表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

金が全て

男「でけぇ…」


女の人に何となくついていった俺はまたもや絶望した。


その人は大豪邸に住んでいた。ここら辺は田舎だから土地が有り余っているけど、それにしたってでかいな。門みたいなのとか初めて見たわ。どうやって開けるんだろうか。


女「着きました!!無駄に大きいから歩くだけで疲れるんですよね!あはは」


男「いやいやでかすぎでしょ。どんだけ金持ってんだよ…」


金持ちのお嬢様に声掛けられるとか、漫画みたいだな。玉の輿にでも乗れる展開か?そもそも俺とじゃ釣り合わないな。俺は釣り合わないものは嫌いだ。美女の隣には美男子ってのが昔から決まっている。


女「とりあえず寒いのでお茶でも出しますね。早く中入って下さい」


女の人は門の隣にある、普通の玄関のような扉から中へ入った。この門って何に使うんだろうか…飾り?


男「お邪魔します…」


こういうのには全然慣れていないのでかなり萎縮してしまう。パチンコや競馬で借金して税金滞納とかしてる俺は場違いすぎる所だった。


女「お金だけはたくさんあるけど毎日暇で何しようかずっと考えてるんですよね。都会行って働こうとしたけど、失敗しまくっちゃってダメダメでした笑」


お金持ちは色々な選択肢を持ち合わせている。働いて失敗しても別に痛手では無い。金の為に働いてるわけでは無いのだから。嫌になればすぐ他の事出来る。羨ましいし妬ましい存在だ。


俺「そうなんですか。俺は人生に失敗しましたよ。もう何もかも嫌になっちゃいましたね」


女「そんなに辛い人生だったんですか、、、というかそろそろ名前教えて欲しいです!!あそこで会ったのも何かの縁ですし。ちなみに私の名前は知颯(ちはや)です。漢字は知識の知に颯爽と現れるの颯です」


男「俺は、海登(かいと)だ。海に登るで海登」


知颯「海登さんですね!!何歳なんですか?結構若そうですけど」


海登「もう全然若くは無い。今年で26だ。君は?」


知颯「私は今年21です。私より5個も上なんですね〜」


お金持ちで性格も良さそうな若い美人の女の子。凄いな、まさにアニメや漫画に出てきそうだ。


知颯「あなたの人生に興味があります!!教えて下さい!!」


海登「嫌です」


知颯「えぇー!?今の流れは私に話す流れでしょ!?」


海登「話したところで何の意味もない…。何も変わらないですよ」


俺はもうこの世界が嫌になったんだ。何をしてもうまくいかないこの世界に。努力しても人からは認めてもらえないし、大概の仕事場はパワハラとかがあるし、長時間拘束なんて当たり前だし、人と人とが常にぶつかり合っている。ほとんどの奴が金の為に。醜い国だ。もう何も考えたくはない。もう何もしたくない。


知颯「知ってますか?この諺。笑う門には福来る。笑ってると自然に幸せになれる。素敵な諺ですよね。海登さんに足りないのはズバリ笑顔でしょう!」


笑う門には福来る。俺がまだ小学二年生の時に女の先生が俺に教えてくれた言葉だ。先生の名前はもう忘れてしまったが……

「海登君はいつもニコニコしていて、凄く素敵だと先生は思うなぁ。いつも笑ってるとね、神様が祝福してくれるの。笑う門には福来るって諺があるんだよ?」


海登「笑っていたって何の意味も無い。笑ったところで金が来るわけでもない。すまない俺はもう帰る」


もうここには居たくないと思った。眩しすぎる。まるで絶望が無いような世界。俺とは無縁のかけ離れた場所。


知颯「そんなにお金が欲しいならあげますよ。でもお金があっても無くてもあまり変わらないと思いますけどね…」


海登「そんな事はない。世の中金が全てだ。金だけで世の中は動いている。金で人間の心を簡単に動かせる」


金こそが今俺が生きている世界で絶対の権力。金があれば生きる。金が無ければ死ぬ。生きるか死ぬかそれだけだ。


知颯「そんな暗い考えばかりしてたら楽しく無いですよ。とりあえず一億円あげますから、それで幸せになれるかどうか試します!!世の中はお金が全ての幸せじゃないことを証明してみせます!!」


