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ココア
気付けばココアが好きになっていた
いつからだろうか
そんなことを考えれば
決まって君の顔が目に浮かぶ
「あー君が好きだったからか」
ふと零した言葉は
僕の身に染みわたる
君の好きなものは僕も好きになっていっていた
景色も 食べ物も 飲み物も 服も
全部全部……
僕は君に染められていた
僕はそれでよかった
君と同じ世界を見ていたかった
でも 君の嫌いなものを僕も嫌いになった
そう…… この僕自身
君はもう目の前にはいない
隣にもいない
僕を嫌いになって消えてしまった
最後に聞いた言葉は何だろう
最後に見た君の表情はどうだっただろうか
今ここに残っているのは
君が好きだったもの
このカップに入っているココアだってそう
このココアを飲むたびに君を思い出す
冷え切った体を温めてくれる
まるで君が傍にいるように……
そして君との思い出は僕を苦しめ僕を支え
いつかは混ざり合い溶けてしまうだろう




