パン屋の仕事1
朝、目覚まし時計が鳴るよりも先に、甘く香ばしい匂いが鼻孔をくすぐり何時もの様に目を覚ます。
「はぁ、お腹空いた」
私はそう呟いて、身体を起こしパジャマを脱いで制服に着替え、一階に降りる。
【セイン】。私の家のパン屋の名前で、ご近所ではそれなりの有名店だ。
「おはよー」
一階の工房に居る家族に挨拶をすると、いつもの様に働く両親と祖父母から、おはようと返事が返ってくる。
朝はパン屋が一番忙しい時間帯。私が小学生の時はおばあちゃんが朝ご飯を用意してくれていたが、中学生になった今は私が家族の分を用意する。
パン屋だからパンはたくさん用意できる。しかし、用意できるからこそ我が家の食事は基本的に和食がメインになっている。
ご飯だけは、今でも母や祖母がお米を研いで炊飯器にセットしてくれている。私が作るのはおかずだ。
今日のおかずは、【卵焼き】【ウインナー】【温野菜】とシンプルなもの。日によっては目玉焼き、焼き魚、ベーコンなどにもなる。
朝の時間の手早く卵を混ぜ、砂糖と醤油で味を付ける。熱したプライパンに溶いた卵を少量入れ、固まったところクルクルと巻いていく。
それを五回繰り返し出来上がった卵焼きを皿に乗せる。
次に沸いている湯の中に塩を一つまみ。そこにブロッコリーとニンジンを入れる。次第に色が鮮やかになり、完全に柔らかくなる前にザルに取り上げてから深めの皿に移す。
冷蔵庫からウインナーを取り出してフライパンに放り込む。パチパチと音を立てる横で、家族のために【おにぎり】を作る。忙しい合間での食事になる可能性が高いので、サッと片手で食べられるおにぎりが重宝される。あえて具は入れず、ゴマ塩やふりかけで味を付けた。
ウインナーも良い感じに焼き色がついたので、皿に乗せる。
これで朝食の全てが完成したので、テレビを付けて朝食を食べる。
テレビでは真面目なニュースが流れているが、それを見ることは無く自分の携帯電話を見る。
画面を見ると仲の良い友達から、おはようというメッセージを着信していた。
それに返信してから、卵焼きを一つ食べる。
「うん美味しい」
随分と作り慣れた卵焼き、最初のころはまともに作れなかったが、今は味も安定して作れるようになった。
もともと、お腹は空くが朝から大量にご飯を食べることが無いので、朝食自体は十五分程度で終了した。
時間は七時四十五分。家を出るいつもの時間。洗面台で身だしなみを整えてからバッグを持って家を出る。が、その前に工房に寄って行ってきます。と声をかける。家族も返事を返してくれる。と、その近くのテーブルに売り物と同じ容器に入ったサンドイッチが一つ置かれている。
それは私のお昼ごはんとして用意してくれたもの。それをバッグの中に入れ、学校に向かう。




