(九)(六一)
講義らしい講義が開かれたのは翌日からだった。その日、リウェルとフィオリナは夜明けとともに目を覚ますと、鴉の姿のまま食事を済ませ、ヒト族の姿に変じて身支度を調え、セレーヌに朝の挨拶を告げ、学院へと向かった。二人は、緑の葉に再び覆われつつある樹々の間を通り抜け、学院の敷地に至ると、研究棟の一つへと歩みを進めた。白い小石の敷き詰められた道を進む二人の目に映ったのは、目的地を同じくする学生たちの姿だった。学生たちは皆、二人が歩いてきた場所とは反対側から――学院で学ぶ学生のための寄宿舎がある場所から――研究棟のほうへと向かっていた。走るでもなく、然りとて、のんびりと歩くのでもなく、どことなく急いでいるようでいてそれでも背筋を伸ばして進む学生たちの姿は、何かしら重大な使命を帯びているかのようにも見えた。リウェルとフィオリナは普段と変わることなく、足下から届く音――踏まれた小石が不平不満を漏らすかのような音――を気にする様子もなく、道を進み、やがて、目指す建物に至ると躊躇することなく中へと進み、講義室を目指した。薄暗い廊下を進みながら幾つかの角を曲がり、程なくして講義室に至った二人は、入口の前に立ち、中を見回した。その入口は講義室の後ろに位置しており、二人の立つ場所からは既に席に着いている学生たちの後ろ姿が見て取れた。二人はひととおり室内を見回すと中へと進み、講義室の左端中程の席を選び、腰を下ろした。しかし、二人はすぐに立ち上がると、雑嚢を下ろし、外套を脱いで綺麗に折り畳んで雑嚢の中に収め、再び席に着いた。二人は落ち着いた様子で室内を見回した。既に席に着いている学生たちは、帳面を机の上に広げ、取り出した筆記具を手に、それが本当に使い物になるのかを確かめるかのように、帳面の端に何かを書き付けていた。或る学生は自身が書き付けたものを前に満足そうな表情を浮かべると前を向き、別の或る学生は筆記具を手にしたまま慌てた様子で荷物を漁っていた。他の学生たちの姿に目を遣っていたリウェルとフィオリナはどちらからともなく顔を見合わせた。
〈僕らも帳面と筆記具を用意しておいたほうがいいかな。〉リウェルはフィオリナに念話で語りかけた。〈何も置かれていない机は、故郷の山みたいだ。〉
〈『山』というより『谷』かもしれないけれど、〉フィオリナも念話で答えた。〈何もないよりは、用意しておいたほうがよさそうね。〉
〈聴き取ったことを文字に書き起こすよりも、そのまま覚えてしまったほうが手間もかからないのだけれどね。〉リウェルは室内を見回すと、再びフィオリナを見、わずかに肩を竦めてみせた。〈何もしないでいると、講義を聞き流しているようにも見えるかもしれない。〉
〈遊んでいると思われるのも癪ね。〉フィオリナはリウェルに目を合わせたまま笑みを浮かべるも、わざとらしく顔を顰めた。〈書き付けたものを私たちが持っていたとしてもあまり意味がないでしょうから、聴いたことは覚えておくつもりだけれど、学生らしく見えるようにするのだったら、書く振りくらいはしたほうがよさそうね。もちろん、本当に書き付けてもかまわないのでしょうけれど。〉
リウェルは机に視線を落とした。〈山を――谷でもいいけれど――飾り付けておこうか。〉
〈そうね。〉フィオリナも、何も置かれていない机に目を落とした。〈飾り付けるのも一つの案だけれど、私たちの子に見せるために帳面を取っておく、というのももう一つの案かしらね。『私たちは、あなた――もしかしたら「あなたたち」かもしれないけれど――が生まれる前に旅の途中でこんなことをしていたのよ』、という証しの一つにはなるわ、きっと。〉フィオリナは顔を上げ、リウェルを見た。
