人間とロボット
しばらく走り回ったけど、俺以外の人は見当たらなかった。知颯さんもどこへ行ったのかわからんし、そもそも迷子になってしまったし、散々だな。
と、黄昏ていると老人が向こうから歩いてきた。
老人「珍しいのぅ、人間がいるなんて。お前さんどこから来たんだい?」
その老人は日本語で語りかけてきた。日本人なのかな?容姿も日本のお爺ちゃんみたいな感じで杖を付きながら歩いていたしな。
海登「俺は日本って所から来ました。とある女の人にこの世界に連れてこられて、その人が急にいなくなって困っていた所です…何か食べ物がある所とか教えて欲しいんですけど」
老人「そうじゃったか。その女の人も酷いのぅ。こんなにイケメンな男をほっぽり出すなんて。とりあえず家に来なさい。そこでゆっくり話し合おうかの」
なんて優しい爺ちゃんなんだと内心感激した。困った時はこの爺ちゃんに助けて貰おうと思った。
爺ちゃんの家に着き、パンなどをご馳走してもらって、今までの経緯を爺ちゃんに説明した。
すると爺ちゃんは一冊の絵本を俺に貸してくれた。
爺ちゃん「その絵本は昔若い頃に、ある女の人から貰ったものでな。結構汚れてるが、まあ君の為になると思うでのう。読んでみなされ」
俺は空いてる部屋に案内され、その絵本を読むことにした。
タイトルは、星からの救世主。
『昔々あるところに、地球とよく似た惑星スピカがありました。その星では、地球と同じように人間達が環境を破壊し、自分達の住みやすいように変えていました。惑星スピカでは人間達の間であるルールが設けられていました。そのルールとは、誰かを嫌な気分にさせたら牢獄に閉じ込めるというものでした。そのルールのおかげで人間達は互いに協力し合い、みんな笑顔で暮らしていました。
ところがある日の事。1人の人間が傲慢にも全ての人間の頂点に立とうとしたのです。その人は影で自分と同じ仲間を集いながら着々と準備をして、反乱を起こしたのです。ずっと平和で武器など作った事が無い人間達が為す術も無く独裁者に虐殺されていきました。そしてとうとう惑星スピカは独裁者によって地獄のような環境になってしまいました。独裁者に対抗しようと、違う星から救世主を呼ぶ機械を作りましたが、とうとう救世主はやってきませんでした。
めでたしめでたし』
結構酷い話の内容だったなと思う。絵では刃物や銃や戦車のようなもので次々に人間を殺したりしている。あちこちで火事のようなものが起きてるのも見受けられる。これは本当にあった出来事なのだろうか?
俺は爺ちゃんに聞いてみたが、爺ちゃんもその絵本の事はよくわからないという。
何か振り出しに戻ったような感覚に陥ったが、これからどうすればいいのだろう。
知颯さんが言っていた救世主の話。この本の救世主の事なのだろうか。よくわからない……俺に何をして欲しいのだろうか知颯さんは。
その日は寝る事にした。ちなみにロボットの世界を常に空は暗いのでいつが朝なのか夜なのかわからない。
ふいに目が覚めて、爺ちゃんの所に行ったがどうやら寝てるようなので、そこら辺をぶらつこうとした。全部機械なのでなんか不思議な気分というか目がチカチカしそうだ。空は暗いが街は常に明るいし、床も光ったり光らなかったり。試しにロボットに話しかけてみる事にした。
海登「ちょっと聞きたいんだけど良いか?」
ロボット「ナンデショウカ?」
海登「この世界って俺みたいな人間は何人いるんだ?」
ロボット「……イマノトコロ5ニンデス」
海登「そうか。一番多い時で何人くらいいたんだ?」
ロボット「……71オク4952マン7638ニンデス」
71億…だと。どういう事だ?この世界は元々人間達の世界だったって事か???
もしかしてここは、未来の地球なのか!?
海登「あのさ、今って何年?」
答えられるかどうかわからない質問をしてみた。
ロボット「イマハチョウドセイレキ63000ネンニナリマス」
俺は言葉を失った。