1.『異世界』をどうぞ。
初投稿です。
なんの先行きも見えてないですが頑張ります。
楽しんでいただけたら幸いです
異世界転生。
ここ2~3年でとてもよく聞くようになった言葉だ。
主人公は若くして何らかの形で命を落とし、それを哀れに思った神様がチート的な能力と共に異世界へと送りだし、そこで新しい人達とワイワイと新生活を送っていく。
……まあここまでテンプレ。
これって要は神様が作った『異世界』って言う新しいゲームの登場人物ってことじゃないの?と、俺こと古戸 優雨は前々から思っていた。
なんたって『チート』なんだ、そりゃゲームみたいなもんでしょ、絶対。
なんて言ってるとだいたい周りのゲーム仲間は「草」とか「厨二病乙」、「ゲーム脳乙」とかなんとか好き勝手言ってくれやがる。
まあ別に何だっていいんだ、だって実際にあるわけじゃないし、異世界転生。
実際に遊べないゲームなんてゲームじゃないし。
そう、遊べないゲームなんて……。
気づけば、そこは見慣れない空間だった。
仄暗い、それでいて何となく見えている、そんなぼやけた感じの視界だった。
そしてそこに、彼女は立っていた。
「やあやあ古戸優雨くん、ようこそ私のお膝元へ」
声をかけてきたのは、1人の女性だった。
綺麗。
何よりもまずそう思える程に彼女は綺麗だった。
まるで、そう…
「いやいや女神のようだなんて、全くもって気恥しいね、けどその通りだから返答しようがない」
「!?」
心を読まれた、そんな驚きで瞬時に言葉が出なかった。
「当然さ、私は女神、君は人、子供と話す時はおなじ目線の高さで、これが仲良くなる1番の近道なのさ」
女神。
唐突にでてきた不遜とも言える言葉は、何故かとてつもない説得力があった。
「女神…」
無意識に呟く。こんなの、まさにゲームじゃないか。
「別に君は死んじゃいない、言うなればそうだね、午睡の夢、という感じかな」
呑気とも言えるような朗らかな声で彼女は言う。
「私は君が面白いと思った、だから君にゲームをプレゼントしよう、ほら、早目のクリスマスプレゼントだと思って受け取ってくれよ」
「プレゼント…?」
「そう、プレゼントだ、君だけのために作られた『異世界転生』という名の、唯一のゲームだよ」
異世界転生…。
「仕様はどうしようかなー、君ハクスラとローグライクならどっちが好き?あとあと、スキルはポイント割り振りがいい?それともアンロックしていく形の方がいいかな?」
自称女神は楽しそうに聞いてくる、が、俺はまだついていけてない。
「あ、それとこれは飽くまでゲームだからね、君はたとえ向こうで死んでも本当には死にはしないよ、まあデスペナルティは付けるけどね、それぐらいはないとゲームにならないもんね」
語りかけているようで、こちらには全く掛けられていない言葉だった。
「ふむふむ、最近のゲームは恋愛要素みたいなものも入っているんだねぇ、いやはや恐れ入った、恋愛感情すら抱けるほどの人格を人格をゲームで生み出すなんてねえ、神と人間って、実はもうそんなに変わらないのかなぁ?」
本当に楽しそうに、彼女は色々と聞きながら何かをつくっていた。
少し潰れたような青と白の混じる球体。
それは彼女が捏ねていく両手で様々な色味を増していき、そして。
「でーきた」
まるで出来合いで作った料理のような手軽さで。
「これが、君専用のゲームの舞台。『異世界』だよ」
といっても、まだ膨らませてないけどね、と照れたように笑っている。
「基本はハクスラ型にしたよ、パラメータは前衛のアタッカーが好きなんだよね?スキル周りのシステムも君の好きな作品をいくつか意識してみたから、何か意見があればまた教えてよ、あたしと君の間にパスを繋いでおくからさ」
そう言って彼女は俺のおでこに手を添える。
うっすらと光が広がり、温かいような感覚が頭の中に入り込んだ。
「これでパスも繋げた、よし、それじゃあ早速やってみようか」
「いや、ちょっと待っ……!」
そう言って、彼女は俺の手を掴んで作り上げた球体に触れさせた。
途端、吸い込まれるように意識が途切れる。
かくして、俺は異世界に行くことになった。
女神曰く、最高のゲームである『異世界』に。
ありがとうございます。
失踪しないように頑張ろう(戒め)