〈少し気が早いけれど、それはそれでいいかもしれない。〉リウェルもフィオリナを見た。〈でも、それまで――僕らの子が生まれるまで――帳面が保つのかわからないけれどね。大事にしまっておいたとしても、ぼろぼろになっているかもしれないし、何かの拍子にどこかに出したまま置き忘れるかもしれない。〉
〈かもしれないわね。でも、そのときはそのときよ。諦めましょう。〉
〈違いない。〉
二人は笑みを浮かべると、雑嚢から帳面と筆記具とを取り出した。
講義室の席は次第に学生たちで占められ、空いている席はわずかになっていた。リウェルとフィオリナよりも前にある席がほぼ埋まった頃、講義室の後ろのほうから近づいた足音が二人のすぐ後ろの席で止まり、ややあって荒い息遣いが二人の耳に届いた。二人分の息遣いは、その学生たちが講義室まで走ってきたことを窺わせた。二人はわずかに横を向き、互いに目を合わせると、そのまま向かい合うようにして後ろを振り返った。二人が目にしたのは、赤毛の少年と灰色髪の少女の姿だった。少年と少女は口を開き、肩で息をしていた。ともに服の乱れはそれほど見られなかったが、少年の髪は或るところでは横に飛び出し、或るところでは上に跳ね上がり、別の或るところでは押しつけられたかのようにぺたりと頭に張り付いていた。少女の髪は丁寧に梳かれた後のような輝きを放っていたが、強い風を受けたかのような乱れが所々に見られた。髪と同じ色の毛並みに覆われた三角形の耳は息遣いに合わせるかのように上下左右に忙しなく振られていた。
「おはよう、ロイ、テナ。」リウェルは赤毛の少年と灰色髪の少女に小声で挨拶した。
ロイとテナはリウェルとフィオリナに目を合わせるも、何度か顔を顰めた後、声を出すこともなく頷いた。
「大丈夫?」フィオリナは二人の顔を覗き込んだ。
「問題ない……。気遣いに、感謝する。それから……、おはよう。」ロイは絞り出したような掠れた声で答えた。
「おはよう……ございます。」テナは耳を前に倒しながら囁くような声で挨拶した。「ご心配には……、及びません……。」テナは倒していた耳を立てると顔を上げ、講義室の前のほうの扉に目を遣った。「先生が……、いらっしゃいました。」
「講義が始まるようだ。」ロイは顎をわずかに上げてみせた。
リウェルとフィオリナはロイとテナに促されるかのように前を向いた。
講義室に姿を見せたのは初老の男性だった。頭頂部の既に薄くなった髪を補うかのように後ろと横の髪を長く伸ばし、遠目にも上等な布で仕立てられたと判別できる外套を纏ったその姿は、市井の者とは別の世界に生きていることを誇示するかのようにも見えた。教師は、開いているのか閉じているのか定かではない目で講義室を見回すと、学生たちの視線を一身に受けていることに満足したかのようにかすかな笑みを浮かべ、その見た目とは裏腹の、講義室の隅々にまで朗々と響き渡る声で講義を開始した。
講義室に響く教師の声を追いかけるようにして別の音が加わった。その音は講義室のあちらこちらから湧き上がり、教師が話を続ける間もあるいは時折息をつくときにも絶え間なく続いた。硬いもので何かを引っ掻くようなその音は、学生たちが筆記具を用いて帳面に文字を書き付ける音だった。学生たちは教師の声に耳を傾けつつも、重要と思われる事柄をそれぞれの筆記帳に書き記していた。帳面に書き付ける音は二人の後ろの席からも届いた。その音は忙しなく続き、そこ頁を捲る音も加わった。リウェルとフィオリナも他の学生たちと同じく筆記具を手に持ち、机の上に広げた帳面に書き込んでいたが、他の学生たちに比して手の動きは鈍かった。二人は教師に顔を向けたまま、時折帳面に目を落とし、二言三言書き付けると再び教師に視線を向けるということを繰り返した。
