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這いよれ!地獄さん!


風の月 3の一日目


…もう二ヶ月、されど二ヶ月、屋敷からの音信が途絶えてもうそんなに時間が立ったのだと思うと今更ながらというか、呑気なものだが彼らの方が心配になってくる。

あまりにも遅いものだから少し観に行ったりしたがなんかよくわからない結界的なもので内部が封印されており、中も炎熱地獄と凍結地獄の合いの子みたいになっていた。何があったのかといえば、まぁ、想像できなくもないがあくまで推論であり仮説、予想というものの域を出ない物である。


だがまぁ、この惨状を産み出したのはどう考えてもあの2人だろう。この結界については不明だが、フレイアール邸の全域を覆っているため相変わらず陸の孤島であることに変わりはない…はぁ、これを機に少し出かけたりしたかったものだが、これでは相も変わらず日々の糧を手に入れ、研究し、修行をつけてもらい、神を呪うくらいしかやることが無い…いや、やることは満載なんだけどね?


魔闘術は超高速かつ流麗な魔力操作によってインパクトのタイミングや踏み込みの一瞬で身体強化を暴走、もとい身体強化を強化している。その結果的に全体としてみれば超人的な膂力と加速をする超人の完成なのだが…一瞬とはいえ音速域を超え、爆発的な力を生み出している。その時骨や筋肉はどうして俺のように粉砕されないのか…色々とピーターさんを見て考えながら筋トレ4セット(増えた)森の中を魔獣に追いかけられながらランニング10周(勿論、森全域では無い)していたのだが、わかったのはピーターさんもデイダラさんも素の肉体強化によって保護されていた。

うん、土属性のデイダラさんは前々から前腕に金属を纏っていたが、よく考えればピーターさんは風属性、あの忌々しかったトンボやろうと同じような理屈で空気抵抗そのものをそらしている。属性魔力ならではの肉体強化であると感心するが、非常に問題なのは俺が同じことをした時にやっぱり空気抵抗さんが邪魔してくるのは明白であるということだった。


…つらみ!



風の月 3の四日目


今日は朝、筆をとっている。終始テンションの上がる事ばかりでもう書き始めてもいいような気がしたからだ。

先ず最近ボヤーっと見えるようになってきていた左目の視界が復活し、右耳もいつも通り聞こえるようになってきた。だが、それよりも嬉しかったのは魔力が戻ってきた事だ。感覚的な表現になってしまうが、魔力を全身に満たしていくと昨日まで開けにくくなっていたジャムの瓶がすんなりと開いたような、そんな感じと共に力が漲り、溢れてくるような感覚だ。とりあえず久しぶりだしちょっとだけ魔力を精製し



私です。

キッチンで朝食を作っているとあの時のような濃度の魔力が待機中に撒き散らされ凄まじい胸の苦しさを感じながら戦闘態勢を取りましたが…少し考えてやめグラジオラス様の部屋に殴り込みに行きました。

「グラジオラスさま!」

「っわぁ!?何!」

「魔力生成を一旦止めてくださいまし!死んでしまいます!」

彼は一瞬キョトンとしてから、一拍遅れて思い出したのか急速に魔力を体内に納めていきます。本来ここまでの魔力操作ができるならば魔力の高速移動程度訳無いはずなのですが、今までやっていた訓練が訓練です。体内の魔力を放出せず身に止めるのは無属性魔力の特性、それを無理やり放出して魔石に注入するようなことしかしていなかったのですから…奴隷2人が教えることがあるのに私には無いと言うのが最近少し癪に触っていたので、私もグラジオラス様に何か教えた方がいいのでしょうか?

