8.『異世界』ギルドの入団試験1
展開悩みました。
でもこの方がいいかなと。
クリスマスに一人で書いてる悲しみ…。
午前9時。
試験の開始時間になったギルド館には、エリゼさんともう1人、ゴッツいおっさんが腕を組んで待っていた。
「ユウさん、おはようございます」
「おう!時間どおり来たな!」
爽やかなエリゼさんの挨拶とは真逆の、見た目通りの暑苦しい声でおっさんが話しかけてくる。
「どなたですか?」
「ガハハ!オレぁアルバートっつってな!ここのギルドのギルドマスターってやつだ!」
おお、ギルマスだ。ゲームではやった事あるけど本物は迫力が違う、そして圧が強い。
「ども」
「なんだぁ、もっとでかい声出さねぇと今回の試練は超えらんねえぞぉ?」
うん、暑苦しい。となりでエリゼさんも苦笑いしてる。あー、ただでさえレベリングしてきたあとだからこの暑苦しいのがしんどい。
「で、では!今回の入団試験の内容を発表します!」
エリゼさんが少し緊張した面持ちで話し出す。
「今回の試験は…」
つられてあたしもゴクリと唾を飲む。
「『魔物を100体討伐』です!!」
…ふむ。
「ガハハ!こりゃまた1番しんどいのを引いたなあエリゼ!こりゃ死なないように気合いが入るってなもんだ!」
「あたしだって引いた時はうわーっておもいましたよ!!」
「ガッハッハ!そりゃご愁傷さまってなやつだな!ガハハ!」
エリゼさんとガハハさんがわちゃわちゃしている間にあたしは密かに戦慄していた。
魔物を100体、それはかなりきつい。
草原での100体なら全く苦ではない、あたしがさっき倒してきた数も100体は優に超えている。
それはこのギルドマスターならもっと簡単だろう。
それを1番しんどいと、さらには死なないように気合いも入るとまで行った。
つまりこの試験は《山脈地帯》での100体討伐ということなんだろう。
「分かりました」
確かに気合いは入った。
「期間は日没まで、です。それまでに達成できなかった場合は試験は失敗になるので注意してください」
しかも制限時間付き。《加速》フル使用で着くまで約1時間ほど、そのから100体討伐してここまで帰還する、しかも帰りは十中八九夕方、魔物が活発になる時間帯だ。当然素通りさせてはくれないだろう。
「討伐した魔物は必ず右の《耳》か《角》を切り取って持ってきてください。それを1つにつき一体の討伐とします」
「了解です」
以上が説明になります。とエリゼさん。
「まあ頑張れや!試練達成したら晴れて俺らの仲間だからな!ガハハ!」
おっさんも暑苦しく応援してくれた。
「では、入団試験、スタートです!」
その声とともにあたしは《加速》を発動して一目散に街の出口を目指す。
「ほほお、早ええなあおい!!こりゃーひょっとしたら、ひょっとするかもしんねえぞエリゼ!!」
バンバンとエリゼの背中を叩きながらアルバートは言う。
「い、痛い痛い!!叩くならもっと加減してくださいってば!」
「ん?おっと、すまんな!ガハハ!」
もー、と可愛らしく怒るエリゼに謝りつつ、アルバートはユウが消えていった出口を見て、
「頑張れよ、新入り」
そう呟いていた。
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(さて、山脈地帯までは早くても1時間)
あたしは装備を弓に変更して、加速状態を維持したまま道中の敵を射る。
この辺りの魔物には苦戦しなくなった。だがそれと同時に得られる経験値が極端に少なくなっていた。
ゲームではよくある経験値補正だろうが、減る値が凄まじかった。
恐らくハイパーハードだからなんだろう。
「ふっ!」
目の前に迫った《アングラーベア》を射抜きつつ、さらに山脈地帯へと駆けていく。
そして、
「着いた…」
時刻は約10時過ぎ頃、だいたい時間どおりだ。
「…よし」
スキルの連続使用で披露してはいたが、日暮れまでに100体討伐して街まで帰るのなら休んでいる暇はない。
辺りを素早く見回し、斧を持った獣人が集まっている一帯を発見した。
「…《二矢番え》!」
敵を目掛けてスキルを打つ。
凄まじい勢いで発射された矢は敵の一団に易々と届き、2体の魔物を射抜く。
一瞬で塵になる仲間を見た他の獣人がこちらに向けて突進してくる。
「《アナライズ》!」
《アナライズに失敗しました。ステータス情報は更新されません》
「なっ!?」
アナライズの失敗、それは恐らく大きなLv差が存在するということ。
「っ!仕方ない!《双撃+二矢番え!》」
目前まで迫った敵に炎と氷の属性を付与した矢を2本連続で放つ。
「グオオオオオオオオオオ!!」
こいつ!斧を振り回して双撃を打ち消した!?
「グエアアアアア!!」
「…ちっ!」
空気を裂きながら、命を容易く刈り取る斬撃が迫る。
「《加速》!」
かろうじて回避に成功して、地面を転がる。
「グオオオオオオオオオオ!」
「っ!?」
しまった!後ろにも!?
ブゥン!と言う音と共に、あたしの背中側の鎧が裂ける音が聞こえてきた。
危なかった、この鎧を着ていなければ即死だった。
回避で獣人から距離を取り、振り向きざまに二矢番えで矢を放つ。
片方の矢が獣人の目を抜き、一体が塵に還る。
「ハァ……ハァ……!!」
ようやっと一体、そして眼前にはまだ10体近い獣人達が迫ってきている。
勝てるのか、と言う疑問が湧いてくる。
一体でこれだけ手こずっていて、試験なんてクリア出来ない。
そしてスキルをフルに使用してようやっと勝てるレベルの自分には、この状況を生き残るビジョンすら見えない。
「………いや」
違う。
自分の弱気を否定する。
そう、なぜなら。
「あたしは、絶対に冒険者になるんだ…!」
《スキル【消えぬ闘志】を発現しました》
《スキル【鋼の意思】を発現しました》
《スキル【迅雷】を発現しました》
《EXスキル【反撃の嚆矢】を発現しました》
矢を番える。
迫る獣人はすぐそこまで来ている、しかしあたしはひどく冷静だった。
今なら、見える。
《スキル【消えぬ闘志】の効果により、殲滅範囲が拡大しました》
《スキル【鋼の意思】の効果により、矢に貫通性能が追加、強化されました》
《EXスキル【反撃の嚆矢】発動、味方が視認範囲に存在する場合は避難させてください。
カウント。3、2、1。広域殲滅、開始》
矢を、放つ。
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その日、山脈地帯に眩いばかりの光が灯り、半径10kmにわたり魔物反応が消失するという自体が発生、原因は未だ明らかにされてはいないが、その日に1人の冒険者希望者が山脈地帯にて戦っていたことは、公式記録には残されていなかった。
もう少し入団試験は続きますので、お待ちいただければと。
あーした方がこーした方がというのが多すぎて遅くなりがちですが、なるはやで書きますのでご容赦を~~!!