教師は幾度となく話すのを止め、そのたびに何人かの学生たちに問いを投げかけた。それらの問いに、或る学生は流れる水のごとくすらすらと答えを述べたが、或る学生はつっかえつっかえ何度も言い直しながら答え、また別の或る学生は一言二言答えるだけでそれ以上は声を発しようともしなかった。教師は、学生たちの答えがどのようなものであろうと最後まで口を挟むことはなかった。学生が話し終えたところで、その内容についてさらに幾つかの問いを投げかけ、最後には決まって「よろしい」の一言とともに頷くと、講義を再開した。
講義はその後も続いた。開始から四分の三刻が経った頃、教師は話すのを止め、室内を見渡すと、「本日はこれまで」と宣言し、落ち着いた足取りで講義室を後にした。リウェルとフィオリナは教師の姿が扉の先に消えたところで手を止め、帳面を閉じ、筆記具とともに背嚢にしまうと、そのまま耳を澄ませた。講義室を満たしていた筆記具で文字を書き付ける音は次第に小さくなっていき、二人の後ろの席から届いていた音も消え、学生たちの安堵の息に変わったのはそれからしばらく経ってからのことだった。ややあって、二人の後ろの席から大きく息を吐く音が二人の耳に届いた。
「終わった……。」ロイが息も絶え絶えといった様子で呟いた。
「もう一つ別の講義がまだ残っております。」テナが追い打ちをかけるように声をかけた。
「次の講義が始まるのは……、四分の一刻先だったか……、それまでは暫しの休息だ。」ロイはテナの言葉を拒むかのように宣言した。
リウェルとフィオリナは後ろを振り返った。
テナはロイを見ながらわざとらしく息をついてみせると、前を見た。「お二人も講義室を移られるのですよね?」テナはリウェルとフィオリナを交互に見た。
「そうだね。」「そうなるわ。」二人はゆっくりと首を縦に振ると、テナを見た。
「君ら二人はずいぶんと涼しい顔をしているように見えるが……、」ロイは筆記具をしまいながら、気怠そうに前を見た。「帳面にもそれほど書き付けていないようにも見えたが。」
「ロイ様、」テナはロイのほうを向くと、両の耳を前に向けた。「お二人に失礼かと。」
「私は見たままを言ったまでだが……、」ロイは不機嫌さを隠そうともせずテナを見た。
「ロイ様。」テナは負けじとばかりにロイの視線を受け止めた。
ロイとテナは無言のまま睨み合った。テナの耳は前に向けられたままだったが、時折何かを振り払うかのように小刻みに振られた。
「ロイの言うとおりだよ。」リウェルは二人に向かって言った。
「あまり書き付けていなかったのは本当よ。」フィオリナが続けた。
ロイとテナは揃って前を向いた。
「そうでしたか……。」テナは両の耳をわずかに伏せた。
「私があれこれ言うことでもないとは思うのだが、」ロイはリウェルとフィオリナを心配そうに見た。「後々、帳面を見返したときに困るということにはならないのか?」
「例えば、どんなときに?」リウェルが訊ねた。
「例えば、試問の前に、だ。」ロイが答えた。「どのような講義だったのかを思い出すときに、帳面が必要になると思うのだが……。」
「ああ、それだったら、問題ない。」リウェルは合点がいったとばかりに答えた。
「もしよろしければですが、理由をお伺いしてもよろしいでしょうか。」テナが戸惑いながらも探るような目でリウェルとフィオリナを見た。
「私もその点は気になる。」ロイもテナと同じように二人を見た。
「それは、講義の内容が、図書館で読んだ本に書かれていたこととほとんど同じだったからよ。」フィオリナがロイとテナに答えた。「でも、講義の内容は一冊分では足りなかったわね、リウェル?」フィオリナはリウェルを見た。
「一冊分ではなかったね。」リウェルもフィオリナを見、ゆっくりと首を縦に振った。「少なくとも数冊に亘る内容だったと思う。それでも細かいことや詳しいことは省かれていたけれど、そのせいかな、本よりもわかりやすかったのは確かだ。」
