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たった一言だけ……
たった一言
たった一言が言えない……
おはよう
ありがとう
さよなら
そんな言葉よりも
伝えたい言葉があるのに…
『好き』の言葉が胸の奥で木霊する
すぐにでも出てきそうなのに
僕の喉がそれを拒む
言ってしまいたい……
でも……
震える両手を握りあわせる
噛み締めた唇から
鉄のような匂いと味が
口の中に広がる
悔しい……
情けない……
どうしたらいい……
どれだけ自問自答を繰り返しても
結局は声が出ない……
君を前にすると
言葉が出ない……
こんなはずじゃないのに……
怖い
怖いんだ……
君の答えを聞くのが……
たった一言
たった一言だけ
伝えたい言葉を
そっと胸にしまい込んで
今日も何気なく告げる
さよならの一言を君に……




