異世界転生した結果女の子ロールをする羽目になった件
「じゃあまたどこかでね!」
「え、あ…うん」
変装、言わなきゃよかったなぁ…
「実はこの地下水路は古代遺跡が現存した部分とそうでない部分があるんだ。」
「たしか…王城から平民街の少し手前くらいまで…でしたよね?」
「ああ、だけれどこの水路の水は少なくとも貧民街を抜け王都エレメント近郊の森の小川に至るまで決して濁らない、驚きだね!」
俺はジェシカさんのノリノリ具合の方が驚きである。良く通るハスキーボイスは中性的な彼を演出する。そして幼く、あまりに声も中性的な俺は彼女になった。何だかんだ変装というよりも最早完璧な成り切り、演劇めいていた。まぁ両方が両方中性的なために不自然さはあるが、それすらも冒険者とその従者という謎すぎる見た目が混乱を生む。
有り体に言えば完璧だった。
それが非常に悲しい…というか、俺の男の部分が男泣き状態です。心バキバキである。さっきすれ違った冒険者の一団に混じった少年にナンパされたせいだろうか?というかなんで俺なんだ。もっと他にいただろう?出入り口に近づいている分人通りは多いんだから攻めて俺以外の女子を!男のムスメ状態の俺じゃなくて女を口説けよ!しつこく住んでる場所とか出身とか聞かれてマジ吐くかと思ったぞ!?
いや、落ち着け、落ち着け俺、素数を数えてカブトムシの体節を考えるんだ。
大丈夫、これならむさい男所帯のサークルでやった女性プレイヤーキャラクター以外使用不可のr18シナリオに比べれば…精神汚染はないけど精神ダメージがでかいんだよなぁ!オイ!
ふぅ、だがそろそろこの地獄も終わりだ。…いや、ある意味これからが地獄か?今のところあの餓鬼に与えられた精神ダメージとミンチ生成した時の混乱が一番俺にダメージを与えているとかいうこの状況から、俺たちはスラム街、正確には冒険者ギルドや傭兵ギルドと呼ばれるゴロツキや系犯罪者御用達の施設がある市民街と貧民街の間に出ることになるのだ。正直言って俺よりもこれから絡まれるのはジェシカさんの方だろう。
私の知る限り王都は四つの顔を持つ。
一つは馴染み深いとは言えないけれどずっと目にしてきた王城や学園付近の貴族街、二つ目はその反対、貴族という特権階級がいれば、それを光とも闇とも私は言えないけれどその反対に互いについになるようにしてあるのが貧民街…幸いにして今回はルートに含まれていないけれど、きっといつか私はそれを目にして何か思うところを求められるのだろう。
ランドウォーカーとしてではなく。フラウロスとして…
さて、さてさて実はこの間の街である此処は無法とはいかないが限りなくグレーな位置付けだ。それ故に国家権力よりもギルドという組織に与する者たちには都合の良い場所だった。保護は最低限だが干渉も最低限、それは此処がこの国有数の学園による大規模な事故と遺跡の隆起が合わさってできた見た目も中身も政治的にも歪な拡張帯だからである。
「ここは、時の権力者、確か…三代ほど前、未だ終わっていない魔族や獣人族、そして何よりも魔物との戦争中、この国の王族と他国の皇族、そしてエルフの国の姫君が合同でやっていた研究のフィールドで、運悪く事故によって3人ともが死んだ曰く付きの場所…とされている」
だが、三代前の王族は兄弟が多く。エルフもそのどこかの皇族もなにがしかのやっかみを受けていたらしい、故に飽くまで噂としてだが…
「だが、実際には此処で戦争反対派をまとめていた3人を抹殺した。なんて噂もあるそうだよ」
「…ええ、実に、恐ろしいですね」
だがこの場所で少なくとも3カ国の王子や皇太子、姫が死んでいるのだ。此処をこの王国の支配下であると宣言しここに浮上してきた遺跡を手にしようものなら他国からの追求は避けられず。だが他の2カ国も少なくとも今のところ落ち目になく強大な王国を相手にこのあからさまな爆弾を突くほどの力もなかった。
それ故に此処は半無法地帯、王国領地内のしかも王都の膝元にあって王国とは関係のない場所であるとされている。だが、近くにあるこの隙間で好き勝手やらせるわけにもいかない王国は近くにあり、いつ何時暴発するともわからない過去の遺跡の集積帯の暴走に備える。という名目で衛兵や最低限の治安維持をしている。
王都の市民街の壁と今もなお痛々しく残る倒壊した建物の群れの間にある窪地、王都地下に広がる地下水路の中でほぼ唯一掘り返された場所、此処は『タイム』王都エレメントに最も近い遺跡都市だ。
「ところで…ジャック様?」
「なんだい、グランデ?」
人通りが多く。むせかえるような人の匂いは久しく。その匂いはいつか行ったコミケを思い出させる臭気だった。…一応水路で水浴びする人もいるようだが、そもそも鎧やら何やら蒸れるのでそれを着込む冒険者傭兵が多い以上仕方がない、それにlこの匂いとは長い付き合いになるだろう。
「確か冒険者登録ってお金が必要じゃなかった?」
「ああ、そうだ。…あ」
さて、ギルドは領地を持たない国家とまで言われる巨大組織であり、そこへの登録は市民権の購入に等しい、それに必要な費用は果たしてタダの馬車に乗って森の前まで行き主人を待つだけの専属メイドが持つことが許される程度の端金で足りるだろうか?
ちなみに此処で重要なのは彼女の雇い主がずいぶん前からフレイアールから俺に移されているらしいということを理由に此処しばらくの間彼女に給金は発生していないという事、彼女が俺への手助けができないように現金をほとんど商業ギルドに預けさせられているという事、街で食料品を買うためという名目で持ち出せた現金は銅貨の100倍の価値を持つ鋭い銀に輝く貨幣であるという事、あのミンチさんはお金持ちではなかったという事…これらから導き出される答えは…!
「と、とりあえず当面はなんとか金を工面しよう!」
「…意図しなくてそれなら貴方は最高の道化ですよ」
まぁ、実は俺はなんとかなるのではないかと思っている。
なにせ…今もまだ俺は狙われているのだから、ね?




