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無属性という魔力の考察 下


突然だが、この世界は前世とは違う生物や植生、魔力や魔法というものを前提とした生態系が存在する。なかなか興味深い物が多いがその中で夏になるとよく出てくる害獣がいる。

五放射相称動物、いわゆるウニやヒトデの仲間、それが陸上を闊歩していると言えばいいんだろうか?

「リクヒトデ、五つある触手を人の手になぞらえた呼び名ですね、海にいるヒトデと違い地を這うのでは無くクルクルと回転しながら獲物を見定め、口で食いついてきます。まぁ、それでも普段は土の中の栄養や虫を食べているか他の動物に食いついています。」

「ふむ、それで?」

「だいたいが森に住んでおり、森の中のコテージなどを襲うこともあるどう猛な生物です。雨が降った後に移動を開始し当たったものがなんであれとりあえず噛み付きます。」

「なるほど…それがこの惨状を生み出している…ってことでオーケー?」

「エグザクトリー、正解です。…因みに人も食べるそうですよ?」

「最悪な情報をどうもありがとう!クソッタレ!」

斧を手に外を見れば周囲を埋める星型の暴威は今もその勢いを増し、ちょっとは順調だった生活は久方ぶりのファンタジーに粉砕されかけているのだった。



地理的にここフレイアール邸は魔法国家エレメントのうち中心部、皮肉にも待機中の属性魔力としては無属性が最も多い場所であり、それが故に五つある五色の名家も大気や環境によって平等に魔法を減衰させられる。中立地帯である。

各家が持つ領地はそれぞれの属性にあった風土や魔力気候を備え、そこでならそれぞれの家は最強の存在だが、反対属性の気候、もしくは純粋な無属性などの環境下ではその力が及ぼす影響は大きく減衰する。

もしも、フレイアール家の領地である火山帯でガラフレベルの魔法使いが魔力を放出すれば反対属性の水を持つアナスタシアは一たまりもないし、逆もまた然り、超級の魔法使いが自らのグラウンドで放つ魔法はもはや災害以外の何者でもない、そして王家のある場所、つまり首都であり王都をなにがしかの属性に偏った場所に置けば大惨事待った無しである。

そういう点で魔法らしい魔法が無く。放出したところで特に何にもならない無属性の土地は防衛的な意味でも、さまざまな魔法技術の開発や王侯貴族による会議の場としてはふさわしかった。


まぁ、それでも人間少しでも楽な所にいたいわけだ。実際、魔力の抑圧をされるというのはなかなか息苦しい物だ。このあいだの夫婦喧嘩で一時的に暴力的な水と炎の魔力がこの辺り一帯を覆った時、言いようもない気持ち悪さや息苦しさを感じたものだ。人はコレを『魔力圧』と呼ぶ。

魔力が多いのでそれくらいで済んでいたが、酷い時はそのまま絶命することもあるような魔力の抑圧それを少しでも和らげようとこのフレイアール邸は水と山に恵まれた自然豊かな場所にあり、山からは微量ながら火属性の魔力が、川辺からは言わずもがな水の魔力が溢れ、この広大な敷地を探せば秘湯やら古代の遺跡もあるという噂だ。


それで、だ。

実はこのリクヒトデ、属性の偏った場所では増えにくい、食物と彼らの好みの問題だ。属性の偏った魔力を食べたリクヒトデは別系統に進化する代わりに適応する物が少なくしかも一度その属性の魔力に適応して仕舞えば、他の魔力を食べることができなくなる。一方、無属性魔力を食べるリクヒトデはなんの特殊性も持たないが圧倒的な生殖力を持ち、無属性の魔力ならば彼らの中に拒絶反応を出すものもいないのだ。

そしてここは無属性魔力の豊富で、水属性の魔力で湿度が安定し、火属性の魔力で気温が安定している。

安定した気候風土と大量の餌、そして生命の根源的なものを呼び起こす危機感、それらが合わさった結果起こったのが…

「シューティングスター、なだれ星ですね、大陸では最も簡単に魔石を得ることのできる機会ですが…」

「この量に対して戦力がなさすぎるんだけど?」

木造だが。石造りの土台と日々俺の魔力を使った強化を重ねている家は激しい衝突音はすれど崩れる様子はない、だが…

「明らかに俺のこと狙ってない?」

「ええ、ついでに申しますと他の魔力食性を持つ獣や魔獣なども属性を持たない場合はもれなく無属性の魔力を好みます。」

コレは酷い、なんなんだよ魔力食って、濾過食生物かよ、海とか水とかを濾過しとけよ!

「ちなみに生物学的な精霊は非実体目、魔力結合科、精霊網、精霊属、精霊です。」

「なんで今その話になった!?」

いや、よく見ると明らかにジェシカさんの様子がおかしい、なんか…ゴキブリを見たときの女子みたいになってるっていうか…あ、害獣だからゴキブリみたいなものか?

「はい、そうですね、実を言うと…私、ヒトデ目の生物が大の苦手でして形や大きさはいいんですがあの体の中心についているおぞましい口を見るととととととと…」

「あ、だめだコレ、完全ポンコツモードだ。」

最悪の場合彼女には土壁を発生させてもらいたかったのだが、もはやそんな精神的余裕はないようだ。

そんなこんなで扉や換気用の窓などに板を貼り付けて籠城の準備を整えていく。が…手が足りない、この木造家屋の大きさが仇となった。一階の防備は完成したが、その頃にはときすでにおすし、もとい遅し、念のためにかなり魔力を込めて魔力障壁を発動させていたが、俺は上から高速回転しながら飛んでくるヒトデが視界の端に捉えられたが、それだけ、

「ヘァ!」

「ッグゥ!?」

かなりアウトな掛け声とともに飛来したスターミ…もといリクヒトデ、上を見れば二階の寝室ではなく廊下についた小窓や煙突から入り込んできたようだ。俺は魔力障壁の上から薄く皮膚を裂いてきたリクヒトデの脅威を認める。ちょっと正直ヒトデだって思って舐めてました。

因みに、ジェシカさんは間近にきたヒトデに面食らい気絶した。とりあえず彼女の前に立ち、斧とトンカチとポッケに突っ込んだ釘を確認して出来るだけ短く斧を持って構え…挑発!

「…かかってこいヤァ!」

「ヘァ!」「「「ヘァァァァ!!」」」

…なんなんだろうねぇ、コレ

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