自分と他人
俺はこの世界に嫌われている。
全てに絶望してしまった。派遣の仕事をクビにされて、ギャンブルに注ぎ込んだ借金もあり、希望が全く見えない。何をやっても上手く行かない!!!絶望感しかない。今までのツケが全て回ってきたようだった。
都会から少し外れたアパートに一人で暮らしていた俺はもう金が全然無く、家賃とかも払える状況ですらない…今までの人生適当に遊びながら生きてきて派遣やバイトで働いてきた結果だ。
今年でもう30。今から真面目に働こうとか考えても受け入れてくれる所は無いだろう。あるとすればまともじゃない会社だけ。そもそも俺は働く事が凄く苦痛に感じて仕方ない。働くのが大嫌いなのである。
この国は腐ってると思う。毎日暗いニュースばかりで底辺を救う気は全く無い政治家、横領などを平気でする会社、がんじがらめの監視社会。金がいいからどんどん身体を売る女。給料が低いから独身だけがどんどん増えていく社会。税金の値上げ。昔に比べたらパワハラやブラック企業は減ったがそれでも問題だらけだ。
底辺から上がるのはほとんど不可能に近いだろうな。俺はもう全てを諦めてしまった。死ぬ事を選んだ。もう、、、何もしたくなかった。
手元にある振り込まれた最後の給料で俺は新幹線で遠い所へ行こうと思った。死ぬ方法は溺死を選んだ。とても苦しい死に方らしいが今の俺にはどうでも良かった。財布以外は何も持たずに家を出た。
季節は春になりかけの3月。まだ少し肌寒い。
男「まだ寒いな…死ぬ時期っていつが良いんだろう」
海に来た。
海に来るのはかなり久しぶりだ。何十年振りだろう。こんなに海って大きかったんだな。正直死ぬのは怖い。でも毎日毎日将来の事で不安になって金の事で不安になって仕事するのも嫌で嫌で生きるのはもう疲れたんだ。自殺する人ってみんなこんな気持ちなのかな。
しばらく海をボーっと眺めていた。親にはとても申し訳ないと思う。本当俺みたいな奴を育ててくれてとても感謝している。恩返ししたかった。ただそれだけを思う。
太陽が沈んでいく。だんだん暗くなってきた。こんな寒い日だから当然周りには誰もいない、と思っていた。
女「すいません、ここにいると風邪…引いちゃいますよ?」
女の人が俺に話しかけてきた。俺はどうでも良さそうにその女の人を見た。第1印象は綺麗な人だなって思った。俺より5歳くらい若そうで、茶髪ロングで、でも清楚そうな感じの人。
男「嫌な事があって海を眺めてたんですよ。何もかも忘れたくて。気にしないで下さい」
女「気にしないでと言われて気にしない人なんていないですよー。私でいいならお話聞きますよ?」
男「君に話したところで何も解決しないから…君は赤の他人だし関係無いだろ」
女「いいじゃないですか。赤の他人にならなんだって喋れるでしょ!」
俺は何言ってるんだこの女は、と思った。今の世の中、みんな自分の事しか頭にない。他人の事なんかどうでもいい。他人の事なんか眼中にない奴らばかりだ。仕事でもなければ他人なんか助けない。世の中は金で出来ているのだから。
男「俺の事はほっといてください。寒いから早く帰った方がいいですよ」
女「あなたが帰るなら私も帰るわ。というかあなたの名前教えて?いつまでもあなたじゃ言いにくいし」
男「いいから早く帰れよ…」
俺はもう無視する事にした。しかしこの女がいると死ぬとしても絶対止めようとしてくる…見た感じお節介好きそうだし。俺はひっそりと死にたい。
女「じゃあ今から私の家に来て!!ほら早く!!」
男「いててててて!痛いわ!マジで肩外れるわ!」
女が無理矢理腕を引っ張ってくる。めちゃくちゃ痛い。ガリガリの俺には相当堪えた。俺よりこの女の方が体重がありそうだ。そのせいかな。てか家ってなんだよ…
女「痛いの嫌なら早く立って行きましょ!」
男「なんなんだこの人…詐欺か何かか?もうどうでもいいけどさ…」
そして俺はこの女に強引に連れて行かれる事になった。正直あんな辛い惨めな毎日をまた繰り返したくは無かった。
だけどこの人は俺にとっての
光になった