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異世界転生にチートを求めるのは間違っているだろうか?


風の月、1の二日目

表記法を変え、属性月、それが内包する四ヶ月のうちのどれか、おおよそ1〜40日で表記することにした。これでより正確に日誌をつけられるだろう。


さて、昨日の成果だが…著しい進歩と共にやはり問題が発生した。

先ず魔石のヤイバ、便宜上魔石刃と呼ぶがどうやらそれを発生させるのに1割、維持及び使用するのに5秒ほどで1割魔力を削られるようだ。昨日は一度発生させたあと魔力の回復を見計らってもう一度、今度はジェシカさんにカウントしてもらったが、ちょうど20秒ほどの所で魔石が持たずに砕け散った。そしてやっぱり俺はほぼ一息に半分ほどの魔力を失った喪失感とそれによる頭痛や神経痛などの反動を受けながらある程度の実験を繰り返した。

それでわかったのは…

1、魔石刃は超高速で噴射される魔力とそもそも物質として魔力を溜め込み内部で乱反射、砕けば爆発する魔石が相乗効果を生み出し、触れたものを今の所例外なく斬り裂いた。

2、魔石刃は最大で30センチ、持続時間も大きさによって伸び縮みした。

3、ありえないくらい燃費が悪い

4、そもそも俺の魔力が無属性な為に放出する力が弱いので要訓練

5、これを持ったまま戦うにはもう何段階か上の脳みそがいる。

6、使用後に脳、神経、魔力、魔力炉に凄まじい負荷がかかる。

という事だ。

まず、前提として異世界であるこの世界の人類は魔力を生成、蓄積、通す器官が体内に備えられている。

魔力を生成、蓄積する器官を魔力炉、通り道を魔力路というが、この二つは使う事で瞬間的な魔力の放出量やうまく蓄積し続ければ魔力量の増大も可能ではある。だがしかし、基本的に放出量と魔力量は二律相反、どちらかしか鍛えることは出来ないし、もっと言えば魔力量は魔力の最大値が増えるわけではない、あくまで魔力を体外に放出せず。内部に押しとどめて置くことで次放出する際の使用可能な魔力が増えるだけだ。

なので実質的に鍛えられるのは魔力の瞬間放出量だけであり、この訓練をするには魔力を放出し続けなければならない為魔力量の増大は不可能なのだ。


そしてなぜ神経系に負荷がかかるのか、これはあくまで仮説だが、魔力路が血管や神経系に似た配置をしており、また魔力を操作するときに魔力を認識する必要があるが、その際に脳や魔力路に近い神経をフル稼働する為繊細な魔力操作をすればするほど肉体、主に脳や神経など精神や感覚を司る器官を過剰に働かせる羽目になり、それが結果として負荷につながっているようなきがする。


とりあえず魔石刃についてはこんなもんだが、次は以前やった肉体強化魔法、その暴走の制御を試してみたい、が…

「おーい、グラジオラス!狩の時間だぞ」

「ええ、わかりました。」

今日はピーター氏と狩りに行き森の恵みもといタンパク栄養源を得なければならないのだ。

理由は単純明快、この家に溜めてあった物資は2人で四ヶ月分、4人なら、しかもそれが筋骨隆々で食欲旺盛な大男2人が追加ともなれば話は別だ。早急な物資の入手が望まれるだろう。



ランスロット・ピーターは目の前で石を握る少年というにはあまりにも幼い幼児を見ていた。

なぜ自分が今こんな所で幼児に体術を教えているのかと時たま思うが、それを吹き飛ばすほどに貪欲に教えを吸収しようと捥がく目の前の幼子に同情していた。


もともと俺はここから遥か西の大陸の果てに平穏に暮らしていた獣人の村落の住人だが、自ら病にかかった娘にために奴隷として流れてきた剣闘士だ。様々な場所でグラディエーターとして名を挙げ、力をつけ、勝ち、生き残ってきた。それ故になぜ力を求めるかは聞かなかったが、流石にこの間の雇い主である貴族との会話に違和感を覚えた。

そして彼が一応この家の血族であると知り、感じたのは醜悪さ、子だからというものに注がれる愛情、真っ直ぐだろうと歪んでいようと人類種に平等に流れる赤き血と愛の暖かさだけは信じていたが、俺はもう少し森の外の世界という物を知るべきだった。

だが、精霊とそれが守る森の中に生きてきた俺にはあまりにも冷たく。無機質な興味と悪意、それのみが注がれてなお真っ直ぐに生きるこの幼児、尋常な精神ではないが、むしろよくぞここまで生きてきた物だと感心する。魔法使いの家に生まれた無属性、それがどんな意味を持つのかは流石に無知な俺も知っている。それがこの国においてどれだけ残酷な事かも知っている。

「よいしょっ!」

それ故だろうか!幼子ながら彼の肉体強化は常軌を逸している。聞けばドルイド百人分ほどの魔力を持つというが、むしろその恵みがなければ精霊でも彼を助けることはできないだろう。

いや、それがなければ彼が今まで生きていることすらあり得ないか…


回転しながら空を割くように飛んだ石は少々風精霊にからかわれた後、この辺りでは珍しくないチッキの頭部に命中し破裂させた。チッキは警戒心が弱く、自然界で最も重要な捕食される役を担う生き物だが、人が狩猟しようと思えば慣れていれば難しくないという程度で、少なくとも人間の幼子が捕まえることができるような獲物ではない、獲物を拾い上げ手に取ると突然幼子の動きが緩慢になった。

「いやー、やっぱ難しいなぁ」

いや、どうやら俺がぼうっとしている間にこの幼子何かやらかしたようだ。赤く腫れ上がった腕はおそらく骨折だろうか?そのまま気を失うようにして倒れそうなところをどうにか支えたが…発熱している。魔法使いではないためわからないが、どうやら魔力も相当損耗しているようだ。いつも纏っている気迫が妙に薄く感じる。

「フゴー!」

「邪魔だっ!」

フォレストボアの頭蓋を軽く踏み砕き、俺は跳躍した。勿論、肉の回収は怠っていない、デイダラと打ち合わせしていた通り草笛を吹き場所を伝えた。

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