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暗殺系土魔法メイドは理不尽の夢を見るか?


「実は私、本業は近接魔法士なんです。」

「…はい?」



はい、私ジェシカ・ランドウォーカーは籠手や武器を生成し近接戦に魔法を絡める近接魔法戦士なのです。あの解き放った鉄弾や石礫の嵐などは使い慣れない類の物でした。そして私の魔力操作もまた近接戦闘用の運用法です。循環などがその最たる例です。

「という訳で」

「何がという訳なんですか?」

朝日が山から降り注ぐ小屋の前に出てきました。

「今日は近接戦闘魔力操作の基本である循環をやってもらいます!」

「ちょっとまだキャラに慣れてないんで色々掴めないですけど…ええ、はい」

魔力の循環は近接魔法士の基本、これが流麗にできるだけで中級者程度の実力はあるとみてもらえます。やることは単純で常に循環している魔力を意識的に活用高速で流動させる事、ある程度の速度に達した時魔力が集中した時と同質の可視光が発生しそれを超えると今度は通常の視覚では知覚できなくなります。

効果は魔力によって行われる全身の運動強化や補助の強化、つまり肉体強化です。しかしこれは肉体強化の魔法と重複するので肉体そのものの励起であると考えられており、この国だけでなくこの世界において使用されるあらゆる武術はこれを『気の循環』、『呼吸』と呼んでいます。


まぁ、何が言いたいかといえばデイダラさんのあの身の丈を越す様な巨大な戦斧を振り回す筋力やピーターさんの肉体の極地の様な攻撃力は魔力循環による肉体励起と肉体強化の重ねがけの結果生まれる物であるという事です。

…そうは言ってもこの循環という魔力操作は才能の有無ではなく基本的には単純な時間によってのみしか手にすることは出来ません、そしてそれがいつになるかは…個人差があるとしか言えません、逆にこれの習得さえできて仕舞えば他のあらゆる魔力操作は比較的容易に体に馴染みます。

何しろ先ずは魔力が可視できるレベルの魔力操作を超えて、少なくとも視認できない速度で動かせなければ高速戦闘に使用することなどできませんし、そもそも高速で動く魔力を集中させるなり、放出するなりなんなりする事で漸く肉体強化と魔力操作の両立ができたと言えるのです。



風の月 4の25日目


循環とは生物学…というよりも生態学の領分であり英語であればエコロジー、化学や物理では物質やエネルギーの流れのことである。

生物学と生態学を分けたのは…まぁ、そういうことに敏感な人もいるという事だ。何が生態学者は科学者ではないだクソが、別に研究が役に立つ立たないは生命の神秘、仕組みの解明という至上命題に関係ないし、そもそもあらゆる学問は自然の観察や経験的な法則性の中から生まれ出たものだ。そういう意味では生態学とは立派な学問であり、それを専攻し、学び、修めた末に自然やそこに生きる生命の循環から何かを割り出そうとすることやその流れを見ることが無意味と断じるのは実に理論的さに欠けるし合理も何もない、本当に根も葉もない差別だ。


さて、循環だ。勿論魔力の事だ。

正直に言って一向に早くならないし意識的に循環させてはいるのだが第一段階の可視光の発生するレベルまで達していない、ジェシカさんも一応『8ヶ月から一年はかかります』と言われたのだが…現状、俺の主力は自爆まがいの肉体強化と飛び出る魔石刃、障壁とそれによる常人より少し高い身体能力である。

つまり、肉体特化、魔力の多い脳筋、マジカルなパワー型ですらなく魔力を使用した物理特化とか言うトチ狂ったファンタジー系TRPGプレイヤーが気まぐれに作った序盤だけ爆発して後々息切れするキャラみたいな、凄まじき無能なのだ。そして循環によって素の状態の肉体が強化されるということはそれすなわち根本的な火力の強化、ひいては全カードの強化につながる技術だ。

最優先取得スキルである。


そもそも、なぜ習得に時間がかかるのか、ジェシカさんによる解説によると『川を流れる水の流れがその嵩によって決まっている様に、魔力もその量が変わらなければ流れの速さなど知覚できない』そうだ。

…うむ、そうなのだ。俺は一回死に掛けた時に魔力量が変わっている。それにその原因となった魔力の強制収集の時も魔力の量が変わっている。つまり俺は魔力の速さというのを知覚しているはずなのだ。だがその感覚が思い出せない、いや、他の感覚が強すぎて覚えていないのだ。ここでチート主人公や冷静系努力チートな化け物は一回やったはずのことができないなんてあり得ないとか言い出すんだろうが、人間が一回やった動作を完璧にもう一度できる様になるには途方も無い時間と訓練が必要だ。

…あ




グラジオラス様がなんだかとんでもないことを言い始めた。

「魔力量が変われば速度が変わるんだから魔石から魔力を逆流させればその感覚がつかめるんじゃないか?」

「…ちょっと待っててくださいね?」

…正直、たしかにそうかもしれないと一瞬納得しかけたが、そんなうまい話があるはずがない、というか魔石から魔力を取り出せる様な魔力操作技術があればもう魔力操作など極めたも同然だ。そもそも魔力の波長はそれが宿る物によって違う。それを調律するなど魔力操作の魔の字もできていない素人には不可能なのだ。

………ええ、本来ならね?頭がいたいです。別の型の血液が混ざれば凝固する様に、調律に失敗すれば魔力路の循環不全によって死ぬかもしれないのだ。その魔力操作を簡単に行ったのだ。

そしてあまつさえ循環による発光まで習得してしまった。

いや、たしかに彼は魔石の充填を赤子の頃からやってましたよ、それはわかりますよ、でもまさか魔石によって魔力を調律し直して入れてるなんて思いもしませんでした。これはなかなか…順調、なんでしょうかね?少し常識というものを教えたほうがいいのでしょうか…

「おお…すごいなぁ、輝いてるわ…」

「スゴイデスネ」

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