そして俺は知颯さんに一億円貰った。こんな事ってあり得るんだな。一億もあれば結構な年数遊んで暮らせる額だ。


俺は知颯さんの家で寝て、次の日アパートに戻った。知颯さんに幸せになったかどうか報告する為電話番号を教え合った。


一億円を貰って2日目。


まずは今住んでるアパートからもう少しマシなアパートに住もうと思った。正直この金が詐欺に繋がるのかはわからないが何も失うものもないので、使う事にした。まずは都会でオートロック式のマンションに住むことを考えた。金が無ければ絶対住めない所だ。


一億円を貰って3日目


不動産屋へ行った。ネットで調べて家賃25万くらいの所があったのでそこにした。駅から徒歩5分で15階建てのマンションの2LDK。部屋は1つでも良いかとは思ったが色々な荷物が増えた時のことを考えて2部屋にした。不動産屋でそこを契約した。書類やら何やら色々書いて疲れた。


一億円を貰って4日目


引っ越し業者に電話をした。後日家に来るそうだ。

その後暇だからパチンコ屋に来ていた。金があるからどんどん投資が出来る。最高だ。結果は5万負けた。


一億円を貰って5日目


アパートの下見をした。その後暇だから都会を散策した。美味そうな飯屋があれば、とりあえず入ってみた。あまり美味しくはなかった。パチンコ屋に行き3万負けた


一億円を貰って6日目


引っ越し業者が家に来た。見積もりで10万ぐらい掛かると言っていた。そんなに出せない(まぁ出せるけど)と言ったら4万円にしてくれた。流石だなこの世界。人を騙そうとする輩ばかりだ。その後暇だからパチンコ屋に行った。7万負けた。


一億円を貰って7日目


新しいアパートへ引っ越し。正直気分は最高だった。プロバイダと契約したり電気、ガス、水道と契約したり忙しかった。


一億円を貰って8日目


適当に散歩したりした。まだネットは出来ないからとりあえず出掛けた。パチンコで5万負けた。


一億円を貰って30日目


あのあとパソコンとか買ってネット出来るようになって、毎日ウハウハだった。浮かれていた。知颯さんにお礼の電話をしたりした。知颯さんは嬉しそうだった。


一億円を貰って100日目


毎日ゲームやらしてアニメ見て、パチンコ打ったり競馬したりして、YouTube見て。暇だった。ゲームもやる気が出なくてすぐ飽きてしまった。金はあるから生きてはいる。生きてはいるんだが、これが幸せかと思うと別にそう感じなかった。俺は報告の為、知颯さんに会いに行った。


知颯「お久しぶりです!!!人生充実してますか??」


海登「好きな事やれて楽しいと言えば楽しい。何のストレスも無く知颯さんのお陰で毎日過ごせているよ。でも幸せかと言われるとよくわからない」


知颯「さんなんて付けなくていいですよー。私の方が年下だし、呼び捨てで構いません。だから言ったじゃないですか。世の中はお金で幸せになれるものじゃないって。お金と幸せはイコールでは無いんですよ」


海登「金があって気付いた事が1つだけある。確かに金が無い時は毎日辛かったけど、今は虚しいだけで何も無い。ただ生きてるって感じしかしない」


こんな生き方をしていて俺は俺自身幸せなのだろうか。とても虚しく、正直死にたいとさえ思ってしまう。


知颯「お金はあっても無くても変わらない。大事なのは何をするべきかだと私は思います。確かに辛い事ばかりかもしれない。それでもこの辛い世界で一握りの光こそが幸せに繋がると私は思います」


海登「その光ってなんだ?」


知颯「それは一人一人考えるべきものですよ。人によって幸せのカタチは違うのです。大事なのは今まで生きてきて学んだ経験と、自分と向き合う事。とても難しいですけど海登さんならやれると思いますよ」


海登「自分と向き合う事か…そんなの考えた事無かったな」


金が全てだと思っていたが、本当に大切なものは金がいくらあっても見つけられないんだな。ただ生きてるだけならそれはもはや生きた屍。俺はそんな風に生きていくのだろうか…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