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第5章:死

第5章


「ランド!ランド!しっかりしろっ!ランド!」

ソルは力の限り叫ぶ。

「ランド!ご飯出来たぞ!ほらっ!起きろ!」ルルも叫ぶ。

ここは、アクアランドの荒野にある洞窟内。

プリム、ソル、ルルは、牢に入れられていた。

その牢の前に、ボーンとミートが居て、そこから数メートル離れた所にランドは転がっていた。

しかし、獣人化は解けており口と腹から血を吐いていた為か、辺りは血まみれであった。

そして、そのランドから数メートルと言う所に、長身の男が座っている。

「ランド!しっかりして!ランド!」プリムも叫ぶがランドの耳には届いていなかった。

「お前ら!静かにしろっ!」とミートは、牢の鉄格子を蹴る。

「ボス!こいつ死んじゃってるんじゃありませんか?」とボーンは長身の男に聞いた。

「いや…まだ辛うじてだが、生きている。オイッ起きろ犬っころ!」とランドの元へ歩みより、刺された腹を蹴る。

ガハッとランドが血を吐いて意識を取り戻した。

「オイッ犬っころ!ここで殺されるのと、お前の母親の前で殺されるのとどっちが良い?」と聞いてくる。

「ぜぇ…ぜぇ………」

ランドは声を振り絞ったが、声は出なかった。

長身の男は、言う。

「そうか…、母親を殺してその後に殺してくれと言う事か!そうか。それは良い判断だ!よし、コイツラも一緒にクルシスランドに連れて行くぞ!」と男は2人に命令をする。

2人は獣人化を始めた。

「くっははははは…!さぁ、クルシスはコイツを人質にされて手も足も出るかな!」と叫ぶ。

どういう事だ?とランドは思った。

コレは、俺への逆恨みでは無いのか?母さんとどんな関係が…?

