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ただの先触れ


……

「ふむ、つまり彼女は監査に成功したが結局この戦に巻き込まれたという訳だね。」

涼やかに茶をすする少女にも童女にも見える成人女性はさして驚かずに俺の報告を聞き終えた。

「それで、北部を治めていたごく最近金で貴族位を買った商人は傭兵団を雇い、裏ルートで資金を横流し、王国との接触域である東部の元四大貴族を焚きつけ、あまつさえ大陸大戦において『彼女』に煮湯を飲まされた老戦士を貴族位を買う以前から支援し続けていたわけだ。それであと数週間しないうちにこの国は四大貴族が出来るより前の混沌より酷い戦火に呑まれ、それはそのうちここのあたりまでくるわけか。」

どこも見ていないような目でつらつらと情報を垂れ流しガジガジと茶に合わなそうな甘い果実をかじり咀嚼すると彼女は結論する。

「わかった。まぁ相手が相当の策士で残念ながら間抜けであり、数日前に『吸血鬼』が鏖殺されたのも加味すれば始まって二週間か、傭兵の動きを追えばクリスは必ず居るはずだからあと1日で彼女はここに来る。…ふむ…キミィ寝すぎだよぉ〜」

もはや何をどうしてその結論に至ったのか、そもそも今の断片的すぎる情報がどう整理されたのかあまり理解できないが…

「面目ない、吹っ飛ばされる前に斬撃が頸椎に達していてね威力と魔力制御も相まって起きるのに時間がかかった。申し訳ない。」

「いやぁ、いいよ。キミがこの街にきてから起きるまでを演算したけどまぁだいたいピッタリだったから。それにキミがくれた情報は今もなお近づけないあの街の現状を理解するには充分だったし、彼女の口から聞くよりも早かったんだから及第点さ。」

話を聞くまえに掛けた眼鏡を外し早速書類に何かを書き留めている彼女は続ける。

「ありがとう。キミの情報が生んだ1日と11時間程度の猶予は有効に使わせてもらう。お金は金庫に、装備も郵送されたのをもう鍛冶屋に出してある。そろそろできる頃だから通りをまっすぐ行った工房に取りに行くといいよ。」

またジェシカの顔が歪む。恐らく彼女がタイムの街から郵送を依頼した俺と彼女の装備品と素材だったのだろう。まるで当たり前のようにこちらの動きを先読みして行われた一連の行為に驚きはあるが、それ以上にこちらへの許可や伺いが無いのが腹立たしいのだろう。

「ああ、ダフネくんの冒険者証は流石に出来なかったよ、試験なしは不味いからねいくらほぼ確実に取れるからってそう言うのはできないし、多分必要ないでしょ、んじゃまた二日後にね。」

彼女がそう言うとこちらが何か言う前に紙を押しつけ、控えていた職員に部屋から追い出されてしまった。

「一体なんなんですかね、あの舐めた態度はぁ…」

「抑えて、ジェシカさん、ステイ!」

「グラジオ、それ、犬も止まらない。」

ジェシカさんは意外と短気で、ちょっと過激な面がある。それが冒険者としての嗜みだったのかそもそも学園という場所がそうさせたのか…できれば本人の気質でないことを願うばかりだが、渦巻く魔力と怒りからは少なくない彼女の気質がにじみ出ていた。


「それで、さっきまでの話がここにきた経緯そのものって事でいいんですね?」

「あぁ、あのギルドマスターと話してると勘違いしてしまいそうだが…アレ、大丈夫だよな俺の情報って機密の塊だよな…?」

「えぇ、まぁ、今の今まで戦争の噂なんてありませんでしたしあの街の情報はどういうわけか封鎖されていましたからね、あのクソ生意気で横暴なマスターの前以外で話していればどうなっていたかわかりません。」

よかった、とりあえず納得して頂けたようだ。ダフネもなんだかんだ突然自殺しようとしたりはしないし落ち着いているように見える。

…ようやく肩の荷が降りた気分だ。そうなると気になるのはこの一か月彼女たちがどう過ごしていたかだろう。

「それについてはおいおいで良いでしょう。今は忌々しいですがあのマスターの計らいで強化に出されている装備をとりにいきましょう。それに、ダフネさんも探検の一つや二つはあったほうがいいでしょうね。」

「それで私が死のうとするのも分かってて言ってる?」

「ふふ、残念ですが貴方の腕では自分の再生能力を超えられ無いですからね。」

「…ッチ、胸と魔法以外取り柄のない牛女に言われるまでもない。」

おかしいナァー仲良くなっているように見えてその実遠慮がないギスギス空間が展開されているぞー?というか2人とも上流階級出身の筈なのに人前でキレ散らかしたり舌打ちしたり柄が悪いなぁ…って言う程でもないか。彼女らのそれはあくまで見せているだけだ。冒険者であり、俺やダフネという子供を抱えているため舐められないようにそう見せているのだろう。

「なんですかねぇ、実は私と同じくらいの年齢なのに幼女気取ってるだけあって皮肉も幼稚ですねー?」

「反応するって言う事は、貴女が馬鹿にしてる相手と同レベルなのか自覚があるかのどっちかって事。」

…うん、きっとそう。そう言うことにしておこう。

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