余った雪で1
今年もプログルブオンラインの世界にも雪が積もった。
場所にもよるが、二メートル以上の積雪も見られる場所もある。喫茶店やすらぎにも雪が積もり、マナは朝から雪かきに勤しんでいた。
明るい茶色のコートに赤いマフラーを巻き、同じ色の手袋を嵌めてろし、今は店の周りをシャベルでかいているのだった。屋根の雪を下ろし、
「こんな重労働になるなんて、積雪の依頼なんて出すべきじゃなかったんですね」
一度、足を踏み入れるだけで片足が埋まるくらいの雪を見たかった。雪に包まれる空間を見たかった。そのために許可を取り、大雪を降らせたのだった。だが、理想と現実は違った。雪は重く、スコップが思うように動かない。
やっとの事で雪を片付け、正午より少し前にやすらぎを開店する。
ロールキャベツやポトフなどの温かい料理の注文が多く、店の外も中も冬の様を呈していた。
「今年は現実の方でも雪が多いな」
「ああ、屋根の雪かきは年取るごとにきつくなるよ」
雪の多い地域に住む人達にはおなじみの会話。そんな会話の途中に扉が開き冷たい空気が店内に流れ込んでくる。
扉を少しだけ開け、最小限の動きで店内に入りすぐに扉を閉めた。
「すいません。此処って持ち帰りはできますか?」
男性プレイヤーのリクエストに、マナはある程度なら可能ですよ。と答える。
男性はほっとしたように注文を口にする。
「じゃあ、【唐揚げ】と【おでん】を二人前。あと汁ものってありますか?」
「今日は【豚汁】がありますよ」
「それを三人前でお願いします」
「かしこまりました。三十分ほどで完成すると思います」
よろしくお願いします。と頭を下げ、男性は入ってきたのと同様に出て行った。
「……この大雪でテイクアウトって変わってない?」
「確かに。食べに来るか家に籠ってるかだよね。もしくはログイン自体しないか」
テーブルでロールキャベツとカルボナーラを食べていた女性二人がそんな疑問を口にした。
言われれば、それが伝播しそこかしこで今の光景の推測を立て始める。
「雪原限定のレア敵を待ち構えるとか」
「ワカサギってどこで釣れるんだっけ?」
「雪見酒ってのも良いよな」
様々な憶測が飛び、一通りの盛り上がりを見せていると三十分が経ち、男性が再び現れた。
「いらっしゃいませ。丁度料理も出来上がりましたよ」
マナは笑顔で迎え入れる。
「ご注文の唐揚げとおでん二人前、豚汁三人前です」
男性は注文の品を受けとって料金を払う。
ありがとうございました。と店を後にしようとしている男性に、客の一人が推測に終止符を打つべく話し掛ける。
「なぁ、兄ちゃん。こんな雪が積もった日にフィールドにでも出るのかい?」
すると男性は、少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「いえ、今日は仲間と家の周りの雪かきをしていたんです。それで、その雪で【かまくら】を作ったんですよ。そしたら案外居心地が良くて、折角だから此処で食事でもしてみようかってなったんです」
子供っぽいですよね。と笑い彼は店を出て行った。
「なるほど、かまくらだったか」
「かまくらの中って案外温かいらしいね」
答えが出たことで納得した一同は、また楽しく過ごし始めた。




