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スペキャるおじさん、ドS覚醒


サンライズ、つまり夜明けである。

俺は陽光をもろに浴びつつ汚れひとつついていない体を一応はたいて伸びをした。

「うーん、殲滅力も攻撃力も格段に上がったが…俺自身に武術があんまり染み込んでないし身体の成長によって色々変わるからなぁ。まじでしばらくは魔法特化でいくかぁ?」

幼児が屍の山に立ち呑気なことを宣う。あからさまに異常事態だし、ちょっくら狩りをと思った同業者が宇宙の真理を知った猫みたいな顔をしている。まぁ、そりゃあそうだろう。なにせそのガキに群がってきた魔物が、暴走精霊が、ありとあらゆる生命がその身に触れる事も能わず文字通り捻り殺されているのだ。

「…ん、ダメだな。このキリングフィールド、範囲は広げられるしある程度制御できるとはいえほぼ自動的に範囲内の動く物の運動エネルギーやらその他諸々をめちゃくちゃにしてるだけだし、あ、おじさんこっち来ないでねそこから一歩でもこっちにくると…」


死ぬから


「ほ…ほわぁ……」

オジサンと呼ばれたのは少しムカついたが、それよりもわかりやすく目の前を通りすがった魔物が滅茶苦茶な動きをし始め突如絶命したのを目撃し汚い水溜りを生み出しながら崩れ落ちる。

「っく!おあ!?ば…!バケモンだっ…!」

そうとしか言えなかった。永くこの家業をして、幾人もの死に様を見てきた冒険者として、ここまでおぞましい死を今まで見たことはなかった。

なによりもこれを生み出したのが年端も行かぬ童であると言うのがより一層の恐怖を煽った。みれば半透明の円状に大気が、草木が、光が、生き物が、何もかもがあるべきでない場所にねじ曲がっている。俺はその中心からまっすぐとこちらを見るその瞳に恐怖し、畏怖し…そこで意識は途絶えた。



おっさんがどさりと倒れる。全くもう!人の顔を見て失神するとは何事か!…いや、まぁね?

「…やっぱダメだね派手なエフェクトとか魔法陣も無しに中からミンチになる姿を見て正気でいられる人、あんまりいないだろうし。」

ま、派手なエフェクトがあっても目の前で当然のように生き物がぐちゃぐちゃになったら大抵の人は気分が悪くなるし、失敗だったな。…まぁ、ぶっちゃけこの強制ゲッダン☆魔法はこう見えて制御が辛い、範囲が広いとはいえない、俺を中心にしか発動できないetc…と問題が山積みなので最初からボツネタだったんだが、昨日の夜思い立ってから徹夜で組み上げたのだ。使ってみたくもなるだろう。

…だがあらゆる受動的な動きやエネルギーに対して常に逆方向へ変換する式を編めたのは大きな収穫だ。もう少し方向性をつけれる様になれば某白髪ロリコンモヤシの真似も夢ではない。ニヤつきながら拡散していた竜鎧をスカーフ型に収束させる。

実はこれも昨日思いついた。というかグラジオ君はどうしていつも手に入れた新しいおもちゃの実験をしないんですかね…そんなんだからキッカケはあのお節介な古代種の所為とはいえ自分で地雷踏み抜いて思考がループするとかいうアホアホpcみたいな状態になるんだよなぁ(呆れ)。知識、好奇心、興味、研究、一見これらに興味があるかの様に見えて実際はそれをなぞることも出来ないなど呆れてしまう。

いや、まぁそれは一見すると俺であるかの様に振る舞うための型だからしょうがないといえばそうなんだけどね…


程よい脳の疲れから荒野に寝転がり演算範囲確定のために酷使していた眼を瞑り思考を切り替える。今回の実験結果の整理だ。

現在確認したところ俺の竜鎧は凡そ俺の想像できる範囲の延性、展性を持ち、今の様に粉状になって散布する様なこともできる。あともう一個面白い機能を見つけたが…これは後で彼女らを驚かせる用に取っておく。因みに広げ過ぎると強度が落ち今さっきの範囲、つまり半径50メートルの球状以上に広げようとすると存在が保てなくなるらしい、またそれらの機能の使用には少なくない魔力を消費するのはわかっていたが過剰に伸ばしたり今のように広げたりするのはそれよりも多くのコストを支払い、さらに維持にも魔力がかかる様だ。この原則は鎧の形態でも斧の形態でも適用されるが、武具の状態での質量を含むあらゆるパラメータの上下の場合はもう少し自由が効き斧の方は一瞬だけだが二階建ての建物ほどの大きさとそれ以上の質量を顕現できる。

