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二日目!?


決めた。決心した。決断した。決意した。


そう思って既に五度目、俺はいまだに攻めきれずにいた。

「ぐぅ!」

「ハハハハハハ!!」

凶笑を撒き散らしながら獣のように攻め立ててくる彼女を既に4回も戦闘不能に追い込んだと言うのにいまだに暴走は終わらず。俺はこの檻の中に囚われていた。


問題は複数ある。そのうちの一つが俺の持つあらゆる技能をどう使っても彼女の動きを止められないと言うことだ。

そもそも最初の一回サイコロ状にできたのは十分に時間があったからそして何より体の負傷を厭わない捨て身の攻撃であったからだ。今の状態であれほどの拘束時間を生み出せる技を打つことは不可能に近い。

体に刻まれる無数の傷は魔力によって癒されるが集中力はゴリゴリと削り取られていく。

そもそも武技宣誓もこの間森で漸く出来るようになった新技法、効力は絶大だが戦いで使うにはまだ未熟だ。惜しむらくはこの肉体、せめてあと2歳成長できていれば、というか普通に12歳くらいまで家でぼんやりできていれば武技宣誓もだが身体の完成に沿って使える技や放てる攻撃の威力向上が見込めた。


つまるところ基礎、技能とか努力とかそう言うのではない、加齢による成長が足りていないのだ。

…っと。そんなつまらない事で躓いていられない。足りない威力を補う技術やズルを色々と思いついたから出てきたんだ。既に物理的な破壊では止められないのは分かっている。

ならば次は魔力で攻めるしかあるまい。だが…


「クハハハ!ハハハハ!」

「なんでテメェ出て来てんだ!クソ!」

「仕方あるまい、我が主人の命だ。従う他あるまい?」

「ガアアアアァァア!!」


アルカード、そう名乗った男によく似た痩身の大男がそこにいた。俺の身の丈を越すような大剣を振りかざし暴れ狂う吸血鬼モドキより吸血鬼らしい多彩な攻撃と魔法で翻弄して来やがる。


「まぁ、我が主人に呼び出された挙句強制命令に逆らえないが私が戦っている間は彼女は動かない、さすがの私も本気を出すことはないぞ?」

「ッケ、これの中身がさっきのナヨっとした奴だろ?ちょっと性格変わりすぎじゃないかねぇ!」


剣と斧が交錯する。

恐らく吸血鬼としての能力が高まっているが故の変化、ああ良いなくそ!俺だって竜の血とか色々浴びて魂かなんかよくわかんないものも喰らってんだぞ?それなのにコンマ数ミリ伸びたのが関の山とか舐めてんじゃねぇ!

タッパがデカくなったのは驚異だし、吸血鬼としての異能は厄介極まりない。そもそも理知的に理詰めで戦略を立ててくるため獣相手より気を使う。しかも最悪なことに復活する。ある程度のクールタイムはあるようだがぶっ殺すのも手間なのに復活して来やがるし、あぁ…せめてもう一手、変化が欲しい。


白々しい?馬鹿をいえ、俺の手札は一個一個がただの初見殺し、一撃にて殺しきれなければ意味はなく。まるで今さっき思いついたかのように繰り出すのが最善にして最悪。




故に中るだろう。


「ほいっ!」

「クハッ!」


斧を左手に持ち替える。右手ほど自由自在ではないが普通に斧を振り回すなりなんなりする分には何ら支障はない。そして右手を真っ直ぐに突き出し剣ごとアルカードの胸部に風穴を開ける。

「ッコ!?ア…」

「目隠しご苦労!」

同一魔力路を流れる二つの魔力波長の共振によって生まれる爆発的な力。それは単純に肉体の結合を解くだけでない、物体の枠組みを崩壊させるに足る攻撃となる。

故にそれを防ぐために突き出した腕や、魔法や、異能はその一切を粉砕せしめる。

「がぁsくぁあああああ!」

「っふは!」

この戦い、この戦闘で漸く聴けた悲鳴…いや、別に悲鳴が好きとかそういうサイコな性癖がある訳じゃない。今まであまりに手応えなく。痛がるそぶりはあれどそれがダメージになったようには見え無かったしなんなら途中から痛がるそぶりをフェイクにして来たりと散々だったのだ。


だからこの笑みは、安堵の笑みだ。

「くお!あ?がああああ!?」

塵すら残らず粉砕した両腕が戻ることはない、ならばどうなる?

