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喫茶店やすらぎ

 喫茶店やすらぎ。そこには今日も沢山の客が訪れていた。

「マナちゃん。【とんかつ定食】頼むわ」

「はい、とんかつ定食ですね。少々お待ち下さい」

 冷蔵庫から、パン粉の付いた豚ロースを取り出す。そしてそれを油の中に落とすと、良い音を立てて油が跳ね始める。

 衣がきつね色になったところでパッドに上げる。平皿に千切りのキャベツと薄切りのレモンを乗せ、最後にとんかつ乗せる。

「お待たせしました。とんかつ定食です。ご飯とお味噌汁もすぐ持ってきますね」

 ご飯とみそ汁も置かれ、とんかつ定食が完成した。

「いただきます」

 手を合わせてから箸を手に取り、とんかつにソースをかけカラシを塗って一切れ食べる。衣、肉、肉汁、ソース、カラシ。それがとんかつとして食欲を堪らなく刺激した。



 一方別のテーブルでは、女性プレイヤー三人が尽きることの無い会話を広げていた。

「今度の休みに限定クエストをクリアしちゃわない?」

「良いよ。クリア報酬は美味しいしね」

「ごめんなさい。私、その日はちょっと用事があって」

 リアルの友達では無く、プログルブオンライン上で出会った友達。なので、年齢も職業もバラバラだ。当然、予定も合わないことが多い。

「別に謝ることじゃないよ。予定をずらせば問題ないし」

「そうよ。イベントはまだ終わらないんだから来週でも構わないわよ」

 笑いながら、テーブルに乗っている料理、ゴボウサラダを自分の小皿に取り分けて食べ始める。

「別に間に合わなくても気にならないし」

 もう一人も、自分のハンバーグを一口サイズに切り分け口に運ぶ。

 その二人の態度に安心したのか、彼女もまた料理に手を付け始めた。



 隣のテーブルでは、新しくギルドのメンバーを迎えるにあたり、どの職業を優先するかで四人の男女が揉めていた。

「俺はさ、今必要なのはサポートだと思うわけよ。回復が増えればもう少し生存率があがるだろ?」

「私はもっと火力を増やしたい。効率を考えれば敵を簡単に倒せるほうが良いでしょ」

「オレとしては遠距離タイプを入れたいな。そうすれば今のパーティのバランスが良くなるじゃん」

 サポート、一点集中、バランス。それぞれがそれぞれの意見をぶつけていく。

 そんな中、今まで黙っていた少女が口を開いた。

「いっそのこと、五人くらい募集かけてみたら良いんじゃない?」

 その提案に、皆が思案をみせる。

「一気に五人とか入ったら怖くない?」

「でも、今より戦力を増やすならそれも選択肢でしょ」

 そんな風に話をしながらも、確実に話がまとまりつつある。

「じゃあ、募集要項を少し厳しめにして様子を見るってことでいいな?」

 異議なし。と声が重なり、掲示板へ書き込む内容の話に移行したのだった。



 また別のテーブルでは、全く同じ顔の金色の髪の女性朝姫と、黒色の髪の女性夜姫の双子がナポリタンを食べながら会話をしていた。

「ねぇ、お姉ちゃん。思うところがあるんだけど、私に姉を譲る気は無い?」

「!? 何故そうなったの? 私の姉ぶりに文句でも有るというのか」

「文句ってことも無いけど、朝姫が姉である必要なくない?」

「確かに双子だから、あんまり姉妹とか関係ないといえば関係ないけど」

 双子という事で、姉妹と言うよりも友達の様に過ごしてきたが、仮にも姉であると育てられてきたことで、朝姫にも姉としての矜持は備わっていた。

「そんなに姉に憧れがあったとは知らなかった」

 朝姫が顎に手を当て考え始めた。

「いや、そんなに憧れてるわけじゃなくて、たまには私も姉を経験してみたいな。とか、なんとなく思いついただけなんだけど」

 朝姫の真面目な表情に、戸惑いを見せる夜姫。

 彼女は、ゆっくりと冷めていくナポリタンのソーセージをフォークで突きつつ、困ったように微笑みながら姉の顔を眺めていた。



 一人でカウンターに座り、カプレーゼを食べてワインを飲んでいる叶が、調理場にいるマナに話し掛ける。

「今日も繁盛してるわね」

「有りがたい事です」

 料理を作り続けて数年。常連客も増え、マナ自身にも友人が多く出来た。毎日様々な出会いもあり楽しい日々が続いている。

「そう言えば、今度のイベントって釣り大会じゃない? 優勝賞品がレアアクセサリーで攻撃力が二倍だから、釣りの練習でそこらの釣り場が混雑しまくってるらしいわよ」

 今回の釣りイベントもマナが企画したものだ。最近ハマっている釣りをイベントとして企画したのだった。

「釣りは楽しいですよ。ゆっくりとリラックスしながら時間を忘れるんです」

「そんなもんなのかしらねぇ」

 釣りの魅力がいまいち判らないのか、叶はワインを飲みため息を吐いた。

 


 喫茶店やすらぎ。そこにはAIプログラムの女性が毎日料理を振る舞っている。

 客は友達同士で、一人で、やすらぎを訪れて料理を食べる。のんびりと料理に舌鼓を打ったり騒いだりしながら時間を過ごす。

 これからも変わらず多くの人々がこの店を訪れるだろう。

 そして、また店の扉が開きドアベルが鳴る。その音に店主は笑顔を向け言うのだ。

「いらっしゃいませ。ようこそ喫茶店やすらぎへ!」

  

                                          了


以上で、休憩に料理なんていかがですか? は終了です。 

今まで読んでくださった皆様には感謝しかありません。この小説を考えている時間は本当に楽しいものでした。


 次に小説を投稿し始めた際も読んでいただけると幸いです。

 本当にありがとうございました。


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