間話1
深く不快な淀み切った魔力の中、そんな陰鬱さがうつったかため息が溢れる。
「反省だな。」
斧を担いだ少年は自分の見通しの甘さと驕りを感じざる得なかった。
「俺が騒ぎを起こせばって…なにさまなんだろうねぇ!俺は!」
少年は少年にまつわる厄介ごとを利用して周囲の注目を一点に集中させ見えない誰かの手助けをしようと画策した。だが結果的にそれは失敗に終わっている。
「そもそも侵入されない様に設計されていて、態々兵や傭兵を並べている中に隠密が得意なやつを並べたりしないよなぁ、俺がもしここの領主なら最低限はおくかもしれないがやるべきは侵攻先の情勢やら切り崩し工作だよな。だからそもそもの話ここに転がり込んで最初の衛兵達とやり合わなかった時点でもう俺の目論見以下の何かは失敗だったんだ。」
人気の無さは人によっては毒となる。周りに誰もいないと言うのは孤独が得意では無い人間にとっては素晴らしく恐ろしい状態なのだ。
一人暮らしの大学生など孤独に耐えかね独り言を呟き始め止まらなくなる。
「しかも想定が甘すぎた。装備といえば高級品だが資本があり物にとっては揃えるのは苦じゃ無い。そして俺が参考にしてきた冒険者というのは武器防具の性能ではなくて個々人の技、装備ではなく自らを高めてきた結果の強者。兵士や騎士という点では画一性、一騎当千の戦士がいる事に悪い事はないがそもそも全員を一様に強くしていると言うのを想像しきれなかった。」
最も最近に出会った敵は流れの傭兵らしき男だが、奴の装備は必要最低限そう考えると次会うときは資本というバックアップを十全に受けている筈だ。鋼鉄製の斧は強いがそれ以上の金属や魔法、遺構や遺跡などから算出したアーティファクトなどごまんとある。兵士の着込んでいた装備も鋼鉄となんらかの魔法金属系の合金に高級な付与を施した資本の暴力。冒険者でありこの世界をいまだ知らない少年には縁遠かった。
「ていうかまじあのロリッ娘なんていう重大情報を伏せてやがった。ウィンター家と聞いて最初に思い浮かばなかった俺も悪いがそういえば共和国における四大貴族の一家じゃねぇか。なんでこんな変な場所にいるんだよ。しかも『貴種の血』とか…色々言うことあっただるぉぉぉおお!?」
なお傍目に見れば彼は百面相しながらぶつぶつと呟き時たま吹き出す『電車に乗って漫画読んでる系インキャ』めいている。流石のメイドも今の彼を見れば少しの失望と共感をするだろう。
迷路の様な空間が続く中彼の足は止まらない、分岐路は多少あれど基本的にそれは飾りの様なもので道を奥へと進めば自ずと進める様な簡易なものでしかなかった。だが、思考に沈む彼がそれに気がついたところでそれに着いて考える事はなかった。
中心へ行くにつれ広大な軍事基地の様であった外縁とは異なった作りを見せるそれがどういう意味を持つのか、樽に詰め込まれていた彼に思考材料となるべき違和感が足りていなかった。
それがどうなるのかはわからない。だが確実に言えるのは大概の場合探索の足りていない探索者の末路はロクでも無いと言うことだけだろう。




