沖縄料理2
その女性は一人で黙々と、美味そうに食べている。
ラフテーは箸でほぐれるほどに柔らかい。プルンとした脂身としっかりとした肉、その両方を同時に口に入れる。しっかりと味の染み込んだ肉と甘い脂身。それを飲みこんですぐにビールを流し込む。
「ふぅ」
(ラフテーって確か、角煮と違って皮が付いてるのよね。脂身とはまた違ったプルプルで美味しい)
言葉には出さず、また箸でラフテーを切り、食べ、ビールを飲む。
空になったビールジョッキを見て、女性は沖縄の蒸留酒である泡盛を注文する。
その泡盛が届くと、女性はまたラフテーをつまみに泡盛を楽しみ始めた。
「この【マース煮】ってなんですか?」
メニューに載っているマース煮とは何かをマナに聞く男性。
「マース煮というのは、白身の魚を水・塩・泡盛だけで煮込んだ料理です。シンプルな味付けなので、魚本来の味が楽しめますよ」
「なるほど。……じゃぁ、マース煮と【ニンジンしりしり】下さい」
「かしこまりました。マース煮とニンジンしりしりですね。少々お待ちください」
マース煮は、鱗と内臓を取ってフライパンに置く。そこに水と塩、少量の泡盛を入れて煮込む。
その間に、ニンジンしりしりに取り掛かる。
ニンジン一本を千切りにして、炒める。醤油等で味付けをして、溶き卵を回し入れて絡めて完成。
マース煮の方も完成し、皿に盛り付ける。
「お待たせしました。マース煮とニンジンしりしりです」
男性はテーブルに並ぶ料理に笑みをこぼし、いただきます。と手を合わせる。
箸で魚の身をほぐし口に運ぶ。アクアパッツァや醤油煮のように、濃い味では無く優しい味が広がった。
食べたことの無い味に衝撃を覚える。
(味付けは塩だけらしいけど、そうとは思えないほどの深みがあるな)
黙々と半身を食べ進め、もう半身を食べる。皿の上に綺麗に骨だけになった光景を見て、男性は後悔する。
(あぁあ、一気に食っちまった。ゆっくりと味わいながら、ニンジンしりしりも食べたかったんだがなぁ)
子供のころから親に、一つの料理ばかりを食べる『ばっかり食べ』を注意され続けた彼は、大人になってそれを改善したのだが、美味しいものがあるとその癖が戻ってくるのだった。
後悔するももう遅い。マース煮の皿を脇に避け、ニンジンしりしりの皿を目の前に持ってきて食べる。
味付けはしっかりとしているにも関わらず、ニンジンの味がガツンと伝わってくる。
少し歯ごたえの残るニンジンの食感と、卵のふんわり感もニンジンしりしりの魅力だと感じる。
(美味ぇ。本場で沖縄料理も食ってみたいな。社員旅行、沖縄になんないかな)
そんな希望を持ちながら、男性の食事は終わらない。