ボーンは、ソル達を檻から出すと縄で縛りミートの背中に乗せた。

長身の男は、ランドを担ぎボーンの背中に乗ると、2人はブブブと羽音を響かせて空へと舞い上がる。



「ちょっと!アンタ達!アクアランドに行けないってどういう事よっ!」とルナは家の前で騒いでいた。

騎士団長はオロオロしながら答える。

「いや…我々は、私用で警護に行くわけにはイカないのです!」

「じゃあアンタ達は、未来の王様の警護に付けないって事?」とルナは叫ぶ。

「未来の王様って…ランド君の事ですか?」と騎士は答える。

「そうよっ!アンタもプリムちゃんとランドの関係を見れば一目瞭然でしょ?」とルナは言う。

「しかし…それは、まだ決まった訳では…」と騎士も負けていられなかった。

「アンタねぇ、未来の王様のお母様の息子達が危険な目に合ってるのよ?普通は加勢に行くのが…んっ?アレは…」と遠くの空を見る。

騎士団長も釣られて空を見ると、でかいカブトムシの上に縄で縛られているプリムがいた。

騎士団長は待機している兵士達に命令をする。

「お前達!あのカブトムシを叩き落とせ!絶対に王女に当てるなよ!」と叫ぶ。

兵士達は返事をすると、銃を空に向けて発砲する。


「ボス!下から変な奴らが発砲してきたよ!」とミートは叫ぶ。

後ろを飛んでいたボーンの背中にいる長身の男は叫ぶ。

「なら、1回降りて奴らを殺してから森に入るか!クルシスの森は、空からじゃ入れない事だしな!」と男は叫ぶと、ミートとボーンは急降下を始めた。

「隊長!後方からもう1匹います!奴ら、こっちに急降下してきます!」と兵士は叫んだ。

カブトムシは急降下して、兵士達の前に立ち上がる。背中のプリム達は、地面に転がり落ちた。

「王女様っ!」と騎士団長はカブトムシに襲いかかる。ルナもソルとルルが捕まっている事を知り、カブトムシに石を投げつけていた。

そして、ボーンも地面に立つ。

長身の男はランドを担ぎ地面に降りる。

ルナは見てしまった。いや、いずれ見なければならない物を…。

「ランド…?」と声を出した。騎士団長も男の方に振り向いた。

男が担いで居るものは、血だらけでボロボロになって気を失っているランドであった。

「息はしているの?大丈夫なの?ねぇ…」とルナは誰に聞こえる訳もない声を出した。

「お前ら、この犬っころを知ってるのか?」と男は聞いた。

「何言ってんのよ!私の大事な息子よ!」とルナは叫んだ。

「何だと…?コイツの母親はクルシスじゃ無いのか?」と男は聞く。

「ランドの本当のお母さんは、私の旦那が殺しちゃったのよ!」

「な…なんだと!人間ごときに、クルシスが殺られる訳は無い!」と男が叫ぶ。

「い……いや、ほ…んとう……に……母さんは………殺され……た」とランドが言う。

また意識を取り戻した様だ。

「母さん………は…お……れを守……り…殺され…た」と続ける。

「な…なんだと!お前が、お前が居たから、クルシスは死んだと言うのかっ!」と男は、地面にランドを叩きつけた。

咳き込みながら、地面を転がるランド。

「ランド!」とルナがランドの元へ駆け寄ろうとしたが、クワガタが邪魔をした。

「この…!退きなさいよ!クワガタ虫!」とクワガタを殴るがビクともしなかった。

しかし、ルナの後ろから剣を振り下ろしてきた騎士団長の剣を避けきれなかった。

ザクッと鈍い音が聞こえる。

カブトムシがそれに気付き、騎士団長を襲う。

兵士の1人が、隙を見てプリム達の縄をほどいた。

ソルとルルは、手足が自由になった途端カブトムシに襲いかかった。

ソルはカブトムシの背中に乗ると、素手で何度も何度もカブトムシの頭を殴りつける。

ルルは足にタックルをしてカブトムシの動きを止めた。

ソルの拳からは、血が出ていたが構わずに殴る。

カブトムシの皮は鎧みたいに固かった。ミートはまったくダメージを喰らっていなかった。

一方、クワガタの方は、肩から腹にかけて切られたが気にせずハサミを騎士団長に向けた。そして挟もうとした時である。

プリムは騎士団長の背中を飛び台にして、クワガタの脳天に踵落としを決めた。

フラフラとするクワガタに騎士団長の前に居たルナは、おもいっきり蹴る。

"く"の字に曲がったクワガタは更に、騎士団長がおもいっきり切りつけた。

真っ二つにならなかったが、クワガタは後ろに倒れていった。

「まずは1匹!」とプリムはカブトムシを見た。

カブトムシの背中に乗っているソルは、泣きながらカブトムシを殴っていた。

「こいつが…こいつが…ランドを…クソッ!クソッ!!」

カブトムシの頭が赤く染まるが、それはソルの拳から流れる血であって、カブトムシ自体は平然としていた。

でも、流石にうざったくなったのであろうミートは背中に乗っているソルを振り払い、ルルを踏みつけた。

ボキボキッと骨が折れる音がした。そして、ルルは泡を吹きその場に倒れた。

ミートは次にソルを見た。角をソルに向け突進をする。

しかし、動きは止まった。殺気を感じたからだ。この殺気は、皆感じていた。

そして、殺気の発生源を見る。

フラフラになりながらも、ランドが獣人化をして立っていた。

「はぁ…はぁ……ぜぇ…」ランドが呼吸をする度に、血が体から溢れ出す。しかし、殺気だけは数十メートル先のミートに向けられていた。

長身の男は、ミートに叫んだ。

「コイツは俺が仕留める!早くソイツを殺っちまえ!」

そして、ランドの方へ向く。

「おいっ!お前の相手は俺だぜ?犬っころ!」と長身の男が獣人化をした。

ミートの何倍もあるかの様な長い角。

ボーンのハサミより鋭い大きな口。

長身の男は"ヘラクレスオオカブト"の完全融合体になった。

最悪だ…とプリムは思った。今、1匹倒したのに、更に1匹出てきた!

しかし、ランドはヘラクレスの方を見てはいなかった。

見ているのは、ソルに角を向けて立っているカブトムシだけ…。

ヘラクレスは苛ついた。

「コイツ!俺は眼中に無いってのか!」と角をランドに向けて突進をしてくる。

ミートもそれを見てソルに突進をしていった。

ボスの突進を避けた者は、居ない!そう思い殺気が向けられる中ソルに突進をした。

その時、ミートに風が吹く。そよ風程度の風だったが…

そして、カブトムシの角がソルに刺さる!いや…刺さった様に見えた。

カブトムシの角は、根元から消えていた。

ミートは頭をあげる。しかし、頭の角は何処にも無かった。

「お…俺の角!何処に行った?」と左を見て右を見ると、角はあった。

…が、角があった場所はウルフの口にくわえられていた。

ぺッと角を吐き捨てるウルフはカブトムシの方を向いた。

そして、腰を落とす。

「我狼…」と言いながら、超高速でカブトムシに向かった。

「襲爪斬!」

バシュッとカブトムシの体が、×の字を書くように血が吹き出て倒れる。

ランドも技を出した後、膝をついた。そして、血を吐く。

騎士団長、プリム、ルナ、ソルはランドの元へ駆け寄った。

「ふっはははは…俺の突進をかわすとは!なかなかやるな犬っころ!」とランドの方へ向いた。

騎士団長はランドの前に立ち剣を構えた。

ソルとプリムも構える。

「人間共に何が出来る!俺を舐めるな!」とヘラクレスは羽を羽ばたいた。

ブブブブブ…と大きな音が聞こえたと思ったら、

騎士団長の鎧が砕けて、後ろに吹き飛んだ。

「どうだ!俺の羽音は、空気を振動させ、真空破を発生させる!」

ソルは構わずに、ヘラクレスを前方から襲いかかる。

「甘いわ!人間めっ!」と口をソルに向けると、片方の口がソルに突き刺さる。

ソルは血を吐いて倒れた。

ランドは立ち上がる。

しかし、目の照準があって居ないようだった。

しかし、プリムに近付くと母を頼むと言い、ヘラクレスに襲いかかった。

ヘラクレスはまた羽を羽ばたく。

ザシュッザシュッザシュッとランドの体が斬られるが、ランドは止まらなかった。

全身血まみれになりながらも、ヘラクレスに右でパンチを浴びせたが、威力は無かった。

それでも、ランドは殴り続けた。

ヘラクレスは大きく口を開けランドを挟む。

メキメキッと骨が軋む。

ランドは挟まれながらも右手を上に、左手を下に持ってきた。

ヘラクレスは更に力を入れる。歯が肉に食い込みながらも、ランドは最後の力を振り絞り右手と左手を合わせるかの様に、ヘラクレスの脳天と顎に爪を食い込ませた。

ヘラクレスの体の中で、右手と左手を合わせる。

そして、一気に引き抜いた。

後に残ったのは、首の無いヘラクレスの死体。

ランドは、両脇の口を離すとソルの横に座った。

目が青く光り、ソルの体を包む。

ソルの腹から血が止まるのを確認すると、その場に倒れた。

「ランド!ランド!」とルナが駆け寄ってくる。

しかし、ランドはもう起きる事は無かった…

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