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優雅にして華麗にして醜悪


体調がすぐれず。

遅れました。

しかも大した話じゃないっていうね


「それでは、これより五大神の名の下にアーティファクト『真実の天秤』を使用した裁判を開始する。フレイアール伯爵家当主、ガラフ・A・フレイアール、メイルリーン公爵家当主、カシウス・メイルリーン、両者、前に!」

法廷に立つのは対照的な2人、魔力を滾らせ今にも怒りのままに爆発しそうな厳しい男と涼しげな顔をしている優男…互いに家の格は違うながらも国の一角を担う五色家、彼らの今から望む裁判の内容はどうでもいい、彼らが今考えているのはどう転がせば最も利益が出るかどうかだった。

それが当主という生き物のサガであるが故に、そしてその為ならば互いが身の内に飼う悪辣なるなにかが仕組んだシナリオだとしても、それに乗るしかないのだ。

(クソっ!忌々しい…未だに無能の始末もできていないというのにっ!いや、彼奴の名が既に刻まれているのは確認しているが、アレは家名までは刻まれん、だがあの女の描く未来通りに動いてやるのは癪だ。…だが…)

ガラフの内面はいたって冷静だった。

いや、冷静というのはいささかとっちらかっていたが、それも仕方がない事、此度の騒動も最初から仕組まれていたのだ。

「ッチ」

「うふふふふ…」

観覧席から自分を見下ろす童女、それの抱える赤子の価値を計算しながら家への影響を最小限の被害にとどめつつ、どうにかこの酷い手札を切り切らなければならない男は顔を歪めた。




事の起こりはある日の午後、突然の報告に王城は揺れた。

火属性と水属性の熟達レベルの魔法使い、それも大貴族同士が王都周辺で大規模混成接続術式魔法による殴り合いをしていると言うのだ。

もちろん早急に事態は解決された。

だが、事はそれだけでは終わらなかった。ガラフが何故ここにいるのか、何故アナスタシア・メイルリーンが童女になっているのか、それらはまだ問題ない、メイルリーン家がおかしいのはいつも通りであるし、フレイアール家現当主は今世紀最高の火属性魔法、術式の使い手である。火炎を駆使した高速移動術を持っているので昨晩まで最前線にいようが4時間もあれば王都まで帰ってこれる。それはいいのだ。

「なんなんだ…これは!」

問題は彼らの屋敷にあった。

夥しい量の死骸、死骸、死骸、鉄と腐臭に塗れ、常人では耐えられぬような大気中の魔力濃度、微かに残る異形の術式や呪いの残り香、屋敷全体に貼られた結界には内部の人間の生命力を魔力へと変えるような細工や、いくら魔法貴族とはいえ異常な量の魔道書群などなど、貴族の屋敷というよりはなにがしかの妖しげな邪教やら邪法やらの研究所と言って差し支えない設備の数々…なによりも無属性であるはずの王都、その周辺の直轄地であるはずの周辺魔力属性が大幅に火と水に偏るような天変地異、その爆心地であるが故の異常に宮廷魔導師は絶句した。


火と水、その属性に対し多くの人間が多くの時間と労力をかけ解明してきた。風や土などの属性が熱心に解明されていないかといえばそうではないのだが、人類の知恵の象徴たる火と生命の多くに共通する水分、それらを司っていると思われた属性魔力はそれはそれは熱心に究明された。

しかし、属性魔力によってわかったのは『魔法』と『物理現象』の大きな相違だった。つまり、火属性の魔力は火を生み出しているわけではなく。水属性の魔力は水を生み出しているわけではない、純粋なエネルギー、純粋な力としての魔力が無属性であるならば属性魔力は力に方向をつけられた物だ。

火属性は運動、水属性は静止、風属性は分離、土属性は結合など、様々な例外はあるが属性全体の能力として大まかに分ければこうなる。また、魔力や魔法を考慮しない純粋な物理現象とはやはり違うのだ。



そこはあらゆるものが静止し、しかし動き続けていた。

現象的には非常に幻想的だ。炎が凍りつき、氷が燃えていた。だがその光景が膨大な魔力と破壊的な魔力の暴走によってもたらされているとなればどうだろう。

これが熟達した魔法、これが古代遺跡から発見された術式技術の数々、その極みであり現在の魔法文化によって生まれたある種の到達点である五色家の当主自らによって振るわれた結果であると、私は理解した。

燃え盛る火炎とそれらを覆いこの屋敷そのものを凍りつかせる魔力の嵐、私はこの惨状を記録し、今法廷で騒いでいる火炎馬鹿と妹に操られている兄()供のくだらない権力闘争にさらなる油を注がなければならない、それが王命であり、グランド家とテンペスタ家そして我が家を含めた五色家の力の均衡を生み出すための一手だ。

「ま、そのためだけに死にかけるなんてわりにあわないがね」

魔力を纏い屈折させる。それによってまるで砂嵐のように身を削り取ろうとしてくるこの魔力の中を掻き分けていく。幸いこの災害の爆心地は玄関口、つまり証拠物が多くあるであろうあのメイルリーン家でも異端として名を馳せたアナスタシアの部屋まぁまぁの損壊具合だったが色々と見つかった。

それがたとえ死体や得体の知れない培養液だったりしてもブツであることには変わりないのだ。

「はぁ…もっと別のやつ送り込めばいいのに…」

一応宮廷魔導師なんだけどなぁ?なんでこんな危険物件の情報を集めなければいけないんだろうな…



そう言いながらも男は着々と準備を進めた。

貴族同士の裁判は様々な司法取引も含め二ヶ月はかかる。戦いはまだ始まったばかりだ。

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