第五話 《路行く》
お楽しみください。
「父上、寿命2日ってどういうことですか?」
「⁉︎」
太秦は空中に浮き出た信じられない言葉を見て、帷子に問いかけた。
この発言には流石の帷子も驚きを隠せないでいた。
「どういう、、ことなんですか、、、、‼︎‼︎」
「つい先日言われたのだよ。同じことを、医者にな。錆無化の能力の使いすぎだそうだ。お前には言っていなかったがな、錆無化と契約を交わすと50過ぎで死ぬというアレ。その原因は能力の使いすぎなのだよ。まあ、とかいう私はまだ50にはなっておらんのだがな。」
帷子は錆無化を鞘に収め、太秦を真っ直ぐ見つめた。
「今まで沢山の人の命と笑顔を奪ってきた。こんな私に、生きる価値など、、もう、どこにも、、」
「僕は知っていますよ?父上。錆無化を受け継ぐ時、僕のために悩んでくれたこと。」
「‼︎、、それと何が関係する。悩んだ末に人を殺した。お前に、、父上と呼ばれる資格ですらないのだ」
「それはちょっと違くないか?」
唐突に報恩寺が口を開き、2人の視線が報恩寺に向いた。
(久我さん、いたんですね。)
「悩んだ末に人を殺した。これの何がいけねえんだ?悩むことの何がいけねえんだ?いいじゃねえか、悩んだって。悩んで、迷って、歩いてた道を踏み外して、それでもひたすら前に歩き続けるうちに、自分が歩むべき道ってもんが見えてくるだろ。逆を言えば、歩き続けるまで何もわかんねえってことだよ。それなのにアンタは今いる道から逃げるって言うのか?太秦を置いて、死んで、それが何になるんだ。アンタが逃げた先に別の道なんざねえ。そこにあんのは崖だけだ!」
「久我さん、、、」
「ならどうすれば良いというのだ、、、!」
帷子が拳をぎゅっと握りしめて、吐き出すように喋った。
「もう一度俺と剱を交えろ。戦え。その戦いが終わる頃には、問題が解決されてるだろうよ」
「よく分からんが、戦えば良いのだな?」
シュラァ、、
そう言うと2人は鞘から剱を抜いて向き合った。
(初めて見る!久我さんの剱の刀身!)
報恩寺の持つ剱が少し傾きまばゆい光を反射させ、太秦の視界を一瞬くらませた。鞘から現れたのは所々金で模様をかたどられた純白の剱だった。その吸い込まれるような白の刀身に、太秦は一瞬で魅了された。
「ああ、なんて、、なんて美しいんだ、、、、!」
その剱、璃禁無は太秦が無意識のうちに感嘆の声を漏らしてしまうほど美しかった。しかしその美しさはもはや美しいという言葉では収まりきらないほどのもので、太秦達の周りの重たくジメジメした空気が乾いていく様だった。
「では、、戦うのであれば手加減無用だ‼︎」
そう言い放った刹那、帷子の足元の砂利が飛沫を上げて飛び散り、帷子が報恩寺へと距離を縮めていった。
しかしながら報恩寺はこれに動じることなくその場で突っ立っており、あくびをかく様な素ぶりまで見せるようだった。
(かなり肝の座った奴だな、、、もしくはただの馬鹿か、、、ここは様子見で大振りの牽制でもしておくか)
そう思ったが最後。近間で大振りの牽制を行った帷子に対して、報恩寺はその場で左脚を軸にし、右脚で勢いをつけ、回転しながら璃禁無を振りかざし、錆無化の腹の部分へと思い切り叩きつけた。
キィィィィイイインッッッという耳を劈く様な金属音が辺りを震わせたその瞬間、雲ひとつない青空を舞ったのは、、、、、、、、、 折れた錆無化の刃だった。
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