だが問題はその内側、竜の体を鍛えて纏めた生体兵器であり竜という存在の力とも言うべきそれは今の俺には手に余る。

『…!!』

「っつうー痛い痛い、わざわざ共鳴するように叫ぶなよぉ」

少なくとも魔石に魂を縛られていようが問題なくこちらの精神を汚染しようとしてくる生き汚さは健在だ。それを利用して竜そのものへの変身すら可能だろうが、今の俺がそれをすれば戻れなくなる。運が良ければ3割くらい人に戻れるかも知れないが、部の悪い賭けで有ることに変わりはないだろう。というかそれは変身というよりは侵食に他ならないし、自分が自分でいられる最低条件すら犯されるようで気分が悪い、それが嫌で魔導書使ってねぇんだからこれも封印だ。


とてもざっくりというなら『さすが狂人の作る武器はどうかしてるぜ!(いい意味で)』と、言わんばかりの代物だ。ま、ここまでのトンデモ性能になるのは俺自身が魔人であり、魔石の中にこの鎧に使われた竜の魂を飼っている所為で、実際の所は普通の、一般的な竜鎧より2段くらい上の性能の物だったのだろう。

慣れるために斧になる分の質量と鎧になる分の質量の把握や斧(剣)とか鎧(盾)みたいなズルが出来るかの確認を軽くして宿屋へと帰ることにした。

因みに魔力を食うがやれる事はやれるっぽい、ほんと何でもできんな、コレ。物がしまえないのがちょっと不便というか、そこだけ常識的な性能なのはナニカ作為を感じるけどな!



side out



「んう…」

朝日が顔に当たり私が目を覚ました瞬間には既に彼は部屋を出ていたようで隣のベッドで元貴族令嬢とは思えない寝相を披露する元吸血鬼以外人気は感じなかった。

「くぅー…ハァー」

一つ伸びをすると肉体の隅々まで魔力が漲り、立つ頃には既に魔力の循環が完璧に起動する。私はそこで少し驚き、同時にいつも通りだとも感じた。

肉体の隅々まで巡る魔力が通る路は狭く。自らが知る中で最も弱い時期のそれよりもまた一段と閉じられている。

「ッフフフ…アハハハハハ!」

これは喜び、また自分が強くなれると、あの頃を、ただただ強く、偉く、富と名声と権力、私を虐げてきた全てを奪い去らんと考えていた『自分』が戻ってきた事の

「っはぁ!」

乱暴に足を叩きつける。怒りだ。物や生命を悪戯に壊し、奪い、弄ぶだけでは発散されない、また、また虐げられ奪われた自分とそれを為した相手への深く。高く。抉るような痛みと吐き気を催すほどの複雑にして奇怪極まる怒りを…ひとまず収める。

これだけ大声で笑い、あまつさえ床板が削れ飛ぶような足踏みをしたにもかかわらず世界はまるで静止したかのように静かで、固定されている。私は着慣れてしまった給仕の服を着込みながら床を直し、椅子に座りながら簡単な水流操作によって入れた紅茶を飲む。

「はぁ…いっそ、眠っていたままならよかったんですけどね。」

耐え難い怒りや屈辱というのは忘れられない物だが、しかして幸福や安全と違いある程度の限度があり、そしていつか慣れてしまう。復讐に狂うとはよく言った物でああした感情が長続きするのは慣れや忘却という人間的な機能の喪失、狂いが原因だ。

良くも悪くも元に戻った今の私は私を元に戻した彼と同じだ。

必要とあれば抑えられる。不必要ならば発散できる。凪のように平静で、薪のように統治され、宝石細工のように整っている。不気味なほどに非人間で気色が悪いほどに人間的、ある種グラジオラスとそのメイドであったときの方が感情豊かですらあった。

しかし思い出させられたならば仕方がない、やはり腹は立っているのだ。

「ただいまー」

「おかえりなさいませ、旦那様。」

「…お、おう…」

とりあえず、昨日の辱めの仕返しを、やられたならば何倍にでもして幾らでもやり返す。それが『ジェシカ・A・フラウロス・ランドウォーカー』元魔法王国影騎士団長にして無能なシングルカラー共や純血の貴種を憎むはじめての二属性戦略級魔法士である『私』の流儀なのだから。




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