表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/129

一日目の三手目


警戒しながら僅かながらに灯る明かりを頼りに歩く。既に入り口を塞いだので意味がないかもしれないが一応道を記憶しつつの探索だ。

出入り口があった場所から地下へのスロープを下っていくと別の道との接続点が見えた。道幅も大きく。僅かに鎧や武器の音がする。慎重に覗き込んでみるが近くには居ないようだ。右腕を起動し魔力を調律、自身の魔力を合わせると酷い目に遭うが障壁表面の波長だけを大気と同化させれば障壁の効力は落ちるが下手っぴ隠形よりもマシな目眩しになる。

「とりあえず、音と振動でかなり目立ってるし雇われって言ってたんだから連絡手段の一つや二つあるはず。」

壁に左手を当てながら、全力で此の場を離れよう。



少しの間上の爆発音やそれによって起こる地下道の揺れに乗じて走っていると鎧を着て走る独特の音と叫び声のような指示が響く。俺は少し迷って適当な樽を開け中が空のものに体をねじ込み蓋を閉めた。

「っく!もう敵襲か!」

「槍使いからの通信だ。入り口が突破されたらしい、侵入者は昨晩此の街に来た子供の冒険者だ!探せ!」

「「「ハッ!」」」

盗み聞けたのはそれくらいだが、俺の存在はきちんと伝えられているらしい。しかも練度が某潜入ゲームのような無能兵士ではない、おそらく此の地下にも詰所や巡回兵がおり異変を感知してすぐ動き出したのだろう。しかも指示を受け終えた瞬間に速度が目に見えた上がったところを見ると魔力循環や鎧への付与魔術など技能や装備は一級品と見ていいだろう。

…ちょっとジェシカさんに大見得を切りすぎたかも知れない、実際昨日戦ったような兵士は不意打ちを受けたにも関わらず秩序だって集中砲火してきたり連携をしていた。それが完璧に真正面からぶつかる事になれば、相手は昨日の比にならない強固な連携を見せてくるだろう。確実に気配が遠かったのを確認して樽から周囲を見る。ネズミの様な小型の生き物は多少いるが人間大の呼吸音も動きも無い、そう思って出ようとするといきなり地面が揺れた。

(うおっ!?)

とっさに口を抑える。

「よいせっと…」

人間だと!?いや、違う。こいつは…「ちょっと黙ってろよルーキー、お前のおかげでというのも癪だが此の軍事基地内に入れたのは間違いなくお前の功績だ。」

至近距離にいて、しかも樽を持ち上げられて漸く分かるほどに完璧な隠形、人間とはここまで見事に生き物として当たり前の機能や気配を消し去れるのかと慄く。樽の隙間から見えるその人物はここの領では一般的な服装に身を包みつつ。どこが高貴さを感じさせる振る舞いをする。どうやらここの物資運搬係、つまりは騎士や衛士見習いに化けている様だ。

だが…

「どうしてお前さんを運んでいるか、分かるか?」

俺は首を振る。そして見えないのに気がつき慌てて声を出そうとするが樽を持ち直す為に一度浮かせる風を装って俺の口を閉じさせる。

「至近まで来れば壁の先でも箱の中でも動作程度読み取れる。…いいか、一度しか説明できないからよく聞け。俺らのベース、あのジャンク屋がクソ強いジジイに襲撃された。こっからの2日間補給も、潜伏も自分持ちだ。」

その言葉に焦る。が、すぐに落ち着く。襲撃されたという事は一大事だが少なくとも彼女は生きているだろう。

「まぁ、そうだな、遺構狩りはピンピンしてるよ。正直言ってあの女ならばこれくらいの出来事はわかっていたんじゃないかと思う。勿論、お前さんが大立ち回りするのもな。」

他者がいないのを感知し、喋りながら迷いなく進む男の様子を見るとこの迷宮のような地下の探索を命じた彼女の思惑はわからなくなるばかりだ。あまりにも迷いがないため一瞬疑ったが、初手で殺しにこなかった。こういうタイプは殺せるときには殺すだろう。

ゆっくりと、しかしどこかもたつきながら樽を抱えた男という怪しすぎる出立の男は俺をどこかに運んでいった。



〜〜ジェシカ〜〜



時は少し遡り、グラジオラスが槍使いをやり過ごすよりも前の出来事。


投げつけられた資料を見ながら人気のない小屋で装備を一式装備した彼女は触媒の本数を軽く確認し魔力を流して点検していた。

「全く。グラジオ様は相変わらず無茶をしますね…」

ゴキゴキと首を鳴らしながら笑みを浮かべる様子からは言葉ほどの怒気は感じられない。だが、暗殺者とも魔法使いともつかない格好の美女が獰猛な笑みを浮かべている様は言いようも無い気配を放っていた。

「さて、では仕事を始めましょう。」

最小限の魔力で魔導水銀を起動した彼女は長槍を生み出し天井裏と扉を貫く。

「おあ!?」

「っ…!?」

崩れた天井から落ちた水気の多い肉塊と突き破った扉の先にある頭のなくなった人型、どちらも明らかに武装しており、そしてやはり身につけている武具は一流のもの。

自分の主人が暴れた甲斐はさほど無さそうだと思いながら彼女は建物の隙間に落ちるように、微かな魔力の痕跡と不自然に塞がれた床を残して消えた。


「っふん!」

「おごっ!?」

落下して早々に彼女の下にいた人間は不幸だった。人間とは真上の外敵に強くできていない、のしかかってきた重みを一瞬感じると同時かそれとも感じるよりも先にか頭部を支えるべき脊椎がその意味を成さなくなる鈍い音とともに男の身体が膝から順に崩れた。

だが、鎧姿の男が1人倒れてもさほど意味はない。

「敵だ!」

「総員戦闘態勢!」

「「「はっ!」」」

「…あぁ〜、もう、なんなんですかね。キチンと気配を読んで降りて来たのに!」

水銀の入った管を叩き割るとそれを空中に浮かせ待機させる。

「ふふっ、なんちゃって?」

騎士が構えるより早く発動した土魔法が彼らを貫く…事はなく。騎士の1人が背後から刺殺されると同時に水銀製の自動人形がその身体を変形させ、2人の首を刈り取った。

「ゴーレム!?」

「いや、違う。土魔法の応用だ。落ち着いて対処しろ。相手は2人ではなく2人分の動きをする1人だ。」

盾と自らの魔法で奇襲を躱し、殺しきったと思った三人目を救い。しかもカラクリを見抜いてきた壮年の騎士の眼力に若干舌をまきつつ。彼女は笑みを浮かべる。

「さて、どうでしょうね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