「吸血鬼の再生能力に癒せない傷はない、だがそれは材料があればの話、どっかの化け物どものように幾多の替えや無から有を生み出すようなことができない限り…」

あるもので補うしかない。

メキメキと音を立てて二十歳かそこらの美女から中学生ほどの美少女に縮み、しかしながら未だに邪に染まった敵意と悪意籠りまくりな目をしているが…

「ガァ!!」

放たれて来た魔法は障壁によって片手間に魔力を込めるだけで弾ける程度に、先ほどまで目で追えるかどうかと言う速さを誇っていたあらゆる動作は緩慢になっていた。


既に右腕の励起はおさまっている。残念ながら出力を最大にした状態は魔力消費もある上に俺自身の身すら削るのだ。アルカードと彼女の腕を消しとばした時点で俺も徐々に削られ始めていた。崩壊は一度始まれば雪崩式に加速する。というかそもそも最大出力なんて物は人間程度の強度の物体を崩壊させるには過剰なのだ。


ドラゴンスレイヤー症候群のせいか魔力による再生が崩壊と拮抗している間に突っ込んできた美少女に向けて左で撃ち落す。

「でい!」

「ッが!?」

動きが止まる。吹き出した血の一部が体に戻り再生を始めるがその動きは緩慢で肉体の再生は非常にゆっくりだ。…今更だがどうにもキナ臭い、今日は確か満月だったし今は時間的には真夜中だがそれだけで吸血鬼としての力が此処まで強化される物なのだろうか?


…何かを見落としている?


淀んだ魔力。吸血鬼殺しの魔術陣。街の中心。月。少女…なんだ。俺は何を見落としている?


倒れ伏した少女を抱え上げた時、俺は今の今まで飽和していたその臭気と音に気がつかされた。

「鉄の匂い?…っ!まさか!」

『そう、そのまさかだ鼠ども。』

一斉に励起する魔力、投げ込まれる人型。

「ジェシカさん!?」

服装がかなり際どくなっているが息はある。かろうじて意識があるようでこちらを見て微笑む。しかし魔力も十分にあるようだが肝心の呼吸が止まりかけだ。恐らくここの魔力が強すぎるためにかなり危険な魔力酔いが発生しているのだろう。少女共々抱え込んで逃走を計るが魔法の発動音が聞こえたと同時に身体が軋むような重さを叩きつけられる。

「っぐ!?」

『素晴らしい冒険者だ。あのグズどもや村人崩れなど話にならんな…そんな貴重な人材をここですり潰すのはどれだけ楽しいだろうなぁ!!』

「お…まえは!?」

アルベルトでは無い、誰だ。若い男?女性では無いが線はそこまで太く無い。

『では始めよう。神話再現は此処に成る!これで私は!私はぁ!』

狂気、執着、妄執、霞む視界、飛びそうな意識を繋ぎ止め魔力障壁で重圧と魔力圧に耐えるが、励起状態に移行する事で赤く、紅く染まっていく輝いていく景色をどうすることもできず。彼女と殴り合っている間に崩壊し始めていた地面から赤い液体が止めどなく湧き出ると魔術を組み上げていく。



『『栄光』『不死』『不滅』『歓楽』『永遠』』


ああ…そうか…


『『太陽を厭う神』『月桂樹』』


此処は街の中心であり、俺は気づかなかったが恐らく外周から中心に向かって緩やかな盆地になっていた。


『『発動せよ』『収束せよ』』


いや、そうでなくても魔力が吹き溜まっている時点でただの吸血鬼殺しの陣でないのは分かっていたはずだ。まるで、態とそこへ力が集中するかのようなつくりはそこかしこで観られたはずだ。


『クハハハ!クハ!クゥハハハハハァ!これであの女を、忌々しい小人を、大戦の仇を討てる!『我ガ真名セバスの名の下に、冬の戒めを解き放つ』!』


変化は劇的だった。

抱える少女が少女らしいかたちへ縮んでいき、苦悶の表情とともに彼女を構成する何かがゴッソリと抜け落ち白髪が黒く、赤目が青く成ると赫い光が人影へと収束する。

そして人体が砕けるような、内側から新たな何かになっていくのを予感させる君の悪い音が響き呻きと叫びが場を満たす。

そしてあらゆる重圧から解放されたと思うと柱や壁、床が砕け俺は2人の重みを感じながら、その柔らかさや暖かさなど感じる暇などないほどに急激に加速する速度と変化しかない状況に目を白黒させながら落ちた。

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