「そうね。聴いていて迷子にならずに済んだわ。」フィオリナも頷いた。
「今の君らの話からすると、」ロイは片付けの手を止め、驚き半分呆れ半分といった様子でリウェルとフィオリナを交互に見た。「相当な数の本に目を通したように聞こえたのだが、いったい、いつ、それだけのことをやってのけたのだ?」
「入学試問のための準備をしていたときだけれど――」リウェルは講義室の中を見回した。「ひとまずは次の講義室に移動しよう。皆ほとんど移動したみたいだから。」
フィオリナと、ロイとテナも顔を上げ、室内を見回した。講義室に残っているのは四人を除いて数名のみだった。その数名も既に片付けを終え、講義室を後にしようとするところだった。
「話は後で。急ごう。」リウェルが言った。
慌ただしく席を立った四人は身支度を調え、講義室を後にした。薄暗い廊下を急ぎ足で進み、幾つかの角を曲がり、次の講義が開かれる部屋に辿り着いた四人は、入口から室内を見回した。既に大半の席は学生たちで占められており、空いているのは最後列を含めた幾つかの席を残すのみだった。四人は揃って顔を見合わせた。
「出遅れたね。」リウェルはわずかに俯き、小声で言った。
「しかたなかろう。」ロイは肩を竦めてみせた。「話し込んでいたのは我々のほうだ。次からは気をつければよいだけのこと。幸いなことに、席にはまだ空きがある。」
「二席ずつ空いているところがあるわね。」フィオリナが講義室の一角に目を遣った。
「であれば、」ロイはリウェルとフィオリナを見た。「私たちが前に座ってもよいだろうか。」
「いいよ。」「ええ。」白銀色の髪が揺れた。
「ありがたい。では、テナ。」ロイは促すように傍らのテナを見た。
「はい。」テナはロイに答えると、リウェルとフィオリナを見、両の耳を前に向け、目礼した。「ありがとうございます。」
リウェルとフィオリナはテナに目を合わせると、無言のまま頷いた。
四人が席に着いて程なくして、一人の教師が講義室に姿を見せた。その教師は若い男だった。豊かな髪が男の姿をより大きく見せていたが、幾分猫背の姿勢がそれを打ち消していた。並んで立てば学生たちのほとんどが見上げるほどの背であるにもかかわらず、緩やかに曲がった背が却って男を小さく見せ、加えてどことなく仄暗さを感じさせた。男は室内を一瞥すると講義を開始したが、その声はまるで、凍て付く夜に暖炉の前に集まった者たちが交わすような、ぼそぼそとした聴き取り難いものだった。男はほとんど顔を上げることもなく、学生たちに目を遣ることもなく、筆記具と帳面が発する音に掻き消されそうな声で話し続けた。
リウェルとフィオリナは筆記具を手にしていたものの、机の上に広げられた帳面はほとんどが白いままだった。時折思い出したかのように二人は手を動かしたが、帳面に書かれたのは講義の内容ではなく、地図のような図形ばかりだった。二人よりも前の席に着いていたロイとテナは休むことなく手を動かしていた。ロイは空いているほうの手を耳の後ろに当て、テナは毛並みに覆われた三角形の耳を前に向け、二人とも何とか聴き取ろうとしている様子が窺えた。
男は休むことなく話を続けた。学生たちに問いを投げかけることもなく、学生たちが問いを投げかける隙を与えることもなく、学生たちが耳を傾けているのかさえも気にかける様子もなく、途切れることのない河の流れのように言葉を紡ぎ続けた。開始から半刻を過ぎた頃、男は唐突に話を止めると講義を終えることを伝え、猫背の姿勢のまま講義室から立ち去った。
男の姿が教室から消え去るなり、リウェルとフィオリナは筆記具を手にしたままゆっくりと首を巡らせ、互いに顔を見合わせた。
〈あれは……、どうなのだろう。〉リウェルは困惑を隠そうともせず念話で語りかけた。
