルールは簡単に破れない、エレメント王国冒険者ギルドタイム支部長の権限で試験を受けることを許可しよう!」

「ありがとうございます!」

俺は彼に促され部屋を退室すると控えていたのかギルド職員によって試験場へと連れて行かれる。とりあえず最初は1時間かけて俺の申請した語学系、訛りを除いた四つの言語の試験である。





「はぁ…で、君らどう思う?」

安楽椅子に座り、先ほどとは違うキセルを手に煙を蒸す支部長は誰もいないように見える場所へと言葉を投げる。

すると今まで何もなかったはずの場所からギルド職員が数名現れた。彼らは主に現役時代に斥候をしていたが様々な理由で引退し、冒険者ギルドへ正式に所属した元冒険者達だ。

「正直言って怪しい事は怪しいですが、問題はないと思います。」

「ええ、調べても彼自身には特に…まぁ、問題がないと言うわけではないけど問題になり得ないと言えばそれまでだし」

「そうっすねー、御付きの人も冒険者としてやってけそうですし、没落貴族も流刑になった貴族や王弟果ては死んだはずの人物なんてゴロゴロしてますからねー?」

最後の男の気安い言葉に苦笑する彼は森の住人の特技の一つである妖精の力を借りたへんげを解き、その長い銀髪と豊満な胸を解放する。短く切りそろえられていた髪が長くなり、胸があると言うだけで美男が美女になるのはやはり森人特有の中性的ながら整った顔立ちゆえだろう。

「は〜、また懲りずにどっかから送り込まれた密偵かと思えば暗殺者に殺されたはずの大貴族のご子息とは…なんだかやりきれないねぇ…」

「いいじゃないですか、優秀な冒険者は冒険者ギルドの宝ですし」

「ええそうでしょうね、それに属性があると言うだけで優遇されるこの国では無属性の彼は生きにくい、どうあってもいつかこうなっていたでしょうね」

彼女は口から紫煙を吐き出してキセルについた火で受け取った書類を燃やす。大貴族の醜聞、ギルドからすれば塵芥とまではいかないが国一つ程度ならば問題なく対処できるのだが、ややこしくすれば面倒なのはこちらも同じ、とりあえずはなかった事にしておくのが吉だ。

「さて諸君、さっさと試験官としてのお仕事を全うしてちょうだいね〜?」

彼ら彼女らはいつも通りワガママな彼女の言葉にやれやれとポーズをとって部屋を退出していく。

ギルドは誰にでも門を開いているが、そこを通れるかどうかはギルドの利益と繁栄に支障があるかどうかで判断される。

尚、結構厄ネタのため殺されかかるが平然としすぎていたため監査はつく模様

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