第三話《血がもたらした》
初戦闘シーンッッッ‼︎
難しかったです。
「お前の母親はギルド初の女剣士でもあり、『最強』という称号を手に入れたお方だ。」
しばし沈黙が流れた。無理もない、顔も見たことのない自分の母親がギルドの最強女剣士だったのだ。まず驚かずにはいられないだろう。太秦は、やっと現状を理解した。
「あの、、、。うん。そうなんですね」
「ボケろよ」
「どうやってですか!自分の母親がギルドの最強女剣士だったんですよ?」
「まいったなこりゃあ」
「というと?」
「要するにこれは家族の問題だ。もうギルド団員の俺が首を突っ込むことじゃねえ」
「じゃあ、、、どうしましょう、この剱」
太秦が剱を見つめていると、扉の奥の方からだんだんと足音が近づいていた。
「おい太秦。客人が来ているなら教えてくれといっただろ、、、、」
扉が開いた。太秦の父、帷子が顔を出す。隣から何かが震える音がしたので報恩寺がふと隣を見ると、そこには顔面蒼白の太秦がカタカタ震えていた。その顔はもう顔のパーツがわからなくなるほどに真っ白だった。
「ちっ、父上!」
「へ~。この方が帷子さ、、、、ん、、、」
帷子の顔を見て報恩寺はギョッとした。般若だ。般若がいた。
(あれ?この部屋、人間なの俺だけ?)
「おい、太秦。その剱はなんだ。」
「は、はひっ。いや、こ、これは違うんです!」
「お前何をしているのかわかってのことか?」
帷子が、、いや、般若が報恩寺に視線をおとした。
「貴様、太秦に何か吹き込んだのか?」
「いっ、いや俺は何も、、」
「問答無用!うちは代々錆無化と契約を交わす掟があるのだっっ!」
「話を聞けよ!」
「この家の掟に抗おうとしたものの末路を知っているか?」
報恩寺は生唾を飲み、上目遣いで答えた。
「、、、死、、、、だろ?」
その答えと同時に報恩寺と帷子が叫んだ。
「《錆無化》!」
「《璃禁無》!」
突如二人の手元が青く光り、帷子の剱《錆無化》と、報恩寺の剱《璃禁無》が出現した。
「あ、あれが、、久我さんの剱。」
「やはり、貴様も剱を所持しておったか。」
璃禁無。深く深く、限りなく深い青の鞘に、藍色の鍔と柄。どことなく冷たい雰囲気を感じさせる剱であった。
「人の話くらい聞けねえか?」
「ふっ、邪魔者は消すまで、、、、!」
「、、っ父上‼」
帷子が剱を抜いた。重々しく禍々しい刀身が赤紫色に揺らめきながら、外から差し込む日の光を鈍く反射させた。
「ここじゃあ暴れるにはちょっとばかり狭くねえか?」
「うむ、庭に来い。死ぬにしてはちと場所が良すぎたか、、、」
「、、、、、、、、」
何を言っても聞かない二人の後を、太秦は静かについていった。
報恩寺の視界に広がるのは、薄灰色の砂利がきれいな波紋を作り出している枯山水だった。
「さて、死ぬ覚悟はできたか、、、、?」
帷子が目を細くして睨みつけるが、
「さあな。まあ、死んでも死ななくてもキョーミないんで」
報恩寺がやれやれという表情で帷子の言葉を受け流した。
「であれば早々に決着をつけるのみっっっっっ‼」
帷子が走って報恩寺に突っ込んで行った。狙いは右手首、剱を抜かせないつもりだ。右から最短距離で手首へ刃を走らせる。報恩寺はこれをギリギリまで見極め、回避。帷子は即座に行動を切り替え目元を狙い斬り込む。しかし報恩寺はこれをも見極め、回避。近距離での強力な大振りで牽制し、報恩寺が後ろへ飛んで足が浮いたところを剱を投げ追撃。だがしかし、報恩寺はこれをも読んだのかのように、回避。回避!回避!!
(攻撃が当たらない)
「攻撃が当たらない!って感じだな」
まるで悪戯をする子供のように報恩寺はニヤついた。
「、、、、、、⁉そうだな。やむを得ん、能力を使用させてもらう」
そう言って帷子は錆無化を転移させると、刀身を鞘にゆっくりと収めて再度抜いた。
するとその剱は真紫に光り輝いていた。
「もう、、、、、逃げられんぞ、、、、、」
「、、、、面白い」
帷子は剱を地面と平行に傾け、素早く前方に突いた。すると、報恩寺の方に線を描くように地面がズプズプという音を立てて沈んでいった。
「んだコレ、、、、⁉」
「お前もこれで終わりだ、、、、、!!」
二人の戦闘は素早い剣撃と会話を織り交ぜながらさらに激化していった。縁側でもの言いたげな顔をする太秦を置いて。
(父上はどうしていつもそうやってすぐに人を傷つけようとするのですか、、、、‼僕も早く止めてあげねば!、、、、でも、僕にそんな力なんてない。でも、だとしても、それは間違っている。剣とは、剱とは人を傷つける為にあるものじゃない、人を護るものだっ!)
キィィィィィィィィィィィンッッッッッッ
太秦が心の中でそう叫んだ時、突如視界が青い光に包まれていった。
(いったい何が、、、、、、、⁉)
太秦がゆっくりと瞼を開いたとき、彼は自分の目を疑った。
(これは、、、、動きが、、時間の動きが止まっている、、、⁉)
『おい、太秦』
太秦が初めての体験に動揺していると、どこからともなく男の声が聞こえてきた。心にスゥっと透き通るような、どこか懐かしさを感じるような男の声が。
「だっ、誰ですか?」
『どこを見ておる、我は後ろにおる』
太秦が振り返るとそこに人の影はなく、縁側にポツンと残されだけの剱が置いてあるだけだった。
「ここには剱しかなっ、、、、え?剱?」
『いかにも。主の目前にある剱こそ我、《雪析》である』
「は、はい」
太秦は剱がしゃべるという奇妙な光景を目にし、動揺を隠せずにいる。
(剱が自ら名乗り出るって、まさかこれが契約?)
『して、太秦よ。一つ聞いても良いか?』
「なんでしょうか、、、、、、。」
辺りが緊張で静寂に包まれてゆく、、、、、、、、。
『お主、もとい太秦よ、
我と契約を交わしてみないか?』
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