そんなとりとめもない思考を脇に置いておき彼の診察を開始する。

全身を満たす魔力は以前よりも太く。また力強くなっているようで一度断裂した後のものと言われなければ生来この様にあるのだろうと錯覚させられてしまいます。

というかそもそも筋肉などのように一度壊して再生してというような物ではないので力強くなっているのはむしろ可笑しいのですが…そもそも百人分の魔力を持って生まれた方なので現実の改変力が凄まじいのも相まってこのような現象が起きたのかも知れません、確か古文書などに出てくる魔王という存在や勇者なる超常存在も膨大な魔力を持ち、戦うたびに強化されると聞きましたが、戦う、つまり致命傷などを負いながらも生き延びることで膨大な魔力による強烈な現実改変が起こり、肉体そのものをより深く強化再生するのかも知れません…

一応、魔力量の増大や急激な魔力路の発生などは前例がありますが、確かにその多くはそもそも魔力の多い魔法使いに多い傾向にありました。


そもそも、肉体強化による肉体的損傷の回復力は魔力量に比例します。なのでグラジオラス様の場合単純計算で普通の魔法使い百人分の治癒力を持っているということになりますが、その全てが治癒力に回ることは滅多にありません、なにせ魔力は身体機能の補助や肉体の持つ抵抗力様々な場所で改変を起こしているし、そもそも戦闘中や戦闘終了後も生きている限り魔力は少しずつ消費されます。魔力の回復力が高かろうがなんだろうが結局使用量を考えれば普通は魔力全てを回復に使用などできないのですが…グラジオラス様の場合、定期的に魔力を纏うのをやめたり、魔力を暴走させてみたりしてその反動でしばらく魔力が使えなくなったりしている関係上肉体そのものの細菌や毒物に対する耐性は常人よりも高いです。


また、魔力回復量も魔力量に依存するため、常人が1日のうちに代謝的に使う魔力は魔力量を百分率した場合に10%程でその他肉体動作の補助などの運動で20%、同じ式で魔力回復量は1日で20%、多少前後しますし、食事などでも変わりますが、代謝する魔力量が常人と変わらない以上、アナスタシア様やガラフ様、そしてグラジオラス様のようなある一定以上の魔力を持つ人物は魔力を常に余分にプールしており、その回復速度と相まって低レベルな現実改変や魔力消費の少ない術式魔法を連射できるのです。魔力量が代謝を上回るのは魔法使いで有るならば普通ですが、彼の魔法使い百人分の魔力回復量とはすなわち魔法使い十人分の魔力を常に余分にプール出来るということです。


普通に考えればそれだけで脅威なのですが…ここで無属性なのが響きますね、いえ、現状の彼の闘い方からすればむしろ好都合なのかも知れませんね、あの魔法を発動させない限り彼の余剰魔力で張られた障壁と肉体強化で格闘戦、もしくは近接戦闘を行う彼は通常であればダメージを負うことすら稀です。

それでいて負ったダメージを魔力によって急速に回復するのですから…


肉体の損傷はもう前から治っていましたが、視覚と聴覚も回復したようですね、そして魔力精製ですが…

「っ!」

「どうしたんですか?」

コレは…いえ、当然ですね、彼の魔力路と魔力炉は常に通常の魔法使いのものと比べて100倍近い負荷をかけられていたのです。

土属性術式魔法の解析の応用で彼の身体を透視している私の目に飛び込んできたのは恐らく最初よりも大きくなった魔力炉、そして彼の右手に入り込んでしまった魔石によって生まれた第二の魔力路と魔力炉、多くの場合上級魔獣や迷宮の深部に生息する魔獣に見られる特徴、少なくとも一ヶ月前の解析と私とピーターの診断ではなんの問題もなかったはずの異物が、急速に回復する肉体に取り込まれそのまま其処にあるだけで害は無いはずのそれは、彼の身体を蝕むでもなくその手に根を張っていたのだ。

「…すこし、心して聞いて下さいね?」

「?」

ああ、どうしましょう。私の判断ミスです。今まで人間が魔石を取り込むような事件はいくつもありましたが、そのどの場合でもなんの問題もなかったり、一時的な魔力の増強ができた程度の物でしたので気にはしても特に問題はないだろうと思っていました。ピーター氏は取り出したほうがいいだろうと言ってはいましたがあの時は小屋も半壊していましたし今でも完全に清潔な状態を生み出すには設備が足りません、それに外科手術は多くの場合体力を要します。魔力が多くても、鍛えていてもグラジオラス様はまだ二歳にもなっていないのです。それに加えてあの状態で…無理はさせられませんでした。

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