第二話《限限》
この辺から物語は急展開を迎えます。
太秦は報恩寺を部屋の前まで連れてくると扉を開けて明かりをつけた。そこには15畳程の空間が広がっていた。広い割には物も少なくより一層広々と感じた。
「それで、相談ってのは?」
「はい。ご存知でしょうけど我々椙ケ本家は成人(13歳)すると錆無化と契約を交わすのがこの家でのルールとなっています。しかし、錆無化と契約を交わしてしまえば一生手放せないことはおろか、寿命が50歳まで縮んでしまうんです」
「はいはい、聞いてるよ?」
「そ、そうですか。でも本題はここからです」
「ふむふむ」
「実は2日前に母上の墓地で1本の剱を見つけたんです。それはそれは綺麗で、おもわず家に持ち帰ってしまったんです。それでその、言いにくいんですが、父上には黙って契約を交わそうかと思っているのですが……」
「やめとけ」
「えっ」
「まず親父に黙ってするのはダメだ。それと、これだけは言わせてもらうけどな、お前が剱を選ぶんじゃぁない。剱がお前を選ぶんだ。これカッコつけとかじゃないからな。ほんとだから。嘘じゃないから⁉」
「わかってますよ‼でも、それじゃあ契約を交わせないってことですか?」
「う~ん、、、それはそれでちょっと違う」
そういうと報恩寺は足がしびれたのか、姿勢を正座からあぐらへと変えた。
「簡単に言えば、親父にもしっかり断って、そんでそのキレーな剱と契約を交わせばいいだけだ」
「そんなの無理に決まってるじゃないですか!あんなに厳しい父上に許しをもらえるわけがないじゃないですか……」
「ん~……とりあえずその剱を見せてくれ。」
報恩寺がそう言うと、太秦は一枚の畳を裏返して木の箱に入っている剱を取り出した。
「なんだそれ……木刀?」
「僕も最初はそう見えましたけど、ちゃんと刀身は中にありますよ」
太秦が剱の柄を握りゆっくりと鞘から抜くと純白に輝く刀身が姿を現した。それは綺麗というにはあまりにも収まらなく、洗練されたデザインだった。部屋の窓から差し込む光が剱にあたってきらめいていた。
「だいたいこんな綺麗な見た目してるにも関わらず墓場に放置されたんなら、生まれたばかりかとんでもねえ妖刀かどっちかだな」
「それはないと思いますよ。実際とても振りやすかったですし」
「は?」
「どうかしましたか?」
「いや、待て待て待て、契約交わしたのか?この剱と」
「交わしてませんよ!」
「じゃあなんで振れるんだ!」
「え、逆になんで振れないんですか?」
「剱は契約を交わさないと振ることができないんだ。どんなに怪力でも振ろうとすると剱が微動だにしない。」
「え、じゃあなんで僕は……」
「考えられるのは1つしかないが…ん~~~」
「なにかあるんですか?」
「ん~~~、お前の母親は剱を所持していたのか?」
「母上は僕が物心つく前に亡くなっていたので知りませんが、剱を振るような人には見えませんよ?ほら」
そういうと太秦は机の上の、生まれたばかりの赤子を抱きかかえる女性の写真を報恩寺に見せた。
「え⁈」
「どうかなされましたか?」
「まさかとは思うが、お前の母親の名前は壬生か?」
「え、はい。ご存じなんですか?」
「えええええ⁈壬生さんって椙ケ本家だったの⁈じゃあ《血の契約》を交わしてたってのも本当なのか?」
「…どうかしたんですか?」
「おい‼太秦‼よく聞け‼」
「は、はい」
「お前の母親はギルド初の女剣士でもあり
『最強』という称号を手に入れたお方だ‼」
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