人類の未来
女の子「………私はみんなに幸せになって欲しい。ただそれだけなの」
男「わかってる。俺は君の事が好きだからね。例え、君が天使になろうと悪魔になろうとね」
女の子「私はもう迷いたくない」
男「大丈夫だよ。君は本当の優しさを知っているのだから。迷う事なんてない」
女の子「……そ……貴方が………を………………ている……」
………
…
夢を見ていた。なんだか懐かしく感じる夢だった。どこかの暗い都会のような街でどこかの建物の屋上で話していた。街は人で溢れかえっていて騒々しい、乱雑な風景。一体俺は誰と喋っていたのか。それともただの夢なのか。
昨日ロボットからこの世界はどうやら地球の西暦6万3千年後という事で、俺は何もかも考えるのをやめた。また爺ちゃんの家に戻って来て、そのままダラダラ過ごした。
爺ちゃん「久々に話す人間が出来てわしゃ嬉しいのう。今日は海登君は何をするんじゃ?」
俺は考えたけれど何も思いつかなかった。
海登「特にやりたい事も無いんですよね…。もうこのまま一生ここで過ごしちゃいそうな気分ですハハハ」
爺ちゃん「ホッホッホそれも悪く無いのう」
爺ちゃんはお茶を飲んでまったりしていた。
静かに時が流れている。ここ何日かで色々とあったからな。たまにはこういう時間もいいだろう。
ふと頭をよぎるのは知颯さんの事だった。
あれからもう結構日が経っているが、姿が見えない。元気にしているのだろうか。
知颯さんが言っていた、時の渡り人だっけ。もしかしたら知颯さんは今違う世界にでも行っているのだろうか。
知颯さんの笑った顔がまた見たいなとふと思ってしまった。
俺は彼女の笑顔の為ならばなんでもしてやれる。というのは大袈裟かもしれないが、それだけ彼女を想ってしまっている。この感情が恋なのかはわからない。
この世界はずっと暗いから、太陽が恋しく感じてしまう。
一回整理すると、俺がいた時代は西暦2110年だから西暦6万3000年って事は、だいぶ未来まで来ちまったな。てかそもそも地球がまだあるのに驚きだな。あのロボット達は人間が作ったのだろうか。
俺はあまりにも暇なのでこの世界にいる他の人に会いに行く事にした。ついでにここまでの歴史とかも調べようとおもった。
爺ちゃん「いつでも帰ってきなされ。ここは君の家も同然じゃ」
海登「ありがとう爺ちゃん。凄い世話になってしまったな。今度会ったら恩返しするから死ぬんじゃねえぞ!」
爺ちゃん「ホッホッホ。わしゃまだまだ現役やで」
爺ちゃんのその言葉を聞きながら俺は街を出た。
全部が機械だから相変わらず妙な感覚だが、道みたいなのはちゃんとある。道路みたいなのと歩道みたいなのもある。車は走ってないようだが。
それからしばらく歩くがあまり景色は変わらず、俺は本当に先へ進んでいるのか心配になってきた。
ほとんどが暗くて機械の光しかないから余計に方向感覚が狂ってしまう。俺は恐怖に似た感情に囚われていった。
海登「こんな時にこそ車とか乗りてえわな…。何故こんなに文明は発達してるくせに乗り物が無いんだ」
歩いても歩いても同じような店と同じような道と同じような景色だ。
海登「あーやっぱり爺ちゃんの家でずっと過ごしてれば良かったな…」
でもあそこにいたままだと何も始まらない気がしてならなかった。知颯さんに会いたいという想いが強くなっている。
もしかして知颯さんは今危険な感じなのだろうか。なんとなく焦ってしまう。
何かが思い出せそうで思い出せない。
何かとても大事な事があったはずなんだ。
このロボットの世界で俺は…
何故だかわからないが俺はこの世界を知っているような気がする。
暗い街、暗いロボットの世界。
確か俺が子供の時に書いた絵がこんな感じだった。でもそんな事って無いよな。
思い出したい。思い出せそうなのに何故だ…!
モヤがかかって思い出せない!
クソっ!
俺は思い切り走った。走って走って走りまくった。
海登「超いてえ…」
普通に転んでしまった。走って転ぶなんて何年ぶりだろうか。脚と腕に痛みを感じながらそう思った。
この世界は人工的な光はあるけれど、心が無いように思える。人類はこんな未来を望んだのだろうか。つまらないという感情が湧き上がる。
盛り上がるものも無い。一体どうしちまったんだ。図書館とかあれば何かわかるのかも。爺ちゃんの家に本があったのだから、本とか残ってるかも知れない。
俺は痛む腕と脚を抑えながら図書館を捜すことにした。