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君のいなくなった夜
雲に隠れた月のように
君はどこかへ隠れてしまった
ポタッ ポタッ……
聞こえる
蛇口から零れる水の音が
重たい頭の中に響き
そして止んだ……
無造作に置かれた弁当の残骸が
異臭を放つ
一人の夜がこんなにも怖いとは
思いもしなかった……
君がいないだけで……
君がいないだけなのに……
僕の心は軋む
泣きたいのに
泣きそうなのに
涙は一向に降らない
好きの一言も
ありがとうの言葉も
最後のさよならも
君からもらった想いが胸を締め付ける
泣いてしまったら
その想いでいっぱいの胸が
空っぽになってしまいそう……
僕はそれが怖いのだろう……
恐怖に耐えながら今夜も眠るだろう……
たったひとりの寒い夜




