第四話 初めての魔法
今回はエルフォード(理水)が初めて魔法を体験します!
理水、いやエルフォードが生まれてから三年と少しがたったある日。
既にエルはこの世界の言葉をかなり理解していた。もっとも、まだ本人以外は知らないが。
エルはいつものように体を動かす練習をする。歩けるようになったのは大分前だが、体が上手く動かず、いつも苦戦していた。
しかし、過って左の足首を折るという怪我をしてしまう。蹲って唸り声をあげるエルの元へ彼の父親、ファンドルトがやってきた。
「...ッ!?おいエル!?どうした!」
(しまったな・・・この体じゃまだまだ骨も筋肉も弱い・・・!無茶をしすぎたか)
エルからは返事はない(喋れることを隠しているので当然なのだが)
「これは・・・折れてるのか!?"教会"に連れてくしかないか・・・!」
この"教会"のことはエルも知っていた。なぜかは分からなかったが、近くに住む子供達が大きな怪我をおったりするとそこにつれていくということを両親の会話で聞いていたからだ。
(傷を治せる何かがある・・・?病院のようなものなのか?)
それは普段から気になっていたことではあったが、話しかけるわけにもいかなかった。
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そして、その"教会"へ行くためファンに抱えられ家を出る。実は家の外に出たのはこれが初めてだったりする。
(やはり大体の家は日本の建築と比べると拙いが・・・あまり不自由なわけでもなさそうだな)
"教会"は自分の家からせいぜい徒歩数分いったもので、かなり近かった。
(う~む・・・前から予想はしていたが・・・かなり小さいな・・・やはり村のようだ)
そう、エルが住んでいるのは明らかに町より小さい、村だったのだ。元の世界で言えばだが。
(ん?なんだあの森・・・)
この時、エルは村からかなり離れたところに森らしきものがあることを確認する。だが、その見た目は元の世界の森と比べるとかなり大きいように見えた。
(木の成長速度が違うのか・・・?それともあの森が特別なのか?)
そんなことを考えているうちに"教会"に到着する。
(・・・教会・・・だな)
そう、その見た目は十字架のような宗教のシンボルのようなものこそ無いものの、元の世界の教会とかなり似ていた。
(いや地球でも教会なんて少ししか見てないが)
「シスタァッ!すまないがエルが、息子が怪我をしたんだ!治療を頼む!!」
教会に入った途端、エルの父親、ファンが叫ぶ。
その声を聞いたのだろう。慌ただしい足音がする。
「は、はいぃっ!とりあえず治療室まで連れてきてください!」
その瞬間、現れた所謂シスターの服装と似た作りの(頭は隠していないが)、白い衣服をまとった緑色の長髪の女性を見てエルは思わず目を見開いた。
その女性はかなり幼く、女性というより少女に近いほどだった。見た目はせいぜい12歳というところだろう。
だが、エルが驚いた原因はその若さではない。かなり整った顔つきで、美少女といっても差し支えない。エルが視線を向けたまま硬直してしまうほどだ。問題は、その美しい緑の髪からのぞく耳だった。
そう、その耳は長く、尖っていたのだ。
美しい見た目に長く尖った耳。
(エルフ、か?)
そう、その少女はエル、いや理水が地球で読んだ小説や漫画に出てくるようなエルフそのものだったのだ。
そしてその後、自分の父親の言葉に気づいて再び驚く。
(状況的にもあの少女がシスターで間違いないんだよな?・・・だとすると、あの少女は医者でもあるのか?いやでも・・・もしかして?)
その後、治療室と呼ばれる部屋につれていかれたエルは椅子に座らせられる。
「怪我は頑張って直しますから、あんまり動かないでくださいね?」
少女の言葉に自分の予想が合っているという確信を持つ。
その部屋には特に医者が使うような道具もなく、それどころか少女と自分が座っている椅子、そして傍にベッドが置いてあるのみだったのだ。
次の瞬間、少女の手の先、自分の左の足首に触れそうなくらい近づけた手が、ほんのり赤い淡い光を放つ。
その瞬間、エルは思わず息をのむ。
予想はしていた。元の世界ではエルフは魔法に長けているイメージだった。だがそれでも驚かないはずがない。
自分の折れていたはずの左の足首から痛みが引いていき、足が完治しているのだから。
そして、自分の体内の不思議な感覚に、エルは自分の予想が当たっていたことを悟る。
しかし、自分の体の中の感覚は、不思議と気分の悪いものではなく、むしろ心地よささえ覚えた。
そして、エルの予想、そしてつい先ほどエルの左足を治した何か。即ち...
(回復魔法・・・もしくは治癒魔法、か?)
そう、この世界にきて理水が初めて魔法に触れ、魔力を感じた瞬間であった。
(これは・・・俺にも使えるものなんだろうか・・・?)
その日から、エルは魔法を覚えることを決意した。
いやー、これからエルがどうやって魔法を覚えていくのか・・・
気になりますね!! by作者