一話 ここは異世界なのか?
悠斗は漆黒の世界の中いた。光の粒子になって消えたと思った瞬間、異空間とも言える世界にいる。体を動かしてみようとも感覚がなく、音も聞こえなければ、光一つない。
どの方向に向かって動いているのか、あるいは落ちているのかも分からない。完全に五感を奪われた感覚というのはこの事だろう。あの世に向かっていると思っても無理はない。
死という言葉が頭を過った時、悠斗は19年間生きてきた記憶がフラッシュバックしていた。
初めて買ってもらったゲーム。初めて全クリしたゲーム。初めて恋に落ちたゲームキャラ。初めて途中で挫折したゲーム。
俺ってゲームの記憶しかないのかよ。
言葉を発せられない現状、心の中で自分にツッコミを入れるしかなかった。確かに常人以下の青春しかしてこなかったと思い返す悠斗。
このまま戻れずあの世への直送便だったのなら、女性とキスどころか手も握ったこともなく一生を終えるか。そんな絶望の思いに浸っていると、漆黒の世界に一筋の光が現れた。
例えるのなら夜空に1つだけある星だろう。次第に光が大きく眩しくなり漆黒の世界を包み込んでいく。その瞬間、あの幼い少女の声が聞こえた。
「もうすぐ逢えますよ!主人。」
また意味深な言葉を残す幼い少女。悠斗がいったい君は……と聞こうとしてパッと目を開けてみたら、知らない広場のベンチに座っている。
中央に噴水あり、その周りをベンチが囲むように配置され、木々達がきれいな道を作っている。
明らか悠斗がいた公園とは、似つかない場所だ。しかもベンチが見たことない構造で出来ていて、透明で頑丈なアクリル板のようなものが浮いているだけ。どうゆう原理なのか全く分からない。
悠斗は生きていた!という喜びよりも、ここがどこなのか?ということで頭がいっぱいになっていた。それもそのはず、人間なら誰でもこんな不思議な現象が起きたら必ずこうなる。
「あぁ、いろいろと考えるのダルくなってきた。」
そう言って顔をゆっくりと上げ空を見つめだす悠斗。
「空だけは一緒なんだな。」
完全な現実逃避。考えすぎて頭がパンクしてしまったのだろう。気の抜けた顔が一層に思考停止を物語っている。
この状態でどのくらいの刻が経っただろうか。このままじゃ何も解決しないと思い、ようやく重い腰をあげた瞬間
ギュイーン
「うおっと」
ローラースケートを履いていた事を忘れて、転びそうになる悠斗。しかし長年愛用してきたのは伊達ではなく、すぐに体勢を整え、広い広場をぐるぐると周り出しながら再度考え始めた様子。
「冷静に考えたらこの展開は、間違いなく異世界転移ものだろ。なのになぜ魔物がいない?それに場所は草原だろ。角が生えた狼は?助けくれる冒険者は?それがないってことは異世界じゃないのかもしれない。」
異世界転生モノのラノベ小説を好き好んで読んでいた事もあり、なんとかこの展開に頭はついていっているらしい。
しかし小説やゲームの世界と言ったファンタジー世界とは違い、このベンチを見る限り科学技術がかなり進んでると考え、より混乱させているのだ。
「やっぱりここは異世界ではなく、俺のいた時代より遥か未来にタイムスリップしたのか?」
この広場だけで、現状把握するのは難しいと結論を出し、とりあえずここから別の場所に移動しようとしたその時。
「おい!そこの兄ちゃんさっきからチョロチョロと走りやがって目障りなんだよ。」
よくいるガラの悪い20代か30代か分からない腹を出した太ったデブが喧嘩腰に突っかかってきた。悠斗は必死になって現状を考えてたため、人がいた事に気が付かなかったのだ。
突っかかってきた理由は、それ以外にあると思うがとりあえず謝ろうとする。
「あーすいません。考え事してて気づきませんでした。」
「あぁ、そんなんで許すわけねぇだろ。それにこの場所どこか知ってんのかよ?」
「えっ?ただの広場じゃないんですか?」
ブチッ
この音はよくあるブチギレした時の効果音。ガラの悪いデブが顔を赤くしてプルプル震えている。見た目は完全にゆでダコのようだ。
「テメェ、まじムカつくな。レートはいくつだよ?」
「れーと?」
「はっ?レートも知らねぇクソ素人かよ。これは完全カモだな。」
「テメェにルインバトルを申し込んでやる。」
誤字脱字や文章力が低くてごめんなさい。
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