〈どう……、なのかしらね。〉フィオリナもリウェルとそっくりの表情を浮かべ、念話で答えた。〈少なくとも、あの教師には何かを伝えようという気があるようには見えなかったわ。〉
〈それは僕も思った。〉リウェルはわずかに頷いた。〈これまで知り得たことを口に出していただけのようにも見える。本をそのまま読んでいるようにも聞こえた。〉
〈話したことを書き付けていけばそれだけで本になりそうね。〉フィオリナは口元をわずかに引き上げた。〈話した内容そのままの本があるのだったら、その本を読んだほうがよさそうよ。本なら何度でも読み返せるもの。〉
〈フィオリナの言うとおりだ。〉リウェルも口角を引き、わずかに歯を見せた。〈幸か不幸か、今の講義の内容も図書館にあったものと同じだったけれど、〉リウェルは顔を前に向けた。〈あの二人にとってはどうだったのだろう。〉
〈どうだったのでしょうね。〉フィオリナも前を向いた。
ロイは筆記具を手に、何事かを帳面に書き付けていた。筆記具が帳面の上を走るたびに擦れるような音を響かせるも、手の動きは滑らかだった。ロイの手は帳面の上を左から右へと流れるように進み、帳面に到達するとすぐに左端まで戻り、再び右へと進み始めた。ロイの隣のテナも同じように帳面に向かっていた。ロイほどには音を立てず、然りとて帳面の上を進む手はロイよりも速かった。二人の手は左から右へ上から下へと進み、時に頁を越え、また同じように進んでいった。リウェルとフィオリナが見詰める先で、先に筆記具を持つ手を止めたのはテナだった。テナは最後に二度、左から右へと筆記具を大きく動かすと、顔を上げ、背筋を伸ばし、肩で息をついた。両の耳は下がり気味だったものの伏せられるまでには至らず、時折細かく上下に振られていた。その後しばらくしてロイが顔を上げた。筆記具を帳面の上に投げだし、顔をわずかに上げ、講義室の前のほうに目を遣った。似たような姿の従者と主は言葉を交わすこともなく、ゆっくりと肩を上下させていた。
リウェルとフィオリナは顔を見合わせると再び前を向き、ロイとテナを交互に見た。
「大丈夫?」リウェルは心配そうに訊ねた。
ロイはぎこちない動きで後ろを振り返った。「『大丈夫』とは言い難いが、何とかなったのは確かだ。」ロイはリウェルを見、フィオリナを見、次いで、テナを見、最後にリウェルとフィオリナの帳面に目を落とした。
テナは耳だけを後ろに向け、何度か上下に動かした。
「君らこそ、大丈夫なのか?」ロイはリウェルとフィオリナの帳面に目を落としたまま訊ねた。「一見したところ、ほとんど何も書き付けていないようだが。」
「幸いなことに、」リウェルはどことなく芝居がかった声で答えた。「今回も、図書館で目を通した本に書かれていたことだったから。」リウェルはフィオリナに目を向けた。
フィオリナもリウェルを見、ゆっくりと首を縦に振った。
暫し見詰め合った二人は、揃ってロイに向き直った。
「そうであったか……。」ロイは傍らのテナに目を遣り、再び振り返った。「ここで話すのも何だ……、外に出るとしよう。午前の講義はこれで終わりだが、これから一緒に食事でもどうだろうか?」
「お供いたします。」テナはロイを見、両の耳をぴんと立てた。「お近づきの印に、お二人と一緒にお食事できましたら幸いです。」テナは伏し目がちにリウェルとフィオリナを見た。
「いいよね。」リウェルはフィオリナを見た。
「いいわよ。」フィオリナもリウェルを見た。
「では、まずは外に出るとしよう。」ロイはリウェルとフィオリナを見、次いで、傍らのテナに顔を向けた。
「承知いたしました。」テナはロイに目を合わせたまま答えた。
四人は片付けを済ませると、講義室を